2015年07月05日(日)

明日の幸せを科学する 



著者:ダニエル・ギルバート (著)
    熊谷淳子 (翻訳)
発売日: 2013/12/11

評価〔A〕 想像力とうまく付き合う方法。
キーワード:未来、想像力、心理学、幸せ、

あなたのあやまちは、よく考えずに、想像したものを事実の正確な反映であるかのように扱ったことだ。(第3部より抜粋)


こうしたら楽しい、こうなったら幸せな気分になるだろうと思って予定を立てたのに、実際に行動を起こす時になってみると、どうも想像していたほど満足感を得らなかったことは多々あると思います。自分も周囲の人も知らないことに挑戦するなら、失敗しても納得がいきますが、自分の好みや要望に合わせて動いても失敗することがあるのはなぜでしょうか。

本書の著者はハーバード大学の人気教授で、社会心理学が専門です。そうした未来を想像する時に何が起きて、どのような利点や欠点があるのか考察しています。はじめにに書いてあるように、幸せがテーマではなく自己の未来予測の仕組みがテーマです。「幸せはいつもちょっと先にある」を改題文庫化したものです。

翻訳のせいか著者が回りくどい説明の仕方が好きなせいか分かりませんが、冗長な例や説明が目立ちました。例がないよりはあったほうが理解の助けになりますが、場合によっては論点が何なのか分かりづらくなっていると感じました。テンポよく読むのが難しいのが欠点です。

しかし、そうした欠点があっても面白かったと思うくらい興味深い本です。幸せと思うのはどのような時か、他人と幸福度を比べるのか可能かから始まり、想像力の3つの欠点、そして解決策が述べられています。未来のことを想像するのに、現在の状況や心境に縛られてしまうのは意外でした。うつ病患者の明日の気分予想の例が非常に説得力があり、感心してしまいました。また、防衛機制の合理化は知識として知ってはいましたが、具体例を見てみると深く理解できていなかったことが分かります。同じような選択肢でも、合理化によって見方をゆがめられ、結果として感情や気分も変化してくるのを予想するのは難しそうです。

解決策に関しては、評価が分かれそうですね。AさんとBさんのどちらと旅行に行くか等の私的なことには使えませんが、解説を読むとそれなりに有益そうです。まずは、先のことを想像する時は、注意して細部までしっかり想像してみることを心がけていこうと思います。



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[ 2015/07/05 12:08 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2014年08月17日(日)

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの 

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの (ハヤカワ文庫JA)スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの (ハヤカワ文庫JA)
著者:籘真 千歳
出版社:早川書房
出版日:2013/07/24

評価〔A-〕 揚羽のお願いが印象的。
キーワード:SF、未来、人工妖精、ヒューマノイド・ロボット

「生まれつき裏返っていたとしか、考えられません。あれは……あの子は、本物の天然殺戮者です」(P249より抜粋)


次々を殺人を犯す人工妖精・麝香を追う揚羽、とある暗殺事件に巻き込まれることとなった真白、ひとつの転機をむかえる幼い人工妖精。先の3作とは違って、これらの3つの物語が交代で進行していきます。

結末に至るまでの粗筋はそれほど目を引くものではありませんでしたが、結末がとにかく衝撃的でした。あれが良いって人もいれば、Extraは余計だと言う人もいて賛否両論のようです。急展開だったので、じっくり見せてほしかったかも。真白も活躍しましたが、やはり本シリーズの主役は揚羽だと思わざるをえない。

また、彼女をはじめとする、登場人物たちはいつもどおり十分魅力的でしたので、その部分は良かったと思います。いつもある鏡子の説教(問答?)が見られて満足です。結構楽しみにしていたので。今回は哲学だったのでややこしかったですが、こうしたやり取りが読めなくなるのは残念だなあ。

舞台や人物描写は良かったのですから、ストーリーももう一つ何か欲しかったような気もします。まあ、なにはともあれ、しっかり終わって良かったです。本書はBかAか迷ったけれどA-で。シリーズ全体の評価はAあたりかな。理由は好みだから。こうした魅力ある登場人物が活躍するSFをまた期待しています。



[ 2014/08/17 22:22 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2014年05月05日(月)

スワロウテイル序章/人工処女受胎 

スワロウテイル序章/人工処女受胎 (ハヤカワ文庫JA)スワロウテイル序章/人工処女受胎 (ハヤカワ文庫JA)
著者:籘真 千歳
出版社:早川書房
出版日:2012/09/07
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評価〔A-〕 最終章に驚きがあって良かった。
キーワード:SF、未来、人工妖精、ヒューマノイド・ロボット

「五稜郭の創設を主導したのは、確か――」
『不言の一族だ。風気質の発見者、不言志津江の氏族だな』(本文より抜粋)


