2015年11月18日(水)

「本が売れない」というけれど 




著者:永江 朗
発売日: 2014/11/4

評価〔A-〕 書店が苦戦する訳が分かります。
キーワード:書店、本屋、大型店、ネット通販、古本、電子書籍、

「読書ばなれ」と「出版不況」のあいだにはねじれがある。それは「書籍」と「雑誌」についてのイメージのズレではないかとぼくは考えている。(第2章より抜粋)


先月、漫画の品ぞろえが充実した近所の本屋に久しぶりに行ってみたら、閉店しましたとはり紙がはってありました。こうして書店が減っていくのは残念であり、寂しいことです。書店の減少はこのあたりの話だけではなく、どうやら全国的に減少しているようです。原因は本が売れないから。では、なぜ本が売れないのか? ネット通販が普及したから、読書離れが進んでいるから、などの理由が挙げられていますが、はたして本当にそうなのでしょうか。書店員の経験もある著者が、出版業界の現状と問題点を解説し、今後の読書のかたちを探ります。

活字離れの実態を調べるため、図書館や古本屋、消費者の収入と様々な角度から調べているのが興味深いです。それに加えて、どのような種類の本の売れ行きが経営に影響するのか、出版社の収入の面から考察しているのが面白いです。業界の見通しが甘く、ブックオフやアマゾンの盛況が予想外だったことも影響しています。また、出版社がほとんど潰れない理由も言及しています。出版社、書店、その二つを取り持つ取次、3者の関係が現状に合わなくなってきているのかもしれません。

書店の生き残る道もいくつか提示しています。本の値段を倍にすることは、消費者に取っては素直に賛同できませんが、本の数を減らし手間も減らすことで全体の質を上げるのは理解できます。テレビで取材していた喫茶店が併設された書店も、一つの手段だと思います。注目したのは、ベストセラーや話題の本はどこにでも売っているので置かない、という意見です。上記の漫画の品ぞろえが良い店のように、何か魅力があれば常連客もできそうですしね。個人的には売れ筋ばかり売る店は面白くありません。

このままでは町の電気屋・CD屋のようにほとんど姿を消してしまいかねません。何かを変えるのは大変なことでしょうが、本の未来が明るくなるような変化が起こることを期待しています。本の現状が分かる新書でした。


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[ 2015/11/18 20:57 ] 実用 | TB(0) | CM(0)

2014年08月17日(日)

蔵書の苦しみ 

蔵書の苦しみ (光文社新書)蔵書の苦しみ (光文社新書)
著者:岡崎 武志
出版社:光文社
出版日:2013/07/17

評価〔B-〕 蔵書が万を超える収集家たちの日常。
キーワード:本棚、整理整頓、実用、

本を必要以上に際限なく溜め込む人は、個人差はあるだろうけど、どこか真っ当な人生を投げてしまっているのではないか。生活空間のほとんどを、本が占領している住居というのは、一般的な通念からすると、どう考えてもまともではない。(第四話より抜粋)


長年本を読むと生じてくるのが、本の置き場問題です。特に本を集めているわけでもない僕でも、さっき気になって大まかに数えてみたら、漫画が200、活字本が580、自炊した電子書籍が100ほどありました。これでも場所を取られるのに、千、万と持っている収集家たちはいったいどうしているのか。そんな人たちの一人、古書集めが趣味の著者が、蔵書についてあれこれ語ります。

持っている人は五千くらいかなと漠然と思っていたのですが、本書に登場する人々は数万、十万を超える人もいて驚かされます。部屋の壁が全て本で埋め尽くされていたり、本のために家を建てる話はなかなか興味深いです。しかし、登場する人物は著名人や本の関係者が多く、一般の本好きとはレベルが違い過ぎていて遠い世界の話のようでした。もう少し身近に感じられる話が読みたかったです。

古本屋に売るなど蔵書処分の方法もきちんと書かれています。個人的には、「鮮度を失った本は手放す」「読み返せる本を多く持っているのが真の読書家」が印象に残りました。場所がない人にとっては百でも一万でも苦労しているはずなので、参考になると思います。

本書で語られるのは魔法のような整理整頓術はなく、あくまで現実的な方法です。思い切りが重要みたいです。



[ 2014/08/17 22:28 ] 実用 | TB(0) | CM(0)

2010年12月23日(木)

今日の早川さん3 

今日の早川さん3今日の早川さん3
著者:coco
出版:早川書房
発行:2010/04/22

評価〔B〕 何はなくとも書物な人たちの日常
キーワード:4コマ、本オタク

「何冊もあるのは別にいいんだよ!」「むしろ抜けてるのを見るのが苦痛なんだよ!」(本文より抜粋)


2巻から少し間を置いて出版された3巻。あとがきによると、著者の怠慢が原因だそうで。この巻も2巻同様限定版がありまして、そちらにはカルタが付いているそうな。題して「早川さんいろはかるた」。これによってどれくらい本が好きか分かる、のかな?ちなみに限定版でなくとも、どのような内容かは幕間のページ、いや切れ間の……あのちょっとしたページは何と呼ぶんだろう、に載っているのでご心配なく。

