2015年08月23日(日)

日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る 



著者:マイク・モラスキー
発売日: 2014/3/18

評価〔C+〕 呑み歩きが好きな人には良書。
キーワード:居酒屋、赤提灯、立ち呑み屋、大衆酒場、第三の場、

見逃せないのは、この軽いやり取りを通して、久々に入ってきた客は店主やほかの客たちに大切にされていることを再認識する、という大事な作用が潜んでいる点である。(第一章より抜粋)


外でお酒を呑む習慣がないので居酒屋もほとんど行かないのですが、あの独特の雰囲気にひかれる人は多いと思います。外国の方々にも結構評判が良いと聞いたことがあります。居酒屋の魅力とは何なのか? 居酒屋通いを続ける著者が居酒屋の素晴らしさを紹介しています。

居酒屋をストレス解消だけではなく、友人知人に会うことで自己確認が叶えられる「第三の場」であると述べています。確かに常連客はサークルや同好会のような楽しさや居心地の良さを感じているのだと思います。来ることを強要されず、社会や家庭から離れて楽しい時間を過ごせるのが利点です。ただ単に食事をするだけなら居酒屋でなくとも言い訳ですから。

店の注目すべき点や穴場の探し方は実用的で興味深いです。このあたりは著者の経験が活きています。また、前半の居酒屋の分類と全国各地の実在する店の紹介は、呑み歩きが趣味の人にとっては非常に有益です。しかし、味や価格ではなく雰囲気や趣を考慮して紹介していますが、あまり居酒屋ガイド本と変わらない印象を受けました。実際に呑み歩きの趣味がないからでしょうか。

題名に居酒屋文化とあるので、もう少し魅力の原因や秘密について考察してほしかったです。魅力を探るよりも、居酒屋が好き過ぎて魅力を伝えることに力が入ってしまった感がありました。




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[ 2015/08/23 09:59 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2015年07月13日(月)

イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか 



著者:宮田 律
発売日: 2013/9/14

評価〔B〕 日本とアラブ、イスラムの関係を考える。
キーワード:イスラム、アラブ、イスラム教、外交、対日感情、

イスラムの人々が日本人を評価するのは、彼らが理想とするような心意気や感情を日本人が備えていると見ているからである。(第1章より抜粋)


ネットで中東のテレビ番組が日本のことを褒めている知り、視聴したことがあります。確か公園でゴミを落とした人が、自分のゴミを拾って持ち帰る場面を見て、素晴らしいと賞賛していましたと記憶しています。本書の題名を見て、ちょうどそのことを思い出しました。ちなみに、この番組のことは第1章に書かれていました。最近外国を紹介する番組が多いですが、日本人にとってイスラム、アラブ世界はまだまだ未知の部分が多いと思います。彼らの対日感情はどのようなものか、過去の日本との関係はどのようなものだったのか、を分かりやすく論じています。

序盤は日本を褒めてばかりでよくある日本礼賛の書かと思ったのですが、対日感情を歴史から考察し、具体的な宗教観や文化を紹介し、逆に日本の外交を論じたりと、予想より幅広く書かれていました。興味深かったのは、後半のイスラム教の細かい概念の説明です。イスラムの寛容性や「イスラムの家」「戦争の家」という価値観、ジハードの起源と意味などは具体的でかなり分かりやすいと感じました。

また、ページ数は少ないですが、中東各国の日本への要望・注文が書かれた章があったのが良かったと思います。経済的援助を望んでいるなど抽象的な単語ではなく、なるべく生の声を伝えようとしている姿勢が好感が持てます。そういえば、日本でも観光の分野では対応しはじめていて、イスラム教の戒律を守って作られるハラール料理を用意している場所が増えてきているそうです。ゆっくりでもいいから相互理解が進むと良いですね。



[ 2015/07/13 21:51 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2013年12月22日(日)

韓国が漢字を復活できない理由 

韓国が漢字を復活できない理由(祥伝社新書282)韓国が漢字を復活できない理由(祥伝社新書282)
著者:豊田 有恒
出版:祥伝社
発行:2012/07/01

評価〔B+〕 利便性と自尊心のどちらが勝るのか。
キーワード:言語、漢字、民族、文化、国家主義

韓国も、もともとは、漢字国だった。日本以上に漢字を多用していた。(まえがきより抜粋)


外国で知り合った韓国人と中華街に食べに行った時、その人は漢字がまったく読めないと言いました。彼は1980年生まれくらいだと思いますが、簡単で有名そうな「中華」ですら知りませんでした。かつては韓国では、漢字は貴族や知識人の言葉だったとききます。なぜ韓国は漢字を学ばなくなったのか、どうして漢字の使用を止めつつあるのか。歴史・文化・国家主義の面から分析しています。

漢字の論争は、実用性よりも民族としての意識・プライドが重要であることが分かります。第2次世界大戦後の韓国の言語政策を追っていくと、効率や研究のためではなく自己主張や気分が前へ前へと出ていて、日常の一部となった漢字を執拗に隠したり追放しなくてもよいのでは?と感じました。占領期より前のことはあまり騒がれず、占領期の場合は熱がこもるのは、やはり儒教の影響でしょうか。「竹島の帰属の論拠と、著者が死ぬかどうかは」のくだりは悪いけど苦笑してしまいました。

