2017年08月24日(木)

「戦争学」概論 



著者:黒野 耐
発売日: 2005/9/17

評価〔A〕 世界の動きを勉強しよう。
キーワード:戦争、政治、歴史、

戦争は政治目的を達成する一つの手段であるから、政治目的が具体化された大戦略の基礎となっている地政学を抜きにして、戦争学を語ることができないのである。(第一講より抜粋)


少し前の話になりますが、領土問題で外国と緊張が高まった時、あるニュース番組で自衛隊の人が「一番戦争したくないのは軍人だよ」と言っていました。戦争をモニター越しにしか見たことのない一般人とは違って、現実的な意見だなと色々考えてしまったのを覚えています。そもそも戦争とは何なのか、熟知している人は少ないのではないでしょうか。戦術でも兵器でもなく、戦争そのものを学ぶ戦争学の入門書です。

クラウゼヴィッツの「戦争とは異なる手段をもってする政治の継続」から始まり、ランドパワー(陸上勢力)とシーパワー(海上勢力)などの地政学の説明をしています。地政学とは、国際関係を地理的概念をもとにして考えていく学問です。ネットでシーパワーがどうのこうのと書いている文章を稀に見ますが、このことだったのですね。中盤からはナポレオン台頭から現代まで、戦争はどのように変化していったかを考察ています。

歴史よりは現代の国際事情について深く考察してもらいたかったのですが、過去の事例もそれはそれで興味深いです。ナポレオンがなぜヨーロッパで勝ち続けられたのか、一次大戦後の英仏の失敗、ベトナム戦の勝敗を分けた理由が印象に残りました。ゲリラとテロの違いも理解しました。恥ずかしながら同じようなものだと思っていました。どの時代も軍事と政治が密接に結びついていることが分かります。

地政学以外の戦争の見方が書かれていませんし、現状を様々な面から分析してほしかったですが、戦争を一から学ぶには分かりやすかったです。おわりにの「戦争を推奨するために、戦争を学べと主張しているのではない。知らないことがもっとも危険であるといいたいのだ。」は、そのとおりだと思います。意見を述べる前によく勉強すべきですよね。また、国政を担う人々、特に外交に携わる人々には読んでおいてもらいたいです。




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[ 2017/08/24 21:52 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2012年01月25日(水)

ビン ~孫子異伝~1 

ビン ~孫子異伝~ 1 (ジャンプコミックスデラックス)ビン ~孫子異伝~ 1 (ジャンプコミックスデラックス)
著者:星野 浩字
出版:集英社
発行:2008/07/04

評価〔B〕 もう一人の孫子の物語
キーワード:古代、中国、戦国時代

「中原を平和にするんです。」(本文より抜粋)


兵法書で知られる古代中国の戦略家で有名な孫子ですが、歴史上にもう一人孫子がいたことをご存知でしょうか。兵法書の著者・孫武の時代から少し下って周の時代の後期、春秋時代の後の戦国時代に、彼の子孫である孫ビンと呼ばれる人物です。はじめこの漫画を読んで空想だと思っていたのですが、後でネットで調べてみたら実在していて大変驚きました。その孫ビン(孫臏、2文字目は月に賓。)が主人公の物語です。

顔には罪人の入れ墨であるゲイ、両膝の骨を抜くビンの2つの刑罰を受けながらも、孫ビンは己の理想の実現に向けて邁進する姿が魅力的です。現在の中国では賄賂が横行し、法や規則を守る意識が低いように見えます。しかし、彼は古代中国において権力に媚びることなく、また策だけでなく彼自身も危険を冒して戦いに参加するところが格好良いです。

異民族の狄や奴隷の存在は当時の社会を反映していて興味深いです。紀元前から確固たる社会を確立していた古代中国は凄いですね。さすがです。馨逢(シンフエン)の境遇はかなり辛く、そういう時代だったんだなと不憫でなりません。

さて、この作品、どこまでが史実でどこまでが創作なのか分からないのが難点です。序盤の「統率を見せよ」と命じられた孫武の話は本当のようですが。大筋は史実に沿っているとは思いますが、あまり気にせずエンターテインメントとして楽しめばいいのでしょうか。漫画の歴史ものを読むのはかなり久しぶりでしたが、結構良かったです。現代やSFも面白いですが、歴史にはまた違った良さがあって面白いと思います。




[ 2012/01/25 22:42 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2010年03月06日(土)

となり町戦争 

となり町戦争 (集英社文庫)となり町戦争 (集英社文庫)
著者:三崎 亜記
出版:集英社
発行:2006/12

評価〔D〕 いまいち盛り上がらない……
キーワード:戦争、現代、日常、

戦争は、「確実に始まっている」のだ。この戦争は、抽象的でもなく、概念的でもなく、まぎれもないこの日常の延長としての現実なのだ。(本文より抜粋)


主人公の北原修路は舞坂町に住むごく普通の会社員ですが、ある日、広報紙で舞坂町がとなり町と戦争することを知ります。となりの町と戦争する状況を一般人である北原の目を通して追う物語です。第17回小説すばる新人賞受賞作品。文庫本だけの別章あり。

国ではなく町として戦うので、町役場が主体となり戦争は進みます。役所が進めるので全て淡々としていて、軍隊とは程遠くどこかしら奇妙な感じです。恨みや確執から起きる戦争ではなく利益のための戦争であり、公共事業そのものです。また、実際戦う兵士や銃器を北原は目にする機会がなく、死者がでているにも関わらず戦時下である実感が持てません。

平和な国に住む人にとって戦争は普段は考えることのない非現実的なことです。しかし、公共事業のような戦争も、実感できないとはいえ戦争と無縁ではいられない主人公の立場も、現代人としては考えさせられます。設定や主題はとても良いと思います。

でも惜しいことに、読んでいて物語の起伏に乏しく面白くないんですよね。端的に言うとつまらなく感じました。主張したいテーマは分かるのですが、ある程度目を引くものがないと読んでいて退屈です。登場人物たちも半端な印象でしたし。というわけで残念ですが評価はDとなりました。





[ 2010/03/06 21:53 ] 小説 | TB(0) | CM(0)