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2019年10月29日(火)

アウト&アウト (講談社文庫) 



著者:木内 一裕
発売日: 2011/7/15

評価〔C+〕 結構ひどい話だと思います。
キーワード:探偵、ヤクザ、文庫化、

「俺に証拠は必要ない」(第一章発端より抜粋)


私立探偵・矢能は依頼人との待ち合わせ場所に行ってみたら、死体を発見し事件に巻き込まれていくといった探偵小説です。出だしだけ書くとよくありそうですが、本書が他と違うのは探偵が元ヤクザであること。これは著者の「水の中の犬」の続編です。巻末の解説で初めて知りました。

矢能は元ヤクザなのでなかなか足を洗えず探偵家業をがんばる人物なのかなと思ったら、探偵とは名ばかりのまだそちらの世界の住人で少々面喰らいました。彼の周囲の人物はまっとうな人間は少なく、彼自身まったく探偵らしくありません。推理小説や探偵小説ではなく、ハードボイルド的な何かです。

事件は上手くおさまったなと感心しましたけど、主人公の矢能は好きではないのでどうしても印象が良くないです。彼を格好良いと捉えるのか悪者と捉えるのかで評価が分かれそうです。本書が続編であることを考慮すると、好意的な人が多そうですね。また、不幸な結果で終わってしまう人が少なくないのもあまり良い気分ではありませんでした。

評価するに当たって作品の出来よりも好みが大きく影響した小説でした。


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[ 2019/10/29 21:18 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2019年09月02日(月)

夫婦という病 



著者:岡田尊司
発売日: 2018/3/3

評価〔A〕 既婚者だったらSです。
キーワード:夫婦、結婚、出産、離婚、恋愛、

そこで一番変わった点は、互いの非に目を向けるのではなく、互いの失敗に対して優しさや寛容さを取り戻したことだ。(第十五章より抜粋)


夫婦やパートナーとの関係をより良くかつ安定したものにするために、精神科医である著者が21のケースを通して解決策を模索します。

前半は夫婦が上手くいかなくなっていく様を何回も見るので疲れてきます。お互いにもう少し思いやることができたならと思うのですが、感情的になってしまうのも良く分かります。様々なパターンが挙げられているのでどれかに当てはまる夫婦も多いのではないでしょうか。

基本的には対人関係を支える愛着に注目し、安定―不安定と回避―不安の軸で男女を分類して特性を掴み問題の解決をはかっています。愛着スタイルを踏まえた上で原因と対策を説明しているので、分かりやすく頭にすんなり入ってきます。

後半は一度は不安定になった関係が持ち直した例が描かれています。我慢以外の解決策が提示されているので、どれか一つは実践できそうな方法が見つかるかもしれません。

読んでいるうちに現在の夫婦制度は現代人の価値観に合っているのだろうか、合ってない人もいそうだな、と思い始めましたが、終盤では結婚という形にこだわらない関係や生き方について述べられていて興味深かったです。一夫一婦制ばかり考えが囚われていましたが、違う可能性を示しているのが良かったです。現代の倫理観とは離れていて驚きましたけど。一夫一婦制に向いている人ばかりじゃないからね。

個人的に価値観が合わない対策や関係もありますが、夫婦やパートナーとの良い関係を保ちたいもしくは改善したいと思っているなら一読の価値はあると感じています。これから親密になる二人にも役に立つでしょう。

巻末の科学者の方の解説も良かったです。


[ 2019/09/02 21:59 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2019年03月30日(土)

風ヶ丘五十円玉祭りの謎 



著者:青崎 有吾
発売日: 2017/7/20

評価〔B+〕 登場人物たちの個性が出ています。
キーワード:推理、学園、連作短編集、文庫化

「・・・それが他のよくわからないとは別の意味でよくわからん話でさ。向坂と裏染に相談したんだよ」(天使たちの残暑見舞いより抜粋)


