2017年02月18日(土)

もしも宇宙を旅したら 地球に無事帰還するための手引き 



著者:ニール・F・カミンズ (著), 三宅 真砂子 (翻訳)
発売日: 2008/4/19

評価〔B+〕 科学的検証が現実味をもたせています。
キーワード:宇宙旅行、太陽系、惑星、無重力、

宇宙へ行くと、半数以上の人が微小重力状態に入って数日の間に、宇宙適応症候群、あるいは宇宙酔いと呼ばれるものを経験する。(第5部 医学的な危機より抜粋)


宇宙飛行士が宇宙船の中からテレビ中継する姿は、あまり珍しくなくなりました。電子機器の進歩やネットの発達によって、地球にいても鮮やかな地球の映像を見ることができます。しかし、一般の民間人が外国旅行のように宇宙へいくには、現時点では、まだまだ先の話になりそうです。

もし、この先、宇宙へ気軽に行けるようになるとしたら、どのような点に気をつけるべきなのか。未知の世界での危険について、宇宙物理学者が細かく検証したシミュレーション本です。

空気・放射能等、各項目を短く区切り、宇宙や物理学にあまり詳しくなくても理解できるよう書かれています。空気、水、重力の問題はすぐ思いつきますし、宇宙線や太陽風による放射線の影響も少しは知っていましたけど、思っていたよりも色々と問題点があり驚きました。放射線による機械の誤作動、宇宙酔い、概日リズムのずれ。変わったところですと、惑星・衛星での地震や地すべりの危険性、閉鎖空間に長期滞在する精神への影響が興味深かったです。

ぼんやり想像していた宇宙がほんの少しだけ身近なものとなる、夢のある科学読み物です。SF小説を書く人は読んでいるんでしょうね、きっと。



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[ 2017/02/18 21:32 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2014年01月22日(水)

宇宙に外側はあるか 

宇宙に外側はあるか (光文社新書)宇宙に外側はあるか (光文社新書)
著者:松原 隆彦
出版社:光文社
出版日:2012/02/17

評価〔B〕 現代宇宙論をつまみ食い。
キーワード:宇宙論、物理学、重力波、

素粒子論の発展とともに、初期の宇宙を調べる研究が可能になると述べました。この背景のもと、大統一理論の研究の進展に伴って新しく出てきたアイディアが、「宇宙のインフレーション理論」です。(本文より抜粋)


誰しも一度は考えてみたことがありそうな、知的好奇心を刺激する題名です。現役の専門家である著者が、現代宇宙論で明らかになっていることと未だ謎であることを、仮説と理論を明確に区別して解説しています。

最大の興味だった題名の謎にはほとんど触れませんでした。外側には他の宇宙があるかも、くらいでしょうか。しかし、それ以外のことは背景放射、素粒子論、宇宙の起源、量子論と解釈問題など難しい数式など使わずに易しく説明されていて、物理学の予備知識なしに読んでも理解できるのはないでしょうか。僕も理解しているかあやしい用語について理解できて良かったです。

全体的に教科書のような文章なので、確実ではありますが娯楽性はあまりありません。また、ある程度宇宙について本を読んだことのある人には、やや物足りなさそうです。知っていることが結構ありました。

エクピロティック宇宙論が面白かったです。どこかで「重力波のみが他の宇宙へ影響する」なる文章を読み、不思議に思っていたのですがこういうことだったんですね。興味深いです。観測機器の発達によりどんどん研究が進んでいるそうなので、著者を含めた専門家たちの新たな成果を期待しています。




[ 2014/01/22 20:44 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2011年09月10日(土)

タイタンの妖女 

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫 SF 262)タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫 SF 262)
著者:カート・ヴォネガット・ジュニア
出版:早川書房
発行:1977/10

評価〔B〕 どこか心に引っかかるSF
キーワード:SF、サスペンス、宇宙、

「では、タイタンで会おう」と、そのにやにや笑いがいった。やがて、それも消えていった。(本文より抜粋)


大富豪のマカライ・コンスタントは、ラムファードの実体化現象の場へと招待を受けます。時間等曲率漏斗に飛び込み不可思議な存在となったラムファードは、コンスタントに予言を残します。予言は本当なのか、予言した意図は何なのか、そして彼の運命はどうなるのか。舞台は地球のみならず、ある星から別の星へと大きく移動、それに伴ってコンスタントの人生も大きく揺れ動いていきます。なんとも壮大なSFです。

移動するたびに話の雰囲気が大きく変わるので、まるで連作短編集を読んでいるような気分になります。物語もとらえどころがなく、不安定な展開のようでもあります。全体の筋書きよりも、特定の場面や人物の台詞といった局所的なところに目がいきます。世の中に対する皮肉や人生の理不尽さ、生きる喜びが表現されているのが、本書の魅力なのかもしれません。

どの星が好きか、どの人物・生命体が好きかは、かなり好みが分かれそうですが、僕は終盤になって登場するトラルファマドールから来たミロが気に入っています。ミロの持つメッセージの話も結構好きです。

著者は村上春樹に影響を与えたそうですが、確かにどことなく村上春樹の文章を感じさせてくれます。本来は逆なんですけど。テレビで爆笑問題の太田光氏が紹介していたのが、読むきっかけでした。新装版では彼のあとがきもついているので、字の小さい本書よりおすすめです。





[ 2011/09/10 21:51 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2011年06月08日(水)

沈黙のフライバイ 

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)
著者:野尻 抱介
出版社:早川書房
出版日:2007/02

評価〔B+〕 地に足が着いたSF
キーワード:SF、現代

「こっちから出かけてって、地球外文明を探したくはないかってことだ」
「そんなこと、できるんですか」
「できるさ」(表題作より抜粋)


JAXA(宇宙航空研究開発機構)職員が謎の有意信号に挑む表題作を始めとして、5つ作品が収められたSF短編集です。フライバイは天体への接近通過、または重力による宇宙船の軌道操作(別名スイングバイ)を意味します。この題名から察することができるように、科学的な論理を重視したいわゆるハードSFです。

SFが苦手な人が想像するSF小説のように、専門的で難解な箇所もありますが、ストーリーの分かりやすさや面白さがその弱点を補ってくれています。論理的であるためか、遠い未来の話ではなく近いうちに現実のものとなりそうな雰囲気があります。違和感ある表現ですが、地に足が着いているSFです。また、解説で野尻の小説は気負いがないと評しているのも、分かるような気がします。どの短編も、なんとかなるよ、という空気が流れています。

そんな現実味と気負いのなさが両立している、1人の大学生が宇宙を目指す「大風呂敷と蜘蛛の糸」が気に入っています。こう経験ある専門家ではない主人公が、独創的なアイディアと熱意で突っ走る様はなかなか格好良いです。エッセイ風に書かれた「轍の先にあるもの」も、途中まで事実を元にして書いているので、展開が未来に達してもあまり違和感がありません。作中で描かれたインド洋上空のアレの建設も、実際はあんなふうになりそう。

地球存亡の危機や人類滅亡の窮地はまったくありません。映画のような派手さの代わりに、現実的な夢のあるSF小説となっています。





[ 2011/06/08 20:03 ] 小説 | TB(0) | CM(0)