2018年04月07日(土)

哲学の練習問題 (河出文庫) 



著者:西 研
発売日: 2012/11/3

評価〔A〕 考えることは簡単なようで難しいです。
キーワード:哲学、本質、人生、社会、

人は意外なほど、ほんとうは自分は「何が」気になっているのか、をわかっていないもの。そこを見つめようとする勇気と、つきつめて根っこからわかろうとする意志から「考えること」ははじまる。(プロローグより抜粋)


教科書のような題名ですが、あまり専門用語を使わず素人でも読めます。しかし、分かると思って読んでいると、いつの間にか難しい問題へと突入しているので油断なりません。抽象的な概念が数多く登場します。

四章でも言及されていますが、唯一の真理や美はなく、本書を読めばてっとり早く全て分かるという訳でもありません。むしろ上記の引用のとおり、深く突き詰めて考えることの大切さを痛感するばかりです。生き方や人との関係の本質についてそれぞれ考えるきっかけを与えてくれる内容で、練習問題という題名がぴったりです。

ネットで時々見かける宇宙の果てはどうなっているの問題が取り上げられていて、それに対する解答(もしくは証明)が非常に面白かったです。宇宙を考えているのに、いつのまにか人間について考えているのが奇妙な感じです。また、異文化交流は違うから面白いのではなく、違いの中に共通性を見出すことが理解に繋がると書かれていて印象深かったです。まるっきり違う文化には本当に違和感しか覚えないのでしょうか。興味深いです。

各章の終わりには参考文献(推薦図書?)が挙げられていますので、気になった主題はさらに追いかけてみるのも楽しいかもしれません。こうした記述は読者の視野を広げる一助となるので、どんどん書いて欲しいです。




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[ 2018/04/07 21:43 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2017年11月23日(木)

The Book jojo’s bizarre adventure 4th another day 



著者:乙一 、 ‎荒木 飛呂彦
発売日: 2012/11/20

評価〔B〕 ジョジョだけど乙一らしい物語でした。
キーワード:スタンド、超能力、第4部、小説化、文庫化、

何者もその文章を拒否することはできない。(第三章より抜粋)


人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」を小説化したものです。ただし原作ではなく第4部の外伝として、杜王町に新たなスタンド使いが登場します。文章担当は乙一。挿絵は本人が描いています。

不可解な事件が発生し、スタンド使い同士は引かれあい対峙する。原作を踏襲した展開で、違和感はあまり感じませんでした。現在起きている出来事と、全ての発端となった事件が交互に語られ、徐々に繋がりが見えてくるのが良かったです。新登場のスタンドは、個人的にはあまり強くないと思うけれど、使用者が使い方を熟知していて戦闘も盛り上がりました。

しかし、全て原作通りかと言えばそうでもなく、良くも悪くも別の人が書いたものだと感じました。特に、物語の締め方に乙一らしさが強く出ています。物悲しいというか切ないというか。著者の他の小説を読んだことのある方なら分かるかと思います。

できれば終業式の夜、家での出来事を全部書いてほしかったかな。見方によっては一番肝心な場面だったので。




[ 2017/11/23 21:38 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年09月02日(土)

ラットマン (光文社文庫) 



著者:道尾 秀介
発売日: 2010/7/8

評価〔B+〕 題名がヒントです。
キーワード:推理、文庫化、

同じことをやれ。同じことを。(P130本文より抜粋)


人が何かを見るとき、直前に見ていたものが判断や理解に影響する現象を、分かりやすく体験できるのがラットマンの絵です。この先入観のようなものが、本書では重要な意味を持ちます。

事件はあるライブハウス。趣味でバンドを組んでいる主人公・姫川の恋愛と、彼の過去の不幸な出来事の2つを軸に、物語は進んでいきます。やや暗く重い雰囲気で進み、事件がなかなか起きないので推理小説ではなく青春小説っぽいですが、事件後はテンポよく進むのでご安心を。

