2016年07月18日(月)

その数学が戦略を決める 



著者:イアン エアーズ (著), Ian Ayres (原著), 山形 浩生 (翻訳)
発売日: 2010/6/10

評価〔A+〕 人工知能とは違う近未来の力。
キーワード:絶対計算、経済、近未来、統計、回帰分析、無作為抽出、

われわれはいま、馬と蒸気機関の競走のような歴史的瞬間にいる。直感や経験に基づく専門技能がデータ分析に次々に負けているのだ。(序章より抜粋)


映画の売れる脚本や裁判の判決をコンピュータが予測すると聞いたら、そんなのまだ早いと思うのが当然だと思います。しかし、前者は既にハリウッドで動き出していますし、後者は良い結果を出しています。データを集めて商売や危機管理に役立てているのは知っていましたが、創造性や複雑な判断にまでデータ分析が及んでいて、驚くとともに感心してしまいました。

本書では、それらの大量の情報を収集・解析するデータマイニングと、それを行う絶対計算者たちについて、専門家が具体例を交えて説明しています。ちなみに、英語の題名はこのデータ分析で決めたそうです。

計算による予測として回帰分析と無作為抽出の2大理論が、要点のみ分かりやすく書かれています。どちらも知っていたので、すんなり頭に入ってきましたが、数学に疎い方でも大丈夫だと思います。上記のように、様々な分野での実証例が挙げられていますので、それらも理解の助けになります。アメリカでの最先端の研究と、それを適用したビジネスの例が豊富なのが魅力です。

印象深いのは、専門家と絶対計算の比較の章です。人間は自分の予想に自信過剰である、複雑なものの重要要因を見極めるのが得意ではないとあり、おおむね賛成です。公平に偏見なく感情的にならずに物事を判断するのは、かなり難しいと思います。経験も時には邪魔になりますし。計算式によって導かれた確率は、それらには影響されずにすむのが強みです。皆、自分の分野ではデータ分析より人間のほうが勝っていると信じていますが、そうでないことを知ることができます。

全体的に分かりやすく書かれているとはいえ、興味のない話や込み入った話もありました。400ページ近いので、もう少し短くても良かったかもしれません。それと、理論の説明でもほとんど図や表がなかったと思うので、もう少し視覚的に分かりやすい説明が欲しかったです。入門書ならなおさら。

各章の最後にまとめがあるので、読み返す時に便利です。この感想文も、まとめを見て思い出しながら書いています。今後も、データ分析が社会に影響を与える機会はどんどん増えていき、避けられない流れだと断言しています。どのように利用すればよいのか知るためにも、一読するのもよいのではないでしょうか。



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[ 2016/07/18 21:22 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2012年05月02日(水)

ゲーデルの哲学 

ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)
著者:高橋 昌一郎
出版:講談社
発行:1999/08/20

評価〔B+〕 それでもやはり難しいです
キーワード:論理学、不完全性定理、哲学、伝記

ゲーデルは、不完全性定理によって人間理性の限界を明らかにしながら、人間理性そのものを疑うことはなく、世界は合理的に進歩すると信じていた。(はじめにより抜粋)


アリストテレス以来の最大の論理学者、もしくはそれ以上の逸材と評され、二十四歳の若さで不完全性定理を証明したクルト・ゲーデル。彼の残した証明や論理を解説すると同時に、あまり知られていない彼の人間性や哲学を明らかにします。半分は初心者向けの説明、半分はゲーデルの人生を振り返る伝記のような感じです。同著者の『理性の限界』を読んで興味を持ちました。

不完全性定理をパズルやアナロジー(比喩的表現)を使って分かりやすく説明していて、まったく馴染みのない方でも大まかなイメージはつかめるようになっていますが、やはり元の理論が難解なだけに完全に理解するのは難しいと思います。また、『理性の限界』にある記述もあるので、個人的にはそれほど新鮮味はありませんでした。

神の存在論は、相変わらず禅問答のようで分かったような分からないような気分になりました。ただ、それらの証明は唯一神を対象としているみたいで、そのあたりはキリスト教(または一神教)の影響かなーと思ったりもします。それ以外にも人間機械論やランダム性について書かれています。ランダム性はようやく少し分かった、ような気がします。

中盤の伝記では、論理を重視し内気で頑固だったゲーデルの内面を垣間見ることができます。仲の良かったアインシュタインと散歩をするのが好きだったと書かれています。二人の天才はどのような会話をしたのか興味がわきます。意外と普通の世間話だったのでしょうか。それに、アインシュタインもそうですが周囲が有名な人ばかりなのが凄いですね。現代コンピュータの基礎を作ったフォン・ノイマン、言語哲学のウィトゲンシュタイン、現代数学の父・ダフィット・ヒルベルト……。特にノイマンは、「二十世紀最高の知性」と呼ばれるたびに、それは自分ではなくゲーデルだと返答していたことから、ゲーデルがいかに桁外れの才能を持っていたかが分かります。

不完全性定理も神の存在論も難解で、特に後者のゲーデルの存在論的証明はイメージをつかむことすら困難です。初心者にも分かるようにとありますが、本当に予備知識0の人が読んでも理解できるのでしょうか……。理解は本当に大まかな部分だけにとどめ、ゲーデルの伝記を読んでいると割り切れば良い本だと思います。




[ 2012/05/02 23:14 ] 心理・哲学 | TB(1) | CM(0)

2011年07月15日(金)

改訂新版 暗号の数理 

改訂新版 暗号の数理 (ブルーバックス)改訂新版 暗号の数理 (ブルーバックス)
著者:一松 信
出版:講談社
発行:2005/09/10

評価〔C〕 はっきり言って難解。
キーワード:暗号、数学、素因数分解、

鍵を公開したら暗号にならないではないか? まさにその点にこそ、この天才的な着想の秘密がある。(第4章より抜粋)