ハングルがいかに有用有能であるかを説いても、個人的には言語に優劣はそれほどないと思います。どの言語も発音しづらいものもあれば語彙が乏しい分野があると思うからです。

また、韓国の漢字政策とは直接関係ありませんが、日本語と韓国語の関係や仮名混じり表記の利点について述べられているのもなかなか興味深いです。大和言葉に関する記述は、ほとんど知らなくて新鮮でした。

著者は言語学者ではありませんが、韓国の知識と韓国との交流は豊富なので説得力があります。韓国を理解する、または言語の歴史を理解する一助になる本でした。




[ 2013/12/22 10:53 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2013年11月09日(土)

女ことばと日本語 

女ことばと日本語 (岩波新書)女ことばと日本語 (岩波新書)
著者:中村 桃子
出版:岩波書店
発行:2012/08/22

評価〔B〕 言葉と社会の関係を探求します。
キーワード:日本語、女ことば、社会、政治、

当時の女子学生はさまざまな言葉を使っており、その中には書生言葉も、「てよだわ」言葉も、英語も漢語もありました。(本文より抜粋)


現代では女性らしい言葉使い、すなわち女ことばは当たりまえのように存在していますが、これらはいつからあったのでしょうか。日本語が話し始めた頃なのか、それともある時期を境に増え始めたのか、その歴史を知っている人はほとんどいないと思います。よくある言葉づかいやマナー本のように具体的な使用法ではなく、その存在理由と意義について考察していきます。

女ことばの成り立ちがいかに社会の影響を受けているのかが分かります。日本社会が女性に求めてきたものやその時代の政府に都合の良いものが、女ことばに色濃く反映されていて少々意外でした。方言に近いのかなと思っていたので。今からは想像しがたい男女の区別もしくは差別があったのが分かります。

また、男ことばとは何なのかと逆から考えてみると、色々見えてきて面白いです。明治政府の標準語を定めるに当たって、どの話し言葉を採用するかを決める逸話が興味深いです。そのあとに続く、てよだわ言葉から女学生ことばへの変遷も重要でなるほどと思ってしまいました。

当時の資料を挙げ説明してあるのでためになるのですが、社会だけでなく政治や思想も絡んできて、予想していたよりもずっと深く重いテーマなのだなと感じました。読んでいるとまだ資料が十分でないところもありそうで、今後の研究によりさらなる発見が期待できそうです。







[ 2013/11/09 18:13 ] 言語 | TB(0) | CM(0)

2011年10月03日(月)

ことばと文化 

ことばと文化 (岩波新書)ことばと文化 (岩波新書)
著者:鈴木 孝夫
出版:岩波書店
発行:1973/05/21

評価〔B+〕 言語の違いの面白さを知る
キーワード:言語、文化、

私は英語を学び出してから、もう三十年以上になる。米国やカナダにも何年か滞在したこともある。それなのに英語の lip が、このように日本語の「くちびる」とは違っていることに気付いたのは、なんと二、三年前のことでしかない。(P43より抜粋)


国際化が進むにつれ役に立つ言語とそうでないものの差が出てきて、どんどん言語の総数は減っていますが、それでも世界には数多くの言語が存在しています。日本語をそうした他の言語と比較することにより、日本の文化の特色と明らかにし、また言語と価値観・習慣の関係も分かりやすく説明していく、文字通りことばと文化の入門書です。

言語学の本ですが全体的に分かりやすく、やや専門的かなと感じたのは6章くらいです。外国語と母国語の違いを、著者の日常の体験から解説しています。上記の引用のように、lip と唇はまったく同じものを指していると思い込みがちですが、実は少し違います。辞書には違いが書いていないとありましたが、僕の電子辞書には記述されていました。これは、本書が1973年発行で昔の本だからでしょう。それ以外にも、同じような表現だけれども属している文化が違うために、価値観の違いが目立つ例も挙げられていて興味深いです。

ことばの定義で、辞書を引くと堂々巡りに陥ってしまうことが書かれています。やはりあの循環は説明になってないよね。

また、「お姉さん」という呼びかけはあるのに、なぜ「妹」と呼びかけることはないのか。迷子の小さな子供に対して血縁者でもないのに、なぜ大人は「おじさん」「おばさん」と自分のことを呼ぶのか。日本語話者としては当然すぎて考えもしないような言い回しを、多言語と比較して考察しています。日本語は何かと年齢を気にする言語だよね。先輩、後輩、先生など。儒教圏では日本より年齢に厳格なので、もっと年齢や上下を示す単語が多いんでしょうね、きっと。

既に身をもって経験したこともあったので、新鮮だったとは言えません。しかし、異文化や日本語についての本を読んだことのない人には、とても有益です。古くても古さは感じないでしょう。




[ 2011/10/03 20:47 ] 言語 | TB(0) | CM(0)