男女別の隔離自治区で生きる人と人工妖精の近未来SFの3作目です。前の2冊と違い、4編からなる連作中編集です。

時系列どおりではなく、今作は1巻よりも過去、揚羽の学園生活を描いた前日譚です。最初は全寮制の学校が舞台なので、和やかな学園ものの雰囲気が強かったのですが、物語が進むにつれこのシリーズらしい重く厳しい展開になります。心理学を絡めた会話やSFとしての設定も、毎度のことながら興味深く面白いです。複雑ですぐには理解しにくい説明もありますが、完全に分からなくても楽しむのには支障ありません。

桜花の特殊能力にも、彼女が口にした意識と自我についての話にも驚きましたが、最後に明かされる双子機の覚醒・半覚醒の秘密にはさらに衝撃を受けました。こうしたものを描けるのも、SFの魅力のひとつだと思います。

3作目にして挿絵が使われています。ライトノベル風な本シリーズですが、イラストの影響か良くも悪くもその傾向が強くなったような気がします。絵の力は大きい。

このシリーズは、読むたびにこの世界観や登場人物たちが気に入っていることを自覚させられます。次の4作目で終わり(?)または一区切りらしいので残念ですが、読むのが楽しみです。




[ 2014/05/05 18:37 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2014年01月28日(火)

スワロウテイル/幼形成熟の終わり 

スワロウテイル/幼形成熟の終わり (ハヤカワ文庫JA)スワロウテイル/幼形成熟の終わり (ハヤカワ文庫JA)
著者:籘真 千歳
出版社:早川書房
出版日:2011/09/22

評価〔A〕 あの仕掛けがすごい
キーワード:SF、未来、人工妖精、ヒューマノイド・ロボット

「あなとと同じ、青色機関の一人、“全能抗体”。そういう風に言えば、あなたにはわかるはずね?漆黒の抹消抗体」(本文より抜粋)


関東湾に浮かぶ男女別の隔離自治区を舞台とした近未来SFの2作目です。揚羽の後輩の葬式で遺体が突如動き出すリビングデッド事件、人工妖精の顔剥ぎ事件、そして自治区を襲うテロ組織。大小さまざまな出来事が複雑に絡み合い、自治区を揺るがす大事件へと発展していきます。

前半の話のテンポが遅いのが目立ちます。SFならではの解説が多いですし、また登場人物たちのあまり重要でない話もあってか、なかなか進みません。しかし、他の作品なら冗長だと感じるシーンも、会話の内容が興味深いので面白いです。鏡子は相手を罵ってばかりですが、内容は分かりやすく長くてもあまり気になりませんでした。

テロと人工知能が大きく関係してくる話なので、前作の魔法っぽいSFよりは現実っぽいSFになったと思います。もちろん人工妖精も扱いが軽くなっているわけではなく、人工知能と人工妖精の違いも面白いし、終盤あの人が看破した水気質の本質もかなり興味深いです。

ところどころ、知っている人にだけ分かるネタが仕込んであります。AIRの「ゴールしてもいいですか?」や、月姫の「十七分割」など。一体、いくつあるんだろう。

前作は評価A-でしたが、本書は前作とほとんど同じかちょっとだけ落ちるかな。やはり初めて読んだ時の印象が強いです。今評価するなら、前作はA+にします。(笑) 本シリーズは好みなので、次も同じくらい面白いといいなあ。






[ 2014/01/28 21:17 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年04月11日(木)

エスニシティ ゼロワン3 

エスニシティ ゼロワン 3 (フラッパー)エスニシティ ゼロワン 3 (フラッパー)
著者:多田乃 伸明
出版:メディアファクトリー
発行:2012/03/23

評価〔B-〕 追放者達の行く先
キーワード:SF、近未来、管理社会、

「ついて来い。お前に見せてやろう。私の革命を。」(本文より抜粋)


塗り替えられていく空白地帯の勢力図。ケオウの革命とノルトレガの思惑は、空白地帯をどう変えるのか。最終巻である本書で、ひとつの結末をむかえます。

ゆったりとした流れから急に物語が展開していきます。重要人物センセーの登場や、「エスニシティゼロワン」の意味、特殊能力者の秘密など、あらかた謎が解かれます。この巻で終わりだから駆け足になるなーと思っていたのですが、終わってみるとおさまりが良いと言うか、案外違和感なくまとまりました。

しかし、管理社会と追放者たちをはじめとするこの近未来の世界を、もう少し詳しく説明して欲しかったです。物足りない気持ちもあるので、あと数冊足してじっくり読んでみたかったですね。あと、ニコも主人公のわりにあまり目立たなかったと思います。

本シリーズも「70億の針」も数巻で完結したので、次の漫画はもうちょっと長めにならないかなと期待しています。



[ 2013/04/11 21:51 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)