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2018年09月27日(木)

なぜ男は女より早く死ぬのか 生物学から見た不思議な性の世界 



著者:若原 正己
発売日: 2013/12/17

評価〔B+〕 人間だけでなく様々な生物の性を紹介。
キーワード:性、有性生殖、雌雄同体、染色体、

男と女の区別ははっきりしているように見えますが、はたして、本当にその協会がはっきりしていると言ってよいのでしょうか。(第3章より抜粋)


流行りの脳科学ではなく、純粋に生物学の見地から性とは何かを追及していく本です。恋愛やジェンダーを軸に書かれた書籍は多いのですが、こうした基本に戻って生物学を中心にしたものは最近では珍しいかもしれません。Amazonの説明によると全国学校図書館協議会選定図書。

題名から人間の話が主題かと思っていたのですが、昆虫や魚、哺乳類と数多くの性を紹介しています。オス・メスを自由に産み分けられるミツバチ、温度によって性別が変わるサンショウウオ、集団の地位によって性転換するカクレクマノミと想像している以上に性は複雑で、かつあいまいなことが分かります。オス・メスで体の大きさが違う性的二型と夫婦関係も詳しく書かれていて良かったです。

人間は男の子のほうが多く生まれる理由も興味深いです。昔、男性のほうが早死にだから多く生まれると聞いたことがあるのですが、本書のY精子のほうが軽いから早く卵子に到達するという説明のほうがしっくりきました。

生物学の最先端であるiPS細胞も取り上げられています。iPS細胞は多少は知っていましたが、男も女も自分の細胞から卵子と精子を作り出し、1人の人間からクローンでない人間を生み出すことができるのは知りませんでした。どの細胞にも分化できるだけでなく、自家受精や同性同士の生殖も可能になるとは。衝撃的でした。これを知ることができただけでも読んでよかったです。



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[ 2018/09/27 21:19 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2018年06月17日(日)

最貧困女子 



著者:鈴木 大介
発売日: 2014/9/27

評価〔A-〕 想像していたより苛烈でした。
キーワード:貧困、女性、性産業、

家を飛び出したのは「本人の選択」として「もうちょっと我慢すれば」というような言葉を軽々しく吐く者は、同時に加害者と変わらないと僕は思っている。(第三章より抜粋)


解決するのが難しい貧困問題の中で、知られていない若い女性たちの現状を記したドキュメンタリーです。

数多くの生の声が記されていて、その暮らしぶりに驚かされます。ある程度は覚悟して読んだのですが凄惨で、著者が取材はもう限界だと嘆くのも分かる気がします。専門家でも弁護士でもないので客観的な数字がないのが残念ですが、当事者たちの言葉はそれ以上に説得力がありました。

本書に登場する彼女たちのように、苦境に立っている人たちを自己責任の一言で切り捨てる人をネットで見かけます。しかし、実態を知らないから厳しい態度を取ってしまう人が多いのだと思います。具体的に助けることはできないかもしれませんが、非難するだけで終わらないようにしたいです。

印象に残ったのは、どんな学童保育だったら良かったのか?です。厳しい管理が彼女たちの足を遠ざけていることは、注目すべき点だと感じました。管理と居心地の良さを両立するのは難しいですが、もっと利用してもらえるよう何らかの対策が取られることを望んでいます。



[ 2018/06/17 10:41 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2018年04月29日(日)

働く女子の運命は 



著者:濱口 桂一郎
発売日: 2015/12/18

評価〔B-〕 経緯が詳しく書かれています。
キーワード:男女雇用機会均等法、ジョブ型、メンバーシップ型、

人の処遇がジョブではなくコースで分かれる日本社会では、欧米のような「ジョブの平等」は意味がありません。そこで、日本の男女平等政策は、もっぱら女性も男性と同じコースに乗せてくださいね、という方向に向かいました。(序章より抜粋)


1900年代に男女雇用機会均等法ができて以来、少しずつ労働環境の法整備が進んでいますが、未だに女性が働きやすいとは言えないのが日本の現状です。どうして賃金に差がついているのか、なぜすぐに同一労働同一賃金に切り替えられないのか。戦前から日本の労働を振り返り、女性の労働はどのような歴史をたどってきたかを明らかにしています。

日本では仕事に対して対価が支払われるのではなく、組織に所属していることに対して報酬が支払われるメンバーシップ型社会であるのが原因であるとしいます。この説明は説得力があります。昔よりはよくなったもののライフワークバランスなど関係ないかのような残業の多さ、家庭の事情を考慮しない転勤制度は、組織への忠誠心を試されてると考えれば理解しやすくなります。女性の場合、それに加えて家庭での役割も問題となってきます。男性の家での時間が少ないせいか、まだまだ家庭は女性が守るものという意識が残っていて、彼女たちが仕事と家庭の板挟みになるのは無理もないです。

