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2013年11月09日(土)

女ことばと日本語 

女ことばと日本語 (岩波新書)女ことばと日本語 (岩波新書)
著者:中村 桃子
出版:岩波書店
発行:2012/08/22

評価〔B〕 言葉と社会の関係を探求します。
キーワード:日本語、女ことば、社会、政治、

当時の女子学生はさまざまな言葉を使っており、その中には書生言葉も、「てよだわ」言葉も、英語も漢語もありました。(本文より抜粋)


現代では女性らしい言葉使い、すなわち女ことばは当たりまえのように存在していますが、これらはいつからあったのでしょうか。日本語が話し始めた頃なのか、それともある時期を境に増え始めたのか、その歴史を知っている人はほとんどいないと思います。よくある言葉づかいやマナー本のように具体的な使用法ではなく、その存在理由と意義について考察していきます。

女ことばの成り立ちがいかに社会の影響を受けているのかが分かります。日本社会が女性に求めてきたものやその時代の政府に都合の良いものが、女ことばに色濃く反映されていて少々意外でした。方言に近いのかなと思っていたので。今からは想像しがたい男女の区別もしくは差別があったのが分かります。

また、男ことばとは何なのかと逆から考えてみると、色々見えてきて面白いです。明治政府の標準語を定めるに当たって、どの話し言葉を採用するかを決める逸話が興味深いです。そのあとに続く、てよだわ言葉から女学生ことばへの変遷も重要でなるほどと思ってしまいました。

当時の資料を挙げ説明してあるのでためになるのですが、社会だけでなく政治や思想も絡んできて、予想していたよりもずっと深く重いテーマなのだなと感じました。読んでいるとまだ資料が十分でないところもありそうで、今後の研究によりさらなる発見が期待できそうです。







[ 2013/11/09 18:13 ] 言語 | TB(0) | CM(0)

2011年10月03日(月)

ことばと文化 

ことばと文化 (岩波新書)ことばと文化 (岩波新書)
著者:鈴木 孝夫
出版:岩波書店
発行:1973/05/21

評価〔B+〕 言語の違いの面白さを知る
キーワード:言語、文化、

私は英語を学び出してから、もう三十年以上になる。米国やカナダにも何年か滞在したこともある。それなのに英語の lip が、このように日本語の「くちびる」とは違っていることに気付いたのは、なんと二、三年前のことでしかない。(P43より抜粋)


国際化が進むにつれ役に立つ言語とそうでないものの差が出てきて、どんどん言語の総数は減っていますが、それでも世界には数多くの言語が存在しています。日本語をそうした他の言語と比較することにより、日本の文化の特色と明らかにし、また言語と価値観・習慣の関係も分かりやすく説明していく、文字通りことばと文化の入門書です。

言語学の本ですが全体的に分かりやすく、やや専門的かなと感じたのは6章くらいです。外国語と母国語の違いを、著者の日常の体験から解説しています。上記の引用のように、lip と唇はまったく同じものを指していると思い込みがちですが、実は少し違います。辞書には違いが書いていないとありましたが、僕の電子辞書には記述されていました。これは、本書が1973年発行で昔の本だからでしょう。それ以外にも、同じような表現だけれども属している文化が違うために、価値観の違いが目立つ例も挙げられていて興味深いです。

ことばの定義で、辞書を引くと堂々巡りに陥ってしまうことが書かれています。やはりあの循環は説明になってないよね。

また、「お姉さん」という呼びかけはあるのに、なぜ「妹」と呼びかけることはないのか。迷子の小さな子供に対して血縁者でもないのに、なぜ大人は「おじさん」「おばさん」と自分のことを呼ぶのか。日本語話者としては当然すぎて考えもしないような言い回しを、多言語と比較して考察しています。日本語は何かと年齢を気にする言語だよね。先輩、後輩、先生など。儒教圏では日本より年齢に厳格なので、もっと年齢や上下を示す単語が多いんでしょうね、きっと。

既に身をもって経験したこともあったので、新鮮だったとは言えません。しかし、異文化や日本語についての本を読んだことのない人には、とても有益です。古くても古さは感じないでしょう。




[ 2011/10/03 20:47 ] 言語 | TB(0) | CM(0)

2011年01月13日(木)

異文化理解 

異文化理解 (岩波新書)異文化理解 (岩波新書)
著者:青木 保
出版:岩波書店
発行:2001/07/19

評価〔C+〕 異文化対策の手引書
キーワード:異文化、外国、宗教、民族、グローバリゼーション、

文化的背景を異にする人々が出会い、結びつき、協同する社会がますます拡大し、人々が急激に国境や地域を超えて移動する現在、かつてなく人々は互いに深く理解し合わなければならなくなっています。(はじめにより抜粋)


交通網の発達やインターネットの普及によって、外国人、異なる文化の人々と接する機会が増えてきています。大都会でなくても、他国の人を見かけることは珍しくなくなりました。そんな自分とは違った文化で生まれ育った人たちと上手く付き合っていくにはどうしたら良いか?を考える本です。

文化はある社会の生活様式・習慣と行動規範であると認識していたのですが、本書で「価値である」と記述してあるところがあってなるほどと感じました。価値、つまり文化とは価値観のこと。その価値観には宗教や慣わしなど非合理なものも含まれるのが、異文化理解を困難にしているのだと思います。宗教に限らず、文化理解の鍵は「何をどのように信じているか」なのではと考えています。