裏染天馬シリーズ初の連作短編集です。学食や部活と日常に現れた謎を解き明かしていきます。全五編。

オタク趣味の探偵なので少々ライトノベルのような雰囲気がありましたが、本書では各章に扉絵がありますのでよりラノベ感が出ています。しかし、肝心の推理のほうは長編と同じように切れの良い推理が楽しめますのでご安心を。気に入ったのは「天使たちの残暑見舞い」です。謎あり笑いありで意外性ありで面白いです。

5つの短編は3つの長編と並行した物語なので、できれば長編を先に読んだほうがいいのかも。読まなくても楽しめるとは思いますけど、知っている人物が多いほうが読みやすいかな。

また、長編ではなかなか焦点が当たらない登場人物たちの詳細も描かれていて、このシリーズをさらに楽しめるようになっています。長編より気軽に楽しめるので、このシリーズを読み続けている人には特におすすめです。


[ 2019/03/30 20:43 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2018年11月26日(月)

水族館の殺人 (創元推理文庫) 



著者:青崎 有吾
発売日: 2016/7/28

評価〔B+〕 手がかり少なすぎ。
キーワード:推理、学園、文庫化

「一人だけ、こういう問題に強そうな奴を知ってる」(P171より抜粋)


卓球少女・袴田柚乃と駄目人間・裏染天馬のコンビ再び。地元の水族館で起きた凄惨な事件は、容疑者が多く手がかりが極端に少ないものでした。天馬は謎を解き明かすことができるのか? 「体育館の殺人」に続く2冊目です。文庫化。

前作同様、登場人物が多いですがそれをあまり意識させない読みやすさがあります。天馬の趣味のせいもあってか、読んでいて重くなることはなさそう。高校生探偵は捜査に加わる経緯は雑ですが、緻密な推理は健在で面白いです。あの消去法のような推理はまさに合理的で、ひらめきで解いてしまうのとは違って説得力が格段にあります。あそこまで物事を分解して考えられれば、本当に凄いと思います。

アリバイや証言の時間が嫌に正確なことなど多少の違和感はありましたけど、今回も楽しめました。ただ、全体的には前作のほうが質は上だと感じました。結末があっさりだったのが特に。次の作品も出版されているようなので、楽しみです。




[ 2018/11/26 18:29 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2018年07月29日(日)

満願 (新潮文庫) 



著者:米澤 穂信
発売日: 2017/7/28

評価〔A-〕 推理の感心とホラーの恐怖を。
キーワード:暗黒ミステリ、短編集、ホラー、文庫化

『全宇宙の生命を脅かすモノ―― 災いの渦』(本文より抜粋)


温泉宿、交番、遠い異国の村と、実に多種多様な舞台と職業の人たちを描いた不穏な雰囲気が漂うミステリ短編集です。このミステリーがすごい2015年1位、週刊文春ミステリ2014年1位、ミステリが読みたい2015年1位、そして第27回山本周五郎賞受賞。

スパッと明るく解決ではなく、最後に明かされる恐ろしい事実で幕を引く短編ばかりなのが特徴です。暗黒小説と言うのでしょうか、それともサスペンスホラーのほうが近いかもしれません。ただ悪意や恐怖のみではなく、推理小説作家らしくまず謎があり終盤に真実が明かされる構造となっています。どの短編もさりげなく伏線がはられていて巧みです。「万灯」はやや長く感じましたけど、見事な終わり方だと思います。

また、美しい女性とその娘たちが主役の「柘榴」は非常に印象に残る短編でした。一人称で淡々と進むので一見本書には不釣り合いに思えますが、ある人物の真意が分かると全てが違って見えてきて驚きました。実写ドラマ化が見たい気もしますが、実際の映像にすると陳腐なものになりそうなので、読み手の想像に任せるのが良さそうです。それぞれが最適な人物像を想像できるのは、小説の利点ですね。

語り手から見て、知るすべのない他の登場人物たちの心情をあれこれ推理するのが興味深い短編集でした。殺人事件を扱うよくある推理小説でもなく、日常の謎でもないものを探している人は試しに読んでみてはいかがでしょうか。ちなみに同著者の「儚い羊たちの祝宴」と同じタイプなので、「儚い羊」が気に入っている人はきっと楽しめるでしょう。




[ 2018/07/29 23:10 ] 小説 | TB(0) | CM(0)