世界が男女均等へと進んでいく時、日本経済が順調でそうした問題を軽視したのも忘れてはいけません。当時の新卒の女性たちはこうした習慣を当然と思っていたのか、それとも社会で大きな活躍を望んでいたのか。生の意見もあったらもっと良かったです。

女性の労働史としては過不足なく書かれていると思いますが、現状や今後の対策の部分が少ないのが残念でした。解決策のほうに興味があって本書を手に取ったので、他国の成功例などを踏まえて未来の話をもっと書いてほしかったです。女性の労働問題の原因や経緯に興味のある方にはおすすめしますが、私のように対策を知りたい方にはおすすめできません。




[ 2018/04/29 18:40 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2018年01月11日(木)

性と法律 



著者:角田 由紀子
発売日: 2013/12/21

評価〔A-〕 少しずつ改善していこう。
キーワード:法律、男女差別、価値観、慣習、

職場で女性が働くときに性的なことにかかわって屈辱的な扱いを受けたり、それによって職を失なったりすることが珍しくなかったことは、この裁判の証拠とした実態調査結果報告書『女6500人の証言』でも明らかであった。(5セクシャル・ハラスメントより抜粋)


男女平等の世の中と言われていますが、人々の価値観や慣習はすぐには変わらず、なかなか差別をなくすまでは至っていません。例えば、男女で賃金や雇用形態が異なるのは徐々に改善してはいますが、昔から問題となっています。弁護士として40年以上働き、この問題に従事してきた著者が、得た女性の声や現状を説明しています。

結婚、ドメスティック・バイオレンスと章ごとに項目が分かれているので、読みやすいです。法律には疎いので、こうして整理して書いてくれると分かりやすくて助かります。戦前のことにも触れていますけど、現在進行形の問題もあります。予想していたよりも男女で差があることに驚きました。どの章からも著者の怒りが伝わってきました。印象深かったのは、「性暴力の暴行の程度を問うのはおかしい」「妻に強姦罪が適用しないのもおかしい」です。

また、法律の専門家でも、慣習的な価値観から抜け出せない人が数多くいることにも驚きました。家長は男性(夫)で、その権利と義務があると感じている人は現在でも多そうです。ところで、この女性差別の裏には、男性はこうあるべきと考えている場合も多いと思います。男は仕事をしてお金を稼ぐものだ、とか。仕事も家事も男女関係なく行うものなのですが、意識の面ではまだまだ昔の差別的な価値観が残り続けています。意識は当事者たちだけでなく社会全体の問題なので、自分も気をつけようと思います。

読んでいると著者の怒りは理解できますが、他の問題も複雑に入り組んでいる場合もあるので、簡単にはいかないなと思うこともいくつかありました。慰謝料を払わない元夫は、低賃金で払えないのかもしれませんし、DV対策に警察や国は配慮してくれないとありますが、人員と予算が足りていないのかもしれません。

男性は責められているように感じることもあるかと思いますが、男女どちらが読んでもためになる本です。




[ 2018/01/11 23:09 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年06月08日(木)

男はなぜこんなに苦しいのか 



著者:海原純子
発売日: 2016/1/13

評価〔B〕 分かりやすく言うと時代の流れ。
キーワード:心理、男性、ジェンダー、仕事

整形外科や消化器科で抗うつ剤を処方されながら心の病気を否定している男性は多いのだ。(第1章より抜粋)


この題名ですと、男ばかりが苦労しているとも取れますが、内容は男性ならではの悩みやストレスに注目し、どうすればより良い生き方ができるのかを考察しています。

男はこうあるべしという信念や、この方法で順調だったので今後もこれでと従来の方法や価値観にとらわれ、結果として心の病で苦しむ事例が数多く挙げられています。どちらも一昔前では常識だったかもしれませんが、現代社会では柔軟に対応したほうが上手くいくことが多いと感じました。昭和的な価値観が全て悪いわけではありません。

印象に強く残ったのは、3章コラムの「男性の多くは、話を聞くなど気持ちを分け合うことが大きな支援となることに気づかない」です。確かに直接支援にばかり意識が向くことが多いので、周囲の人が困ったり悩んでいたら、声をかける等の直接支援以外の支えも心がけていきたいです。

後半は、承認欲求や自己実現願望、結婚やメンタルケアなど男女に限らず重要なことが書かれています。これらは他の本を読んで知っていたので、新鮮味はありませんでしたが、大切さを再認識しました。自分を知る手法としてエゴグラムが挙げられていたので、あとで久しぶりに診断してみようと思います。


[ 2017/06/08 19:56 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)