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2020年03月21日(土)

家裁調査官は見た  ―家族のしがらみ― 



著者:村尾 泰弘
発売日: 2016/7/14

評価〔B〕 カウンセラー以外の側面も見たかった。
キーワード:家庭裁判所調査官、家族、臨床心理士、家族心理士

家族がうまく機能せず、まとわりついて足を引っ張る意味での「しがらみ」に姿を変えるときに見られるものに「家族神話」がある。まずこのことからお話ししていこう。(第4章より抜粋)


家裁調査官は家庭裁判所調査官の略称で、家庭裁判所のみにいる特殊国家公務員だそうです。裁判所の関係者はたいてい法律の専門家ですが、彼らは心理学、社会学、教育学などを修めた人に関する専門家です。その調査官を17年務めた著者が経験から学んだこと、特に家族のしがらみについてどのように対処していけばよいのかを書いています。

最初のうちは家裁調査官ならではの経験が語られますが、後半になってくるとカウンセラーや心理士と同じような仕事内容で、著者の仕事の独自性があまり見えなくなっていったのが残念です。もう少し家裁調査官とは何をして、カウンセラーとはどこが違うのか深く掘り下げてほしかったです。それとも働く場所が違うだけでほとんど同じ仕事なのでしょうか。

家族問題の内容そのものは夫婦の不和やDV、幼少期の恨みと考えさせられる事例が多かったです。死んだ家族の影響が残り苦しんでいる人がいることが多いのは驚きました。でもそういうものかもしれません。しがらみからのがれるための方法として、物語を書き換えるナラティブ・セラピーなどが紹介されています。ロールレタリング法は効果が得られるのかちょっと信じがたいですが、文字に書き起こすと冷静になったり心理状態に変化が起きるそうなのできっと効果があるのでしょう。不思議な治療法です。

馴染みのない職業の人の意見は興味深かったです。



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[ 2020/03/21 22:08 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2020年01月29日(水)

なぜ、わが子を棄てるのか―「赤ちゃんポスト」10年の真実 




著者:NHK取材班
発売日: 2018/5/8

評価〔B+〕 まずは妊婦の相談にのることから。
キーワード:赤ちゃんポスト、こうのとりのゆりかご、慈恵病院、追跡取材、

ポストに預けられたから命を助けてもらえて、今の生活があるので、やはりポストがあってよかったと思います。(序章より抜粋)


何か新しいことが始まるとメディアが注目し伝えてくれるのは良いのですが、その後どうなったかは中々知る機会がありません。新しい飲食店、新しいサービス、新しい生き方……続けることのほうが難しい場合は多々あります。本書では2007年に開設された赤ちゃんポストが10年間どのように運営され、利用されてきたか伝えるドキュメンタリーです。

利用者の利用理由がいくつか挙げられていますが、本当に誰にも助けてもらえない状況ではなく身勝手な理由が結構多くて戸惑いました。不倫で世間体が悪いから、親に迷惑がかかると思って一人でなんとかしようとして、など。また、男性が認めてくれないけれどどうしても生みたくなって生んだ女性の話がありましたが、少々わがままなように感じました。妊娠するとぜひ生みたいという心境になるのでしょうか。それでも育てられないなら中絶すべきではと思ってしまいました。

民間の病院が国内で唯一しかも24時間体制で運営していることや、国が支援に消極的なことに驚きました。前者は病院の人手不足から考えると難しいですし、後者は国として親が他人に託すことを積極的に勧めたくないのでしょう。0歳の養子縁組と考えれば、他の養子縁組と変わらないように見えるのですがどうなんだろう。国に資金がないのは分かりますけど何か良い解決策はないのかな。

実親が誰か知る権利などいくつかの問題はポストのモデル発祥の地・ドイツで新しい制度が導入されているので、日本でも徐々に試していければよいと思います。このような福祉がどんどん進むとなんだかSFの世界のようです。

上記の引用はポストに託された子どもの生の声です。問題点はあるけれどこうして命が助かったのをみると、これからも存続してほしいと願っています。



[ 2020/01/29 20:35 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年05月07日(日)

結婚と家族のこれから ~共働き社会の限界~ 



著者:筒井 淳也
発売日: 2016/6/16

評価〔A-〕 余裕を持って暮らしたい。
キーワード:結婚、家族、共働き、専業主婦、

家族をセイフティ・ネットとせざるをえないような社会とは、同時に家族がリスクになる社会でもあります。(本文より抜粋)


現代の日本の家族は晩婚化、未婚化、少子化と、数世代前とはまったく異なる特徴や問題を抱えています。このまま進むと家族は一体どう変化していくのでしょうか。本書では歴史や社会学の知見から、現代の家族について分析しています。

意外だったのは、古代では男性優位の社会ではなかったことです。個人よりも子孫を残すことが最も重要であり、家族ではなく村のような小さな共同体が構成員を守っていて、男女関係も厳格ではなくかなり自由だったみたいで興味深いです。歴史の流れで男性優位となり、専業主婦が誕生し、共働きへと変遷していく様子が分かりやすく説明されています。

家事や介護の問題は、他の本でも読んだのでそれほど衝撃的ではなかったのですが、共働きがもたらす格差は知らなかったので少々驚きました。恋愛や結婚を個人的な体験談ではなく、収入の面に注目して考察しているのがいかにも学者の本らしいです。同類婚や異類婚の概念はなんとなく分かっていましたが、きちんと専門用語があったんですね。家族・税・格差の関係が簡潔に示されているので、これから政治を志す人たちには知っていてもらいたいです。

著者の主張するように、家族に縛られることがない社会となるのか、それとも、今までにない新しい形となるのかまだ分かりません。しかし、過去や外国の現状を踏まえて、家族のありかたや問題を包括的に学べる良い本だと感じました。




[ 2017/05/07 17:37 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)