本好き読書好きたちの相変わらずの日常が描かれています。twitterを話題にし、結構新鮮です。それと、登場人物たちに少しずつ変化がでてきました。延流の進学に伴う変化、カンコと岩波の私生活の変化。特に巻末のずっとお城で暮らしてたが良いです。なんか似合ってました。岩波さんの出番がさらに減り、カンコちゃんの出番が増えました。出る頻度が、1巻の時と逆くらいになってそう。

本書で出てくる本のほとんどは読んだことありません。でも、こうして楽しそうに話しているのを読むと、なんだか興味が出てくるから不思議です。

絵柄がほんの少しだけ変わったような気がします。今後のんびり続いて楽しませてほしいです。






[ 2010/12/23 09:58 ] 4コマ漫画 | TB(0) | CM(0)

2010年12月16日(木)

書店繁盛記(ポプラ文庫) 

書店繁盛記 (ポプラ文庫)書店繁盛記 (ポプラ文庫)
著者:田口 久美子
出版:ポプラ社
発行:2010/04/05

評価〔B〕 本屋の裏側を紹介
キーワード:本屋、書店員、東京、ジュンク堂、リブロ、

変わったのはオンライン書店という販売形態だけではない、書店員の意識も、仕事自体も、さまざまに変化している。(はじめにより抜粋)


ジュンク堂新宿店の書店員による書店にまるわるあれこれのエッセイです。普段身近にある本屋さんですが、その裏側がどのようになっているのか知りません。そんな裏側をベテラン店員が赤裸々に綴っています。以前、某書店のアルバイトに申し込んで落ちた身としては、興味深い1冊。本書は、2006年に出版された本を2010年に文庫化したものです。

働いている人々の現場を知って欲しいと書かれているだけあって、普段店員が何をしているのか、どんなことで苦労しているのかが分かります。売るための「棚作り」や出版社・取次との関係は、業界ならではなので興味深いです。商品である本の配置も試行錯誤の結果であり、どの書店も似たような配置になるのは訳があったんですね。また、オンライン書店にも触れています。リアル売場の本の売上高上位3店は意外でした。なるほどねえ。

文中に出てくる本の補足説明が、著者のみならず出版社と出版日も書かれていて、実に書店員らしくて良いです。職業病なのか、マニアックなのか。第四章の「書店員になった理由」では、他の棚担当の同僚たちの意見もあってなかなか読み応えがあります。店員としての自負・こだわりが見えます。

職場の裏側について話しているせいか、少々愚痴っぽいところが残念というか気になりました。僕も愚痴っぽいので気持ちは分かりますが、不満よりも意欲を強く押し出してくれればもっと良かったのになあ。客注の件は、買う側としても売る側としても早く改善されると良いですね。

再販制度、オンライン書店、電子書籍と、書店の現場は刻一刻と変化しています。今後どうなるかは分かりませんが、リアル書店も好きな僕としては残っていて欲しいです。数年後に、また誰かが同じようなエッセイを書いてくれないかな。





[ 2010/12/16 22:16 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2010年06月17日(木)

読書について 他二篇 

読書について 他二篇 (岩波文庫)読書について 他二篇 (岩波文庫)
著者:ショウペンハウエル
出版:岩波書店
発行:1983/01

評価〔A-〕 自分で考えるのが大切です
キーワード:読書、古典、哲学、ショウペンハウエル

読書は言ってみれば自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである。(「思索」より抜粋)


ドイツの哲学者ショウペンハウエルが書いた、主に読書についての本です。このブログでは初の岩波文庫です。……いや、岩波文庫の本をまともに読むのは人生で初かも。なぜかお堅い本が読みたくなりました。この本、ネットでの評判も良かったし。表題作の「読書について」、そして「思索」「著作と文体」の3篇が収録されています。

主題である「読書について」と「思索」は短く、大半は「著者と文体」が占めます。前者2つは読み手、後者は著作者を対象としているように感じたので、読む順序は「読書」「思索」「著者と文体」が良かったかもしれません。

内容は、非多読のススメです。最近は、本は読めば読むほど良いという傾向が見られますが、それとは逆で、悪書はよまずに済ませることが重要だと論じています。人生に悪書を読んでいる暇はない、と。また、読書は他人に考えてもらうことでもあり、読書よりも思索が大切で意義のあることだと説いています。後者は、以前からそのようなことを感じていたので、すんなり受け入れられます。前者は、どの本にも何かしら得るものがあるのではと思っていたので、多少の反感はありますが、確かにそういう意見もあると思います。

全体的に断定的で攻撃的、社会に対する怒りに満ちた文章です。そのため主張は分かりやすいのですが、極端だと思う意見もあり、全面的に賛成という訳ではありません。また、「著者と文体」の後半は、ドイツ語の乱れに重点が置かれていて、読書から離れてしまっているのが残念でした。

ネットでの書評ほど絶賛はしませんが、現代日本でも通用することも多く、ためになると思います。期待していたほどではなかったので、BにしようかAしようかと迷ったのですが、今後もときどき読み返すことになりそうなので、A-ということで。




[ 2010/06/17 21:20 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)