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2020年03月14日(土)

直感はわりと正しい 内田樹の大市民講座 



著者:内田 樹
発売日: 2017/7/7

評価〔C〕 大きなテーマが多いです。
キーワード:エッセイ、教育、メディア、政治、国際、

おっしゃるとおり、煙草は体に悪い。だが、アルコールもジャンクフードも体に悪いことには変わりはないだろう。(第6講より抜粋)


雑誌に連載されていた900字のコラムを採録したエッセイです。題材は仕事論から政治論まで幅広く取りあげています。

あとがきにあるとおり、冒頭のテーマからは読者が予想しない終わり方をしないように捻って書かれているのが良いです。嫌いなものがはっきりしているので分かりやすいし一貫性があります。また、政治などでは近未来の予測を具体的に書いていて面白い試みだと思いました。自分に先見の明があるのか分かるし、その時の感情までよみがえってきそうで興味深いです。

このようなエッセイでは自分にない物の見方や考え方を少しだけ求めながら読むのですが、残念ながら共感や感心よりも異議や不賛成、もしくは違和感のほうが多かったです。それに、他のエッセイよりも違う気がするんだけどと思う回数が多かったです。読んでいてお金に苦労したころがなさそうと思ってしまいました。

異なる意見の人の言い分や価値観を知ることができたのは良かったです。



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[ 2020/03/14 21:57 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2017年08月24日(木)

「戦争学」概論 



著者:黒野 耐
発売日: 2005/9/17

評価〔A〕 世界の動きを勉強しよう。
キーワード:戦争、政治、歴史、

戦争は政治目的を達成する一つの手段であるから、政治目的が具体化された大戦略の基礎となっている地政学を抜きにして、戦争学を語ることができないのである。(第一講より抜粋)


少し前の話になりますが、領土問題で外国と緊張が高まった時、あるニュース番組で自衛隊の人が「一番戦争したくないのは軍人だよ」と言っていました。戦争をモニター越しにしか見たことのない一般人とは違って、現実的な意見だなと色々考えてしまったのを覚えています。そもそも戦争とは何なのか、熟知している人は少ないのではないでしょうか。戦術でも兵器でもなく、戦争そのものを学ぶ戦争学の入門書です。

クラウゼヴィッツの「戦争とは異なる手段をもってする政治の継続」から始まり、ランドパワー(陸上勢力)とシーパワー(海上勢力)などの地政学の説明をしています。地政学とは、国際関係を地理的概念をもとにして考えていく学問です。ネットでシーパワーがどうのこうのと書いている文章を稀に見ますが、このことだったのですね。中盤からはナポレオン台頭から現代まで、戦争はどのように変化していったかを考察ています。

歴史よりは現代の国際事情について深く考察してもらいたかったのですが、過去の事例もそれはそれで興味深いです。ナポレオンがなぜヨーロッパで勝ち続けられたのか、一次大戦後の英仏の失敗、ベトナム戦の勝敗を分けた理由が印象に残りました。ゲリラとテロの違いも理解しました。恥ずかしながら同じようなものだと思っていました。どの時代も軍事と政治が密接に結びついていることが分かります。

地政学以外の戦争の見方が書かれていませんし、現状を様々な面から分析してほしかったですが、戦争を一から学ぶには分かりやすかったです。おわりにの「戦争を推奨するために、戦争を学べと主張しているのではない。知らないことがもっとも危険であるといいたいのだ。」は、そのとおりだと思います。意見を述べる前によく勉強すべきですよね。また、国政を担う人々、特に外交に携わる人々には読んでおいてもらいたいです。




[ 2017/08/24 21:52 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2016年11月19日(土)

世論調査とは何だろうか 



著者:岩本 裕
発売日: 2015/5/21

評価〔B〕 調査するほうも苦労します。
キーワード:世論調査、統計、選挙、RDD調査、アンケート

世論調査は世論操作ではありません。そう思われかねないような質問は厳に避けるべきなのです。(本文より抜粋)


テレビや新聞でしばしば世論調査の結果が発表されているように感じます。質問は政党の支持率、仕事や結婚などの考え方など多岐にわたって行われ、国民の意見・意識を知ることができます。結果によっては政策を変えることもあります。大きな影響力を持つ世論調査はどのようにして始まったのか、なぜ少人数に尋ねるだけで全体の意思を知ることができるのかを、なるべく数式を排して説明しています。

調査の歴史を紐解くと、選挙や政治と密接に結びついていることが分かります。民主主義は民意に基づくものなので、当然と言えば当然かもしれません。また、調査方法は時代によって変遷していて、従来の固定電話に掛ける方法は回答率が落ちてきているのだそうです。主な理由は固定電話を持たない世帯の増加やプライバシーの意識の変化で、調査する人の苦労が分かる気がします。どの調査方法も長所短所があり興味深いです。

