2017年03月14日(火)

新装版 マジックミラー 



著者:有栖川 有栖
発売日: 2008/4/15

評価〔B+〕 わかりやすく面白いトリックでした。
キーワード:アリバイ、推理、双子、文庫化

「みんなにある。いわゆるアリバイが」(第三章より抜粋)


密室とアリバイは推理物のツートップ、のような文章をどこかで読んだことがあります。その二大ジャンルのうちのひとつ、アリバイを主題とした推理小説です。

冒頭の殺人事件を追ううちに電車の時刻表が出てきた時は、正直好みじゃないからつまらないなあと思っていたのですが、ここで投げ出さなくて良かったです。なぜなら、第二の事件の真相が分かりやすく面白かったからです。ミステリマニアの方々からしたら、もしかしたら見慣れたトリックなのかもしれませんけど、複雑でなく意外性があって楽しめました。

第七章で推理作家が話すアリバイ講義も興味深かったです。事件をとくヒントにもなりますが、それを抜きにしても様々なタイプのアリバイ作りが書かれていて面白いです。もう少し語って欲しかったです。あとがきに書かれたアリバイの作例に興味が出てきました。後で読んでみようかな。



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[ 2017/03/14 21:44 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年02月25日(土)

電話男 (ハルキ文庫) 



著者:小林 恭二
発売日: 2000/06

評価〔B〕 評価が難しいなぁ。
キーワード:電話、コミニュケーション、文庫化、

わたくしたち電話男は、もともと人の話を聞く一方の存在でして、すすんで、人に話をするような習慣は持ち合わせておりません。(本文より抜粋)


電話男は無報酬でどんな話も聞き、文句も言わず自分からは電話を切りません。ただ相手の話を聞くだけの人々は、個人にそして社会にどのような変化をもたらすのか。同じ世界をそれぞれ違う角度から見た、中編2つを収録しています。1987年に出た単行本を文庫化したものです。

2編とも人と人とのコミュニケーションを描いた物語ですが、インターネットや携帯電話が普及する前に書いたとは思えないほど、古さを感じさせません。某が個人的な考えとして知恵と感覚について語っていますが、これがなかなか興味深いです。一過性の社会問題なのか、それとももっと重大な何かなのか。

個々の具体的な物語から人類共通の抽象的な話へと移っていくので、娯楽小説のような良くある分かりやすい面白さはありません。もっと本質的なことを語っているのですが、分かったような分からないような・・・・・・もう一回読まなきゃダメかな。つまらなくはないですが、面白いかと言われると躊躇ってしまいます。抽象概念が好きな人には進めますが、人を選ぶ本だと思いました。



[ 2017/02/25 21:35 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2016年11月03日(木)

平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学 (草思社文庫) 



著者:M・スコット・ペック (著), 森英明 (翻訳)
発売日: 2011/8/5

評価〔B+〕 序盤は解説よりも具体例が興味深い。
キーワード:心理学、邪悪、善、虚偽、文庫化

これにたいして、私が邪悪と呼んでいる人たちの最も特徴的な行動としてあげられるのが、他人をスケープゴートにする、つまり、他人に罪を転嫁することである。自分は非難の対象外だと考えている彼らは、だれであろうと自分に近づいてくる人間を激しく攻撃する。(第2章より抜粋)


主題は人間の邪悪さ、邪悪な人々についてです。悪と聞くと殺人や詐欺のような犯罪を連想してしまいますが、本書で問題となる悪はそれらとは違います。自分の評価が落ちそうになると、理由をつけて否定する人たちのことです。有能で正しそうに見えるけれど、家族であれ誰であれ責任を押し付け保身を図ります。違法ではないけれど、自分に問題があることが分かっていない厄介な人です。

邪悪な人たちの例として、精神科医の著者と面談をした何人かの人たちが挙げられています。問題行動を起こす子の親や夫婦が登場しますが、著者は特徴として嫌悪感を覚えると記しています。読んでいくと、他人の立場にたって想像することができないので、説得や治療が非常に困難です。邪悪さの中核はナルシシズム(自己愛)であるとする著者の持論は、正しいのかもしれませんね。また、失敗談も隠さず挙げているので、好感が持てます。