理解不足による失敗例や著者の異文化体験など、違いを示す事例が挙げられていて読みやすいです。社会的に空白の時間である「境界の時間」、文化におけるコミュニケーションの3段階、どの文化にも属さない「ディアスポラ」は分かりやすくて面白かったです。宗教のタブー、しぐさの意味の違い、ステレオタイプによる偏見などは、異文化交流の際の準備として有用でしょう。しかし、全体的に異文化に接したことのない人向けに書かれた印象を受け、実際に多少なりとも接した経験のある人には少々物足りない気がしました。宗教の話に偏っている感じでしたし。具体例をもう少し挙げて、様々な価値観について書いて欲しかったですね。前半がちょっと退屈でした。

現代の殆どの文化は他文化と影響しあう混成文化なので、自文化を知ることも異文化理解に通じますし、文化交流によって自文化を再発見することもあります。そんな異文化交流の前の心構えとして読むと、良いのではないでしょうか。





[ 2011/01/13 21:44 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2010年12月16日(木)

書店繁盛記(ポプラ文庫) 

書店繁盛記 (ポプラ文庫)書店繁盛記 (ポプラ文庫)
著者:田口 久美子
出版:ポプラ社
発行:2010/04/05

評価〔B〕 本屋の裏側を紹介
キーワード:本屋、書店員、東京、ジュンク堂、リブロ、

変わったのはオンライン書店という販売形態だけではない、書店員の意識も、仕事自体も、さまざまに変化している。(はじめにより抜粋)


ジュンク堂新宿店の書店員による書店にまるわるあれこれのエッセイです。普段身近にある本屋さんですが、その裏側がどのようになっているのか知りません。そんな裏側をベテラン店員が赤裸々に綴っています。以前、某書店のアルバイトに申し込んで落ちた身としては、興味深い1冊。本書は、2006年に出版された本を2010年に文庫化したものです。

働いている人々の現場を知って欲しいと書かれているだけあって、普段店員が何をしているのか、どんなことで苦労しているのかが分かります。売るための「棚作り」や出版社・取次との関係は、業界ならではなので興味深いです。商品である本の配置も試行錯誤の結果であり、どの書店も似たような配置になるのは訳があったんですね。また、オンライン書店にも触れています。リアル売場の本の売上高上位3店は意外でした。なるほどねえ。

文中に出てくる本の補足説明が、著者のみならず出版社と出版日も書かれていて、実に書店員らしくて良いです。職業病なのか、マニアックなのか。第四章の「書店員になった理由」では、他の棚担当の同僚たちの意見もあってなかなか読み応えがあります。店員としての自負・こだわりが見えます。

職場の裏側について話しているせいか、少々愚痴っぽいところが残念というか気になりました。僕も愚痴っぽいので気持ちは分かりますが、不満よりも意欲を強く押し出してくれればもっと良かったのになあ。客注の件は、買う側としても売る側としても早く改善されると良いですね。

再販制度、オンライン書店、電子書籍と、書店の現場は刻一刻と変化しています。今後どうなるかは分かりませんが、リアル書店も好きな僕としては残っていて欲しいです。数年後に、また誰かが同じようなエッセイを書いてくれないかな。





[ 2010/12/16 22:16 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2009年05月08日(金)

日本人の知らない日本語 

日本人の知らない日本語日本人の知らない日本語
著者:蛇蔵&海野凪子
出版:メディアファクトリー
発行:2009/02/18

評価〔B〕 文化の違いを感じます
キーワード:コミックエッセイ、言語、日本語、国際

そんな日本語学校のカオスな日常をお楽しみ頂ければ幸いです。(本文より抜粋)


日本で外国人に日本語を教えている方のコミックエッセイです。あまりピンとこない人もいるかもしれませんが、考えてみれば日本にも語学学校あるのは自然なことですよね。でも、接点がなければそういう所があることを想像すらしないと思います。僕は外国で現地の語学学校に行った経験があるので、そのときのことを思い出しながら読みました。

母国語を使っている時は何の疑問も抱かないことを、外国人の生徒達が次々に質問してくるさまは面白くもあり、勉強させられます。例えば物の数え方。ひとつ、ふたつの他に、一個・一枚・一本などたくさんの言い方がありますが、手袋の数え方なんて知らないよねえ。また、なぜ旧仮名遣いはなくなったのか?(仮名の変遷)や、なぜ漢字に沢山の読み方があるのか?(漢字導入時の逸話)は、日本人でも知っている人は少なそうで興味深いです。

著者が本の中でも言っているように、言葉を学ぶことは文化を学ぶことです。『美しさは罪』『お見舞いのルール』は、それぞれの考え方の違いがでています。このような大人なのに外国では子供のような間違いをしてしまうのは、自分の経験と照らし合わせても納得です。この本は生徒達が主役ですが、彼・彼女たちを通して母国・母国語を再認識できるのも良いですね。

今まではあまり見かけなかったコミックエッセイという新しい本の形も、だんだん定着してきました。結構興味深い本が多いのはいいのですが、前々から思っていたのですが少々高いなぁ……他の漫画と同じくらいならいいのに、と思うのは贅沢でしょうか。



[ 2009/05/08 22:21 ] 言語 | TB(0) | CM(0)