早い段階で真相が分かってしまったと思いながら読んでいたら、案の定と言いますかやっぱり間違っていました。文脈効果というヒントをもらいながら深く考えていなかったので、うまくミスリードに引っかかってしまいました。いや、しかし、終盤までそう思い込ませるとは巧いです。

話の筋自体は好みではなかったのですが、伏線も上手でしたし、なにより予想していたより読後感が悪くなかったのが良かったです。



[ 2017/09/02 19:06 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年07月23日(日)

占星術殺人事件 (講談社文庫) 



著者:島田 荘司
発売日: 1987/7/8

評価〔B-〕 これが元ネタだったのか。
キーワード:推理、文庫化、

「この謎解きは大ざっぱにいって二つの問いかけがあると思う。一つは犯人捜し、もう一つがこのアゾート捜しだよ」(P134より抜粋)


四十年前に迷宮入りとなった殺人事件に、頭の切れる占い師・御手洗潔と、彼の友人・石岡の二人が挑みます。著者のデビュー作。

序盤の遺言状兼小説が退屈でしたが、事件の概要あたりから徐々に面白くなっていきます。古い推理小説らしく、読者への挑戦状があるので、うっかり解決編を読んでしまうことはありません。こうした著者の発言は、劇中の雰囲気を損なうこともあるので、好みが分かれそうですが。また、冗長なところあったが少々残念でした。事件の中心人物を詳しく描写するためや、推理のミスリードのためなのは分かりますが、それよりもくどいと言う印象のほうが強かったです。

事件のトリックは独創的で素晴らしかったです・・・・・・が、最後の事件のトリックに関しては、前に似たようなトリックの作品を見たことがあったので、素直に楽しめませんでした。こちらのほうが先に出版されているので、本書が元ネタだったのですね。いやー、あれに似ているなーと思ってたら、本当にあれだったとは。驚きです。最初に考えた著者は凄いですね。

実写化すれば面白そうですが、凄惨な場面があるから難しいかな。余談ではありますが、2013年に講談社文庫から改訂完全版が出版されています。読んでから完全版の存在に気がつきました。まだ未読の方はそちらを読んだほうが良さそうですね。



[ 2017/07/23 21:13 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年05月23日(火)

完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫) 



著者:若林 正恭
発売日: 2015/12/25

評価〔B+〕 少しずつ変わっているのが興味深いです。
キーワード:エッセイ、芸能、お笑い、テレビ、文庫化、

誰もぼくのことなんて見ていない。それはわかっているのだ。だがしかし、だ。ぼくなのだ。ぼくが!見ているのだ!(「自意識過剰」より抜粋)


お笑いコンビ・オードリーのピンク男じゃないほう、スーツ姿の常識人っぽいほうの若林さんが雑誌で連載していたエッセイをまとめた本です。完全版ということで100ページ以上加筆されています。

どうやら人見知りかつ自意識過剰で有名らしく、その内面を飾ることなく明かしています。内向的な人なら結構共感できる点も多いのではないでしょうか。個人的には、「テレビのお仕事をしていくうちに感じてたのが、世の中の人は食べ物にすごい興味があるんだな」、あたりがかなり頷けます。芸能人でもそう思っている人がいて、なんか安心しました。

一つひとつのエッセイが数ページと短いためか、序盤は物足りなさを感じていたのですが、中盤以降は彼の行動に変化が出始めて面白いです。最初は無趣味だった彼が、面白いものを見つけて変わっていくのは良いですね。

「ネガティブモンスター」では考えすぎない方法を考え、ネガティブを潰すのはポジティブではないと結論付けます。また、「書籍化します」では、物事を楽しむためにはどうするのかを悩み、彼なりに答えを出します。こうした内向的な人なら身に覚えがありそうなことに対し、あやふやにせずきっちり言葉で説明しているのが良いですね。抽象概念を言葉にする能力が高そう。

短いものより長い文章のほうが面白かったので、次があるなら少し長めのエッセイを出して欲しいです。



[ 2017/05/23 21:40 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)