2016年03月16日(水)

反省させると犯罪者になります  



著者:岡本 茂樹
発売日: 2013/5/17

評価〔A〕 自発的に省みるのが大切です。
キーワード:反省、反省文、問題行動、犯罪、しつけ、刑務所、

反省文は、ある意味、「お手軽」な方法であるとともに、「りっぱな反省文」を読めば誰でも納得するからです。しかし、それでは問題を悪い形で先送りさせているだけです。(第2章より抜粋)


悪いことをしたら反省するのは当たり前、それが犯罪ならただちに反省すべき、そう思っている方は多いと思います。そんな常識的ともいえる考えに一石を投じたのが本書です。刑務所で受刑者の更生支援を行っている著者が、反省文の効果を考察し、新しい厚生の方法を提示します。

受刑者との面接や自身の失敗談から、問題が起きた直後に反省だけさせるのは良くないと力説しています。形だけの反省は確かに意味がありません。反省文が上手に書けていればしっかり反省しているとみなすのは、問題があります。反省していなくても文才がある人は上手く書けますし、反省していても表現力や語彙力がない人は反省していないと見える可能性があります。反省文やその場の態度のみで良しとせず、何が根本的な原因となっているのか明らかにしていくことが重要だと説いています。

まず厚生の第一歩として、加害者の言い分を聞くとあります。否定的感情をあらわにすることで問題点が浮かんできて、本当の意味での反省へ繋がるとも書かれていて、実践するのは難しそうですが納得できるやり方です。学校や厚生施設でも取り入れてほしい手法ですね。

子供の厳し過ぎるしつけは、反省文と同じように害になると説いています。我慢や自立を強く求めすぎず、子供は子どもらしさを大切にする、人とつながることの重要とあります。孤立が問題行動の原因になっていることが多いようなので、こうしたことも上記のこと同様、親である人々には知っておいてもらいたいことだと感じました。



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[ 2016/03/16 21:46 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2016年01月03日(日)

0歳児がことばを獲得するとき―行動学からのアプローチ 



著者:正高 信男
発売日: 1993/06

評価〔A-〕 行動学って観察が大変そうです。
キーワード:新生児、ことば、声がわり、クーイング、母親語、

赤ちゃんは高さのより高い音によって、より強く注意を喚起されるのだと考えられる。これはヒトの乳児に、生まれながらに備わっている感覚器官としての聴覚の性質であるらしい。(第五章より抜粋)


生まれたばかりの新生児がどのようにして言葉を習得していくのかを、行動学の視点から研究・考察した本です。外国語を習得する過程などは研究成果がある程度でているようですが、言葉を知らない赤ちゃんがいかにして言葉を理解していくのか、その初期段階に注目した珍しい新書だと感じました。

周囲の大人やテレビの音などを真似しているうちに喋れるようになる、とボンヤリ思っていたのですが、実は様々な段階を経て成長しているのが分かります。授乳のタイミングやおうむ返しなども目を引きますが、特に印象に残ったのは文脈のメロディーについてです。話している内容よりも、相手が何を伝えたいのか感情表現を重要視して意思疎通をしているのが興味深いです。外国人と話していてまったく理解できなくても、困っているか感謝しているかくらいは分かるのと似ていると思いました。内容よりも伝える意欲や意思が大切です。

また、新生児ののどの形態を声がわりと結び付け、行動学だけでなく生物学・解剖学の見地からも考察をしていて面白いです。声を出しながら物を食べることができる動物がいることは知っていましたが、新生児もそれに似たのどを持つとは驚きです。それと、言語獲得の過程が日本人・日本語だけの特性かどうか確認するために、外国の研究者と共同実験をしているのも良いですね。

あくまで0歳児の話なので、言葉をきちんと理解し発音するところまではたどり着きませんけど、初期段階の学習の仕方が分かってきただけでも凄いと思います。相手に質問できず回答も得られないのに、ここまで分かったのですから。結構かたい内容ですが、親になる大人には役立つかもしれません。




[ 2016/01/03 21:00 ] 言語 | TB(0) | CM(0)

2015年12月10日(木)

日本人のしつけは衰退したか 



著者:広田 照幸 (著)
発売日: 1999/4/15

評価〔A-〕 昔と比べてどうなのでしょうか?
キーワード:教育、しつけ、家庭、学校、戦前、戦後、

回答者たちは、自由回答の部分ではみんな口をそろえたように、しつけは家庭以外の担い手によってなされた、あるいは、家庭では特にしつけはなかったと答えているのである。(本文より抜粋)


子どもや若者の犯罪や社会問題が話題になると、しばしば『最近の親は子どものしつけがなっていない』という批判をよく目にします。現状はひとまず置いておくとして、それでは昔は教育やしつけがきちんとなされていたのでしょうか。本書は戦前から現代までの教育の在り方について、アンケートや資料・統計から考察します。