かつて暗号は軍隊やスパイのものでしたが、現代では情報セキュリティーにおいて必要不可欠となりました。経済活動やプライバシー保護のために使用される技術とは、いったいどのようなものなのか。暗号や秘密文書の仕組みや歴史から、もはや常識となった公開鍵暗号まで解説してくれます。本書は1980年の初版に加筆した改訂版です。

混同しやすい隠語との違いや、第二次大戦で使われたエニグマ暗号などの歴史が良かったです。いかに他者に読まれないように、いかに受信者に復号しやすいように暗号化するか、その試行錯誤が面白いです。また、6章の量子秘密通信はまるでSFのようで、本当にこのようなことが将来可能になるのかと驚きました。

一方、タイトルとなっている数理の部分ですが、ネットやICカードで広く利用されているRSA暗号について説明されているのですが、これがかなり難しかった……。初等整数論の基礎的な知識から始める、とありますが、数学が得意または好きでないと挫折します。法とする代数と体(たい)までは大丈夫でしたが、その後は理解があやしいです。いくら数理を扱っているとは言っても、ブルーバックスなのだから一般の読者が理解できなくては意味がないのでは、と思ってしまいました。数学ガールのように、もっと噛み砕いてくれれば良いのにねえ。

後半は、専門家には常識で一般の方には難解と、どっちつかずな内容なのが惜しいです。でも、それ以外の部分、暗号の種類や過去の実例は興味深いので、割り切って読むのも良いのではないでしょうか。




[ 2011/07/15 21:45 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2011年05月11日(水)

運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 

運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))
著者:ジェフリー S.ローゼンタール
出版:早川書房
発行:2010/07/10

評価〔B+〕 実学としての数学
キーワード:数学、確率・統計、ランダム、

これらのシナリオは多岐にわたるけれど、一つだけ共通点がある。どの場合にも、確率やランダム性、不確実性の法則を知ることによって、より良い決断をし、自分を取り巻く世界をもっと鮮明に理解できるようになるのだ。(第1章より抜粋)


カジノのギャンブル、例えばルーレットやブラックジャックは勝つ確率は五分五分のように見えます。どのようにしてカジノは安定して利益をあげているのでしょうか? また、政治家や製薬会社が説明のために挙げる統計データは、どのくらい信用できるものなのでしょうか? こうした日常で直面する確率・統計の問題を、難しい数式を極力使わずに説明しています。数学は実学とは程遠いイメージを持っている人もいますが、身近なちょっとしたことを例にあげて、確率を利用することにより状況を良くする術が多く語られています。

上記のギャンブルや統計データの他に、事故にあう確率や世論調査、不幸の手紙、スパムメール。既読の「社会調査のウソ」と似ていますが、こちらは広範囲で知っていたほうが役に立つことを教えてくれます。どの章の例も、知ってて良かった確率・統計!みたいな感じでちょっと笑ってしまいました。

「公表の誤り」は、正当に見える調査でも特定の意図を反映させることができるのが示されていて、興味深いですね。また、量子力学を用いた乱数生産法には驚かされました。物理を数学に使うとは凄いですね。14章の「モンティ・ホール問題」は知っていましたがやはり面白いです。直観で判断する危険性を説いています。

著者は数学者なのですが、統計学者でも滅多に起こらない事故を心配したり、滅多にかからない病気に脅えたりします。専門家といえど自分のこととなると冷静さを欠いてしまう姿は、親近感が持てるのではないでしょうか。そんな著者が一般の人向けに書いた本書は、確率・統計の良い入門書となるでしょう。「社会調査のウソ」と合わせて読むと、より効果的だと思います。





[ 2011/05/11 22:26 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2011年04月10日(日)

数学女子1 

数学女子 1 (バンブー・コミックス)数学女子 1 (バンブー・コミックス)
著者:安田 まさえ
出版:竹書房
発行:2010/09/07

評価〔B-〕 数学専攻の学生生活とは。
キーワード:数学科、女性、大学、

「私は美しくなくていい。私の証明さえ美しければ・・・!!」(本文より抜粋)


数学科の女の子たちが活躍したりしなかったりする日常系4コマです。数学科と言えば、一般的に変わり者の集まりと称されていますが、実際はどうなのでしょうか。世間離れした世界なのか?意外と普通なのか? その答えのひとつがこの漫画に描かれています。

冒頭から書かれているように、数学科は女性比率が低いようです。本書では80人中4人でちょうど5%。まあ数学科に限らず理工系は女性が少ないよね。少ないながらたくましく学生生活を送っていて、だいたい本書のような感じだと思います。化粧について疎か……シンプルになるのは分るような気がします。

中心人物の内山まなは、数学女子というより算数女子という言葉が似合う人物。彼女の「大学純数学は難しすぎます!サギです!!」に共感する人も多いのでは。いや、本当に難しいよ。しかし、専門用語が分らなくても楽しめると思います。たいてい枠外に注釈が書かれていますし。そんな彼女がなんで数学が好きかと問われて、答えたまっすぐな意見は良いですね。輝いています。余談ではありますが、まなの服装はどうも幼稚園の子が着ている服(運動着?)に見えて仕方ないです。脚まで描かれないことが多いので特に。なので、すごく幼く見えます。

文系の方には新鮮に感じられると思います。もう少しもう一押し何か欲しい気もしますが、それはそれとして、お茶でも飲みながら気軽に読める4コマです。




[ 2011/04/10 10:45 ] 4コマ漫画 | TB(0) | CM(0)