こうした特徴を邪悪と呼んだり、邪悪性を精神病と呼ぶのは、まだ何か違和感があります。意識して行っている悪は悪ではないのだろうか、心の特徴を病気と呼ぶのはしっくりこないなあ、と色々考えてしまいます。これから研究されていく新しい分野だと思うので、概念をうまく理解できていないのかもしれません。

悪の治療も少しだけ述べられていますが、実践するのは難しそうです。著者は残念ながら亡くなってしまいましたが、誰か後を引き継いだ研究者がいるのでしょうか? 邪悪性の研究が続いていることを願います。ただ、邪悪な人たちの心配をするだけでなく、自分も邪悪な人になっていないか自問自答することを怠らないようにしたいです。



[ 2016/11/03 18:46 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2016年10月02日(日)

夜行観覧車 (双葉文庫) 



著者:湊 かなえ
発売日: 2013/1/4

評価〔B+〕 家族と野次馬を描いた小説です。
キーワード:家族、家庭、子育て、近所付き合い、

いったい、あの幸せを絵に描いたような家で何が起こったのだろう。(第一章 遠藤家より抜粋)


冒頭で事件が起き真相が分からないまま進むので、推理小説かサスペンスのようですが、内容は家族一人ひとりを描いた家族小説です。2010年に刊行されたものを文庫化。テレビドラマ化もされました。

家族の物語と聞けば、何か感動的な話を連想する方もいそうですが、「告白」を書いた著者の家族小説となると、綺麗事では終わりません。一見幸せそうな家庭でも不満やストレスがあったり、親の思いと子の思いがすれ違っていたり、そういう現実をきちんと描写しています。他人を理解する難しさを教えてくれます。他の作品でも思ったのですが、人の利己的な部分、悪とまではいかないけれど改めてほしい短所を描くのが巧いです。観察眼があるのか、著者の周りの人たちが個性的なのか・・・・・・。

家庭内だけでなく、家庭同士も思い込みによる誤解があります。事件を知った無関係の人たち、野次馬たちも同じです。小説の読者として客観的な立場で見ると、いかに単なる憶測に過ぎないことであるかが分かります。もしかしたら自分もそうなのかもしれないと、思い込みがないか疑ってみることが大切なのかもしれません。

事件の終結までの展開は、さほど意外性もなくあっさりしたものでした。そこが本書の要ではないのですが、もう少しだけ捻りが欲しかったです。



ちょっとだけネタばれ話↓
[ 2016/10/02 22:02 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2016年09月25日(日)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫) 



著者:三津田 信三
発売日: 2009/3/13

評価〔B+〕 分厚い本です。それと、まさかの真相。
キーワード:戦後、神隠し、民俗学、ホラー、推理、

ある種の感慨を覚えながら前方を見遣った言耶の眼に、神々櫛村の入口の両脇に立つ二体のカカシ様の何とも不気味な姿が、いきなり飛び込んできた。(弐より抜粋)


戦後、怪奇小説家の刀城言耶が取材で因習が根強く残る辺境の村を訪れ、そこで起きる事件に巻き込まれていく和風ホラーミステリーです。誰かの視点で固定されず、いくつかの視点で順番に物語が綴られていきます。刀城言耶(とうじょうげんや)シリーズの1冊目で、2006年2月に刊行した本を文庫化したものです。

なんといっても長いです。600ページ以上あります。序盤が固有名詞が多く読みにくかったので、最後まで読み切れるか心配しましたが、紗霧の日記からは読みやすくなって安心しました。前半はホラー要素が濃く、後半から終盤にかけてミステリ要素が強まっていきます。分厚い本なので、読んでいる途中でまだ半分も読んでないのかと何回も確認してしまいました。もう少し短くできなかったのかな。ホラーの雰囲気を出そうとすると、仕方ないのかもしれませんが。とにかく長いという良くない印象が大きく残りました。

しかし、最終盤の謎解きでは自分の予想した犯人が当たった?と思ったら、新事実発覚で外れていたり、二転三転して翻弄されましたけど面白かったです。意外過ぎる真相でしたが、見抜けた読者はいたのでしょうか? ヒントはありましたけど、相当難しいのではないでしょうか。

最後が見事だっただけに、その長さだけが残念でした。長くても気にならない人もいますので、好みの問題だと思います。無理に1冊にせず、上下巻に分ければ印象も違っていたと思います。もしも、上下巻だったら、上は評価Bで下は評価Aにしたかもしれません。



[ 2016/09/25 21:55 ] 小説 | TB(0) | CM(0)