昔はしつけが厳しく、子供は素直に聞いていたというイメージに反し、上記の引用のように、実際は家庭でのしつけは重視されていなかったのが意外でした。まだ全体的に貧しかった頃は、日々に暮らしに追われていて教育どころではなかったのは、ごく自然なことだったのだと思います。今でも貧しい国では、子供は勉強する者ではなく労働する者です。それが終戦を経て高度経済成長期に入り、農業の衰退と核家族化によって、次第に教育が重視されていくという流れは説得力があります。

童心・厳格・学歴の三つの教育方針の話が興味深かったです。子どもらしさなんて最近の教育論かと思っていましたが、思いのほか昔から言われていて驚きました。意外と教育やしつけする側の心情は、それほど変わっていないのかもしれません。

しつけが地域社会から家族・両親へと、どんどん責任を押し付けられているように感じました。あまり厳しいと、親も子もストレスでまいってしまうので、何か対策が必要です。例えば、あとがきにある「完璧な親を目指さない」心がけは、親の一つの指針になるのではないでしょうか。

本書は99年出版で、既に15年以上経っていますが、世間やマスコミの認識はさほど変化していないように感じます。昔よりしつけがなっていないと。そう勘違いしている人や教育に携わる人に、現代の教育を考えるために読んでもらいたい本です。



[ 2015/12/10 21:07 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2014年03月25日(火)

欲ばり過ぎるニッポンの教育 

欲ばり過ぎるニッポンの教育 (講談社現代新書)欲ばり過ぎるニッポンの教育 (講談社現代新書)
著者:苅谷 剛彦、増田 ユリヤ 他
出版社:講談社
出版日:2006/11/17

評価〔B+〕 よかれと思ってやっても、ダメなときも。
キーワード:教育、日本、社会、

ポジティブリストがすでに長くなっている中にさらに英語を入れたら、必ずはみ出すものがあるのに、はみ出すものを何にするかという議論をしないまま、英語を入れたほうがいいという、そういう議論に仕方に、反対しているんです。(第二章より抜粋)


すこし前から小学校でダンスが必修になったようですが、その話を聞いた時、教える側は大変だなあと思いました。教育の多くの部分は、学校に押し付けてられているような気がしてなりません。勉強に限らず、健康、安全、礼儀などなど。本書では教育が専門の学者と記者が、日本の教育の問題点について意見を交わします。

新しいものを導入する時の時間・経費・質の問題や、代わりに失うものの重要さについて説かれていて興味深いです。例として総合学習の実情が書かれています。「言うは易し、行うは難し」です。親の計算通りの教育についても触れられていて、良いことが書いてあると思います。

近年、学習到達度調査で上位のフィンランドの教育も取り上げて、日本と何が同じで何が違うのかを議論しています。学校の教え方がどうこうというよりは、社会の価値観によって学校の領分が決まっているようで面白いです。社会の要望と言ってもいいかな。フィンランドの教育の厳しさと、日本の相対評価の良さも知ることができて良かったです。

題名が納得いく内容でした。個人も行政機関もこうした社会や現場の教師の実情も踏まえた上で、教育を考える必要があると感じました。




[ 2014/03/25 20:49 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2013年03月16日(土)

友だち幻想―人と人の“つながり”を考える 

友だち幻想―人と人の“つながり”を考える (ちくまプリマー新書)友だち幻想―人と人の“つながり”を考える (ちくまプリマー新書)
著者:菅野 仁
出版:筑摩書房
発行:2008/03

評価〔B〕 十代向けの人付き合い本。
キーワード:友達、社会学、心理学、人付き合い、

友だちが大切、でも友だちとの関係を重苦しく感じてしまう。そうした矛盾した意識をつい持ってしまうことはありませんか。(本文より抜粋)


結構刺激的な題名だと思います。副題につながりとあるように、身近な人とのつながりや親しさについて考える本です。十代の若者向けの本ですが、大人でも周囲の人との関係を再考する上で読んでみるのも良いかと。そのためか、文章も平易で分かりやすく書かれています。

みんな同じという同調圧力・同質性ではなく、みんな違って良いという並存性を強調しています。有名な歌詞「一年生になったら友達100人できるかな」を例に挙げていて興味深いです。確かに、誰とでも親密になれると信じすぎるのは良くないと思います。適度な距離の取りかたにも触れています。

ただ、ある程度年齢を重ねた人には、経験的に知っていることも多いように感じました。上には上がいる、人生の苦味うま味の話など。

十代で、友だちとの関係に悩んでいるなら、本書は有益かもしれません。しかし、すでに大人である自分には斬新さはありませんでした。改めて人付き合いを見直すには良いのではないでしょうか。



[ 2013/03/16 21:38 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)