調査側の主張に騙されない世論調査の読み解き方も紹介しています。質問の仕方や選択肢の選び方、質問の順番によっても答えが変わる可能性があることを指摘しています。統計による誤差や有意差も解説があり、統計の嘘に丸めこまれないよう注意することが大切です。こうした調査の読解力を高めたい方には、「社会調査のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (著、谷岡 一郎)」がおススメです。

著者は、世論調査は民主主義社会に与えられた武器だと説いています。世論操作のために利用される危険もありますが、自分に調査が来た時は、なるべく協力しようという気持ちになりました。




[ 2016/11/19 21:26 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2012年05月16日(水)

ジュリアス・シーザー (新潮文庫) 

ジュリアス・シーザー (新潮文庫)ジュリアス・シーザー (新潮文庫)
著者:シェイクスピア
出版:新潮社
発行:1968/03

評価〔B-〕 シーザーは主役ではないと思います。
キーワード:戯曲、シェイクスピア、イギリス文学、

ハムレット「お前もか、ブルータス? それなら、死ね、シーザー!」(第三幕 第一場より抜粋)


上記の引用で有名なシェイクスピアの政治劇です。僕のように粗筋をまったく知らなくても、この台詞くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。細かいですが、読む前まで「ブルータス、お前もか」だと思っていました。逆だったんですね。

ブルータスはキャシアスから権力者シーザーの暗殺をもちかけらます。迷った末に、共謀者たちと共に計画を実行するブルータスたち。権力は彼らの手にすみやかに移行するかに見えたが……という展開です。題名がシーザーだから、彼が殺害されて終わりなのかと思ったら、まだ半分くらい残っていて驚きました。読み進めると分かりますが、ブルータスが主人公と言っていい内容です。

テーマは友情と政治です。こういった権力争いは、何百年たってもあまり変わりません。時を越えて教えてくれるのが古典の良いところです。暗殺後、ブルータスとシーザーの味方であるアントニーが、大衆に向かって語りかけるのですが、ここが一つの山場となっています。どうすれば民衆の支持を得ることができるかが、両者の演説を比較することで分かってくるのではないでしょうか。また、友情については、ブルータスの心の揺れが目立っていたと思います。キャシアスとの友情観の違いも興味深いです。

長くなく、話の展開も複雑ではないので、予想していたよりすんなり読めました。できれば、シーザーの性格や強大さが分かる場面や、演説以外の政治劇をもう少し見てみたかったです。次は何を読もうかな~。




[ 2012/05/16 21:35 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2011年11月11日(金)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) 

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
著者:伊藤 計劃
出版:早川書房
発行:2010/02/10

評価〔A-〕 質の高い近未来軍事SF
キーワード:SF、近未来、虐殺、管理社会、

この男が入った国は、どういうわけか混沌状態に転がり落ちる。この男が入った国では、どういうわけか無辜の命がものすごい数で奪われる。(第二部より抜粋)


近未来、先進国は何をするにしても生体認証が必要なほど高度な管理社会となったが、途上国では未だに内戦・紛争が続いている世界。米国情報軍所属のクラヴィス・シェパードは、ある人物を追う任務に就きます。その人物は、各地で起こる虐殺と関係しているようだけれど、詳細は不明となっています。謎の人物の目的は何なのでしょうか?……という近未来軍事SFです。

軍人であるクラヴィスを主人公にし、戦争やテロをテーマにしている一方で、彼の死に関する個人的な考えや心情をもう一つの軸としていますので、シーンによっては心理描写が多く、軍事小説っぽくなくて新鮮でした。クラヴィスの敏感な内面を見ていると、帯に「現代における罪と罰」とあるのも、分かるような気がしました。それに加えて話の中にでてくるちょっとした豆知識や、様々な登場人物たちの哲学的な会話も面白いです。

軍の装備や任務の様子、現金を見るのが非常に稀となった社会の描写は、どのくらい先になるかは分からないけれど、こんな未来になりそうだという雰囲気があって、説得力があります。現実感といっても良いかも。設定や舞台が細部まで凝っていて、とてもしっかりした小説です。内容が社会への問題提起となっている点も見逃せません。

ただ筋書きそのものは絶賛というほどでもありませんでした。軍事ものがあまり好きではなかったからでしょうか。構成や展開は斬新ではありませんでしたし、驚くような伏線もなかったと思います。エピローグは予想と違って、おぉっとなりましたけれど。物語の核となるあの器官の仕組みを、他の部分と同じくらい説明していれば、もっと良かったのになあ。

伊藤計劃という最後の字が何と読むのか分からない、そして凄く評判の良いSF作家がいたのは知っていたのですが、こうして作品を読んだのははじめてでした。しっかりしていて現実感のあるこの小説は、硬派なSFファンにうけるのも頷けます。しかし、軽く明るい夢のあるSFでは決してないので、その点はご注意を。夭逝したのが惜しまれます。著者の最後の長編「ハーモニー」の粗筋を見たら好みでしたので、読むのが楽しみです。




[ 2011/11/11 20:28 ] 小説 | TB(0) | CM(0)