2017年07月23日(日)

占星術殺人事件 (講談社文庫) 



著者:島田 荘司
発売日: 1987/7/8

評価〔B-〕 これが元ネタだったのか。
キーワード:推理、文庫化、

「この謎解きは大ざっぱにいって二つの問いかけがあると思う。一つは犯人捜し、もう一つがこのアゾート捜しだよ」(P134より抜粋)


四十年前に迷宮入りとなった殺人事件に、頭の切れる占い師・御手洗潔と、彼の友人・石岡の二人が挑みます。著者のデビュー作。

序盤の遺言状兼小説が退屈でしたが、事件の概要あたりから徐々に面白くなっていきます。古い推理小説らしく、読者への挑戦状があるので、うっかり解決編を読んでしまうことはありません。こうした著者の発言は、劇中の雰囲気を損なうこともあるので、好みが分かれそうですが。また、冗長なところあったが少々残念でした。事件の中心人物を詳しく描写するためや、推理のミスリードのためなのは分かりますが、それよりもくどいと言う印象のほうが強かったです。

事件のトリックは独創的で素晴らしかったです・・・・・・が、最後の事件のトリックに関しては、前に似たようなトリックの作品を見たことがあったので、素直に楽しめませんでした。こちらのほうが先に出版されているので、本書が元ネタだったのですね。いやー、あれに似ているなーと思ってたら、本当にあれだったとは。驚きです。最初に考えた著者は凄いですね。

実写化すれば面白そうですが、凄惨な場面があるから難しいかな。余談ではありますが、2013年に講談社文庫から改訂完全版が出版されています。読んでから完全版の存在に気がつきました。まだ未読の方はそちらを読んだほうが良さそうですね。



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[ 2017/07/23 21:13 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年04月28日(金)

体育館の殺人 (創元推理文庫) 



著者:青崎 有吾
発売日: 2015/3/12

評価〔B+〕 雰囲気は軽く、推理は真面目に。
キーワード:推理、学園、文庫化

「あの人は探偵っていうより、引きこもりでアニメオタクの駄目人間かな」(本文より抜粋)


高校で殺人事件が起き、一風変わったオタクの生徒が事件に挑む・・・・・・と書くと、ライトノベルではありがちな推理ものと感じる方が多いと思います。しかし、それらとは違って、オタク趣味はあくまで物語のアクセントであり、見どころは理詰めの推理です。第22回鮎川哲也賞受賞作。文庫化。

最初は探偵役が天才的なひらめきで即解決と思っていたのですが、意外とじっくり推理をしていて少々驚きました。ひらめきではなく、様々な可能性を一つひとつ潰していく着実な論理で真相にせまっていきます。反論を断つ方法というか、逃げ道をなくすやり方で、ラノベのような軽い雰囲気も持ちながら、こうした推理を見せるのは味があると思います。

解決編の前に「読者への挑戦」があったので、それにつられて少しだけ推理してみましたが、見事に外れました。真相の半分くらいしかわかっていませんでした。きちんと時間をかけて推理すれば良かったかも。

劇中、オタク趣味に関する発言がちらほら出てきますが、分からなくても楽しめます。分かれば、より楽しめます。推理劇は古風、人物像は今風な作品でした。




[ 2017/04/28 11:15 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年04月12日(水)

ふわふわの泉 



著者:野尻 抱介
発売日: 2012/7/24

評価〔A-〕 泉のネーミングセンスも結構好き。
キーワード:SF、化学、宇宙、

「努力しないで生きたいと思わないか」(本文より抜粋)


SFでは遠い未来の魔法のような技術が度々登場しますが、その技術がいかにして作られ、そして発展していったのかを追ったのが本書です。物語は、努力しないで生きることが目標の化学部部長・朝倉泉が、唯一の部員・保科昶(あきら)と共に文化祭の展示物を制作しているところから始まります。第33回星雲賞日本長編部門受賞作。

身近で少し変わった出来事が起こる学園系SFかーと読んでいたら違っていて、どんどん突っ走っていきます。テンポよく進むので爽快で面白いです。良い意味で期待が裏切られた形でした。練られた伏線ではなく、現実の想像できるところからワクワクするようなところまで発展するのが、容易に想像できるのが本書の魅力ですね。SFの部分も少な過ぎず、かと言ってSFを読んだことない人が嫌になるほど多くもなく、ちょうど良かったと思います。

多少、強引な展開や唐突な急展開もありましたが、面白さが損なわれるほどではなかったです。推理小説のような緻密なシナリオを望む人には、合わないかもしれません。

あとがきによると、設定は専門家にお世話になったらしいので、おそらく科学的考察もしっかりしているのでしょう。あの物質も・・・・・・まあこれは読んでのお楽しみですね、表紙から受ける印象とは異なり、しっかりとした説得力あるハードSFでした。でも、泉の性格のおかげか、または著者の文章力のなせる業なのか、堅苦しくなく読みやすかったです。




[ 2017/04/12 21:08 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年03月14日(火)

新装版 マジックミラー 



著者:有栖川 有栖
発売日: 2008/4/15

評価〔B+〕 わかりやすく面白いトリックでした。
キーワード:アリバイ、推理、双子、文庫化

「みんなにある。いわゆるアリバイが」(第三章より抜粋)


密室とアリバイは推理物のツートップ、のような文章をどこかで読んだことがあります。その二大ジャンルのうちのひとつ、アリバイを主題とした推理小説です。

冒頭の殺人事件を追ううちに電車の時刻表が出てきた時は、正直好みじゃないからつまらないなあと思っていたのですが、ここで投げ出さなくて良かったです。なぜなら、第二の事件の真相が分かりやすく面白かったからです。ミステリマニアの方々からしたら、もしかしたら見慣れたトリックなのかもしれませんけど、複雑でなく意外性があって楽しめました。

第七章で推理作家が話すアリバイ講義も興味深かったです。事件をとくヒントにもなりますが、それを抜きにしても様々なタイプのアリバイ作りが書かれていて面白いです。もう少し語って欲しかったです。あとがきに書かれたアリバイの作例に興味が出てきました。後で読んでみようかな。



[ 2017/03/14 21:44 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年02月25日(土)

電話男 (ハルキ文庫) 



著者:小林 恭二
発売日: 2000/06

評価〔B〕 評価が難しいなぁ。
キーワード:電話、コミニュケーション、文庫化、

わたくしたち電話男は、もともと人の話を聞く一方の存在でして、すすんで、人に話をするような習慣は持ち合わせておりません。(本文より抜粋)


電話男は無報酬でどんな話も聞き、文句も言わず自分からは電話を切りません。ただ相手の話を聞くだけの人々は、個人にそして社会にどのような変化をもたらすのか。同じ世界をそれぞれ違う角度から見た、中編2つを収録しています。1987年に出た単行本を文庫化したものです。

2編とも人と人とのコミュニケーションを描いた物語ですが、インターネットや携帯電話が普及する前に書いたとは思えないほど、古さを感じさせません。某が個人的な考えとして知恵と感覚について語っていますが、これがなかなか興味深いです。一過性の社会問題なのか、それとももっと重大な何かなのか。

個々の具体的な物語から人類共通の抽象的な話へと移っていくので、娯楽小説のような良くある分かりやすい面白さはありません。もっと本質的なことを語っているのですが、分かったような分からないような・・・・・・もう一回読まなきゃダメかな。つまらなくはないですが、面白いかと言われると躊躇ってしまいます。抽象概念が好きな人には進めますが、人を選ぶ本だと思いました。



[ 2017/02/25 21:35 ] 小説 | TB(0) | CM(0)