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2018年04月29日(日)

働く女子の運命は 



著者:濱口 桂一郎
発売日: 2015/12/18

評価〔B-〕 経緯が詳しく書かれています。
キーワード:男女雇用機会均等法、ジョブ型、メンバーシップ型、

人の処遇がジョブではなくコースで分かれる日本社会では、欧米のような「ジョブの平等」は意味がありません。そこで、日本の男女平等政策は、もっぱら女性も男性と同じコースに乗せてくださいね、という方向に向かいました。(序章より抜粋)


1900年代に男女雇用機会均等法ができて以来、少しずつ労働環境の法整備が進んでいますが、未だに女性が働きやすいとは言えないのが日本の現状です。どうして賃金に差がついているのか、なぜすぐに同一労働同一賃金に切り替えられないのか。戦前から日本の労働を振り返り、女性の労働はどのような歴史をたどってきたかを明らかにしています。

日本では仕事に対して対価が支払われるのではなく、組織に所属していることに対して報酬が支払われるメンバーシップ型社会であるのが原因であるとしいます。この説明は説得力があります。昔よりはよくなったもののライフワークバランスなど関係ないかのような残業の多さ、家庭の事情を考慮しない転勤制度は、組織への忠誠心を試されてると考えれば理解しやすくなります。女性の場合、それに加えて家庭での役割も問題となってきます。男性の家での時間が少ないせいか、まだまだ家庭は女性が守るものという意識が残っていて、彼女たちが仕事と家庭の板挟みになるのは無理もないです。

世界が男女均等へと進んでいく時、日本経済が順調でそうした問題を軽視したのも忘れてはいけません。当時の新卒の女性たちはこうした習慣を当然と思っていたのか、それとも社会で大きな活躍を望んでいたのか。生の意見もあったらもっと良かったです。

女性の労働史としては過不足なく書かれていると思いますが、現状や今後の対策の部分が少ないのが残念でした。解決策のほうに興味があって本書を手に取ったので、他国の成功例などを踏まえて未来の話をもっと書いてほしかったです。女性の労働問題の原因や経緯に興味のある方にはおすすめしますが、私のように対策を知りたい方にはおすすめできません。




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[ 2018/04/29 18:40 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年03月02日(木)

さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち 



著者:原田 曜平
発売日: 2013/10/10

評価〔C+〕 バブル世代との違いが際立ちます。
キーワード:世代論、若者、ゆとり、さとり、不況、デフレ、バブル、団塊ジュニア、

原田「つまり、さとり世代は、もともと裕福なせいで物欲が育みにくかった上に、お金がなくても、ある程度良質なモノを得られてしまって、そこで満足しちゃっている。」(第2章より抜粋)


少し前まではゆとり世代と呼ばれていた若者たち、さとり世代とはどのような特徴を持つのか。彼らの対談から他の世代との違いや考え方を明らかにしていきます。

ひたすら解説ではなく、かわるがわる発言する対談形式なので読みやすいです。著者が司会を務めているので、あまり脱線することなく、知りたいことをうまく聞き出していると感じました。さとり世代誕生の要因は予想がついていたので驚きませんでしたけど、彼らの恋愛論や仕事に対する考え方は興味深いものでした。専業主婦の人気が高いのは意外だったかな。理解を深めたところで、最後のバブル世代との対談を読むと、ギャップが凄くて面白いです。バブル世代がアメリカ人のように見えます。(笑)

残念なのは、本書の冒頭で触れていますけど、意見を述べてくれた若者が都会の大学生だけだったことです。しかも、結構有名な学校で、著者の大人の調査に協力するような社交的で積極的な人たちばかり。地域も社会的立場も同じ人ばかりの集団で、これらの意見を若者の代表とするのは疑問が残ります。難しいとは思いますけど、もっと偏りのないバラバラな集団ならば良かったのですが・・・・・・。

参考にはなりますが、これ1冊でさとり世代を理解しようとは思わないほうが良さそうです。



[ 2017/03/02 21:45 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年01月08日(日)

「昔はよかった」病 



著者:パオロ・マッツァリーノ
発売日: 2015/7/17

評価〔B+〕 現代の悪いところばかり目立つものです。
キーワード:文化史、昔、社会、新聞、治安、人情、

戦前の日本では、今の10倍以上の詐欺被害が発生していました。しかも当時の日本の人口がいまの半分くらいだったのですから、戦前は平気で人をダマす悪いヤツがそこら中にいたんですよ。(第2章より抜粋)


異常なクレイマーやモンスターペアレンツ、凶悪な事件などがニュースで報じられると、社会が段々悪くなってきているような気がします。そうした影響からか、しばしば「古き良き」「昔はよかった」と言われますが、本当にそうなんでしょうか。イタリア生まれの日本文化史研究家が、様々な史料をもとに昔が本当に良かったか検証します。

読みやすい話し言葉で書かれていますので、かなり読みやすいです。新聞の投書や犯罪統計など裏づけもしっかりしていて、外国の方であることを忘れてしまうほど、内容もしっかりしています。

上で引用した犯罪件数が今のほうが少ないことは知っていましたけど、自警団の実態や美人を優遇していた企業・役所、商店街の歴史など知らないことばかりでした。印象に残ったのは、江戸時代は人情が薄かったことです。住居転出率の高さから、深い近所付き合いはなかったと断言していて興味深いです。

随筆は思うがままに書くものだと思っていたのですが、巻末の参考文献を見ると、下手な新書よりずっと正確であると感心しました。著者の他の本も評判が良さそうなので、機会がありましたら読んでみます。



[ 2017/01/08 19:05 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2009年05月08日(金)

日本人の知らない日本語 

日本人の知らない日本語日本人の知らない日本語
著者:蛇蔵&海野凪子
出版:メディアファクトリー
発行:2009/02/18

評価〔B〕 文化の違いを感じます
キーワード:コミックエッセイ、言語、日本語、国際

そんな日本語学校のカオスな日常をお楽しみ頂ければ幸いです。(本文より抜粋)


日本で外国人に日本語を教えている方のコミックエッセイです。あまりピンとこない人もいるかもしれませんが、考えてみれば日本にも語学学校あるのは自然なことですよね。でも、接点がなければそういう所があることを想像すらしないと思います。僕は外国で現地の語学学校に行った経験があるので、そのときのことを思い出しながら読みました。

母国語を使っている時は何の疑問も抱かないことを、外国人の生徒達が次々に質問してくるさまは面白くもあり、勉強させられます。例えば物の数え方。ひとつ、ふたつの他に、一個・一枚・一本などたくさんの言い方がありますが、手袋の数え方なんて知らないよねえ。また、なぜ旧仮名遣いはなくなったのか?(仮名の変遷)や、なぜ漢字に沢山の読み方があるのか?(漢字導入時の逸話)は、日本人でも知っている人は少なそうで興味深いです。

著者が本の中でも言っているように、言葉を学ぶことは文化を学ぶことです。『美しさは罪』『お見舞いのルール』は、それぞれの考え方の違いがでています。このような大人なのに外国では子供のような間違いをしてしまうのは、自分の経験と照らし合わせても納得です。この本は生徒達が主役ですが、彼・彼女たちを通して母国・母国語を再認識できるのも良いですね。

今まではあまり見かけなかったコミックエッセイという新しい本の形も、だんだん定着してきました。結構興味深い本が多いのはいいのですが、前々から思っていたのですが少々高いなぁ……他の漫画と同じくらいならいいのに、と思うのは贅沢でしょうか。



[ 2009/05/08 22:21 ] 言語 | TB(0) | CM(0)

2008年11月26日(水)

「ニッポン社会」入門 

「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)
著者:コリン ジョイス
出版:日本放送出版協会
発行:2006/12

評価〔A-〕 イギリス人の視点で日本を語る
キーワード:日本、文化、国際、イギリス

それを目にするやいなや、自分が東京もしくは大阪にいると実感させてくれるものとは何だろうか。(伍【日本の日常】より抜粋)


日本に10年以上住んでいるイギリス人記者による日本論です。論文ではなく随筆です。どうしてそう思い込んでいたのかよく分かりませんが、こういう本って40~50代くらいの人が書いてるんだろうな~と思っていました。長い間住んでみて、とあったからかな? 読み続けていってあとがきにある自己紹介を見たら30代だったので、少し吃驚しました。予想していたより若かった。失礼いたしました。

日本・日本人についての本はいくつか読みましたが、この本はちょっと違ってただ日本を語るだけでなく、著者の母国イギリスや職業も絡めて書かれているのが特徴です。例えばサッカーとビールを熱く語ったり、ジョークを言ったり、また時には日刊紙『デイリー・テレグラフ』でどのように日本を伝えるか頭を悩ませたりと彼の色がでていて読み応えがあります。また、食文化の章で通説を覆す弁解は新鮮でした。

メインテーマである日本についての記述も面白く、プールは日本社会の縮図だと評し、イギリスと日本は似ていないと言ってのけ、読者の興味を引いてくれます。きっと日本について何度も何度も質問されたせいなんでしょうか。一方で、日本語や日本人の独創性についてなどよく見る話題も書かれています。好きなのは『日本以外では決して見られない光景』と『わが町、東京を弁護する』かな。前者は他国との比較ですが2ヶ国しか見たことのない僕でも共感できるし、後者はやはり外国人から見た日本の街の良し悪しが分かります。締めの架空の後任者への手紙は実にうまく纏まっていて秀逸です。ここだけ読んでも十分楽しめますが、やはり最初から読んだほうが味があって良いですよ。

外国人から見た日本もそうだけれども、自分が生まれ育った社会から出て、異なる文化と接した時の体験談はとても興味深いです。できればまったく違った価値観の持つ社会に触れたほうが面白いと思います。そして、長い歴史から生まれた良い点はもちろん、妙なところやおかしな点も書かれているとなお良いですね。日本を語った本は見つけようと思えば見つかるのですが、ある国の人が別の国を訪れ色々と感想を記した本はなかなか見かけません。そういう本も読んでみたいです。




[ 2008/11/26 23:02 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)