2014年07月13日(日)

偶然のチカラ 

偶然のチカラ (集英社新書 412C)偶然のチカラ (集英社新書 412C)
著者:植島 啓司
出版社:集英社
出版日:2007/10/17

評価〔B+〕 偶然と必然から人生を考えます。
キーワード:偶然、哲学、処世術

自分の力だけでうまくいくことなど、この世にそうたくさんはありません。そんなときにこそ、偶然か必然かという根源的な問いかけが生まれるのです。(本文より抜粋)


人生において、偶然(運)なのか必然(運命)なのか分からない出来事はたくさんあります。偶然を題材にした書籍は、たいてい幸運をつかむ方法が書かれていますが、本書は偶然の仕組みから始めて、占いや確率論の枠を超えてどのように物事に対処するのが良いのか説いたものです。

偶然という分かっているようで分からないものを理解しようと試みているためか、あちこちに話が飛んで、ややまとまりに欠けると思います。しかし、科学なら確率論だけ、占いならひたすら霊的なもののみで解説していくのではなく、ギャンブラーや歴史書の逸話、そして宗教の思想をも取り上げて論じているのが新鮮でした。

いくつか処世術が書かれているのですが、「自分で選択しないように心がける」が印象に残りました。自分の力で運命を切り開く!みたいな自己啓発本が多い中、この考え方は興味深いです。他の本と同じような結論のところもありましたが、説得力があり、かつ押しつけがましくないのが本書の特徴かもしれません。

重要な文は大きめで太めの書体が使われています。最初読んだ時は強調し過ぎて読みづらいなあと思ったのですが、今、こうして見返すぶんにはどこが主張したい部分かすぐ分かり良いですね。




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[ 2014/07/13 18:06 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2014年06月23日(月)

時間はどこで生まれるのか 

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)時間はどこで生まれるのか (集英社新書)
著者:橋元 淳一郎
出版社:集英社
出版日:2006/12

評価〔B+〕 哲学とは違った方向から考える。
キーワード:時間、物理学、ミクロ、マクロ、物理量

さて、温度はミクロの世界では存在しないものであるが、時間はどうであろうか?(第一章より抜粋)


時間とは何かを解明するのは、意識や心を説明するのと同じくらい至難だと思います。分かっているようで、説明しようとすると難しい。従来の時間論は、哲学者は哲学のみ、科学者は物理現象のみ考察したものばかりでしたが、本書は現代物理学を踏まえたうえで人間が普段感じている時間の流れについて解き明かそうと試みます。

絶対時間・絶対空間の枠を超え、相対論と量子論を取り入れています。物理量から始まりエントロピーまで説明するので、内容の半分以上は物理学の解説で占められています。長いですが知らないことが多々あって勉強になりました。特に、ミクロとマクロに分けて考えている点が興味深いです。某アニメで出てくる世界線という言葉が物理学にあることや、某ゲームで時間軸が傾くとあったのですがそれが現実にも起こることに驚きました。時空間が実数と虚数で表現できること、相対論による空間軸の傾き、ミクロ世界での因果律の崩壊も面白いです。

ただ、主旨だけ簡単に書いてあるにも関わらず内容が難しく、きちんと理解できなかったところもあり残念です。そういったところは他の物理の入門書を当たるのがよさそうです。ある程度物理を習ったことがある方なら大丈夫かもしれませんが、光子も時空間もエントロピーも何も知らない方は、読む前に相対論や量子論の易しめの入門書読むと理解の助けになりそうです。時間は哲学の領域だから、物理なんて知らなくてもいいと思っていると完読するのは難しそうです。

物理の説明に比べると、肝心の結論が短くあっさりと書かれています。斬新な答えを期待していただけに、やや物足りなさを感じましたが、納得できる部分もありました。題名にあるように、「どこで」に焦点を当てて書かれた本でした。




[ 2014/06/23 21:26 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2014年06月13日(金)

ロボットは涙を流すか 

ロボットは涙を流すか (PHPサイエンス・ワールド新書)ロボットは涙を流すか (PHPサイエンス・ワールド新書)
著者:石黒 浩、池谷 瑠絵 他
出版社:PHP研究所
出版日:2010/01/21

評価〔A〕 SF映画からロボットの未来を考えます。
キーワード:ロボット、SF、映画、アンドロイド、現代

ではその時、「人間」と認めるための要件とは何なのだろうか? 『スター・トレック』ではすでに、それが知性なのか、感情なのかといった一歩踏み込んだ議論が展開されている。(本文より抜粋)


人間そっくりのロボットを作り日々研究している科学者である著者が、SF映画を題材にして、最新のロボット技術および「人間とは何か」を探ります。著者の「ロボットとは何か」と同じような内容ですが、テーマを映画にし、文章は記者が担当したことで読みやすいです。

著者が精巧なロボットを作り人々の反応を見るのは、「人間とは何なのか」という哲学的な難問の答えを得るためだと一貫しているのが分かりやすくて良いです。ターミネーターを見てはロボットの構造・機能に注目し、サロゲートを見ては自分の研究の行く末をあれこれ想像し、映画を物語としてではなく現実または近未来として見て感想を書いています。面白いのですが、読みやすさ重視のためか、内容は「ロボットとは何か」より平易な印象を受けました。高度な内容は二の次のような。

5章では人間と同等と認められるための要素として、こころや感情を挙げていますが、この難問に対し自然科学ではなく社会学の面から考察しています。精神の存在を証明するのではなく、相手が認めるかどうか――チューリングテストの概念と似ていると感じました。工学やプログラムを研究している人が、ロボット作りにおいてコミュニケーション能力を重視しているのが興味深かったです。学問が繋がっているのが分かり面白いですね。

ときおり書かれている著者の独特な性格も楽しいです。怒るという感情がよく分かっていなかった、ロボットをおもちゃのハンマーで叩き続けたら学生に怒られた、など言動が新鮮です。さすが研究者といったところでしょうか。

本書では10作品のSF映画が例として挙げられていますが、見ていなくても楽しめます。僕がみたことあるのもターミネーターとスター・ウォーズくらいです。読んでいて映画が見たくなってしまいました。サロゲートは面白そう。映画の核心に触れる箇所も書かれているので、読みたい方はネタバレにだけ注意してください。



[ 2014/06/13 22:06 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2014年01月22日(水)

堕落論 (新潮文庫) 

堕落論 (新潮文庫)堕落論 (新潮文庫)
著者:坂口 安吾
出版社:新潮社
出版日:2000/05/30

評価〔C+〕 哲学と文学の人。
キーワード:文学、戦後、哲学、

僕の仕事である文学が、全く、それと同じことだ。美しくみせるための一行があってもならぬ。美は、特に美を意識して成された所からは生れてこない。(日本文化私観より抜粋)


書店やWEBで何度も見かけ読もうか迷っていたのですが、なんだか難しそうという理由で敬遠していました。でも、ようやく今回読みました。無頼派と呼ばれた坂口安吾の随筆・評論集です。

文学、美術、人生、歴史をテーマに、どれも迷うことなくぶつけるかのような文章です。上記の抜粋部分や「人間は何をやりだすか分からんから、文学があるのじゃないのか」(教祖の文学)の一文は強烈で、文学のことなんてまるで知らない僕でも分かったような気になります。表題作は短いながらも気概に富んでいて、著者がどのような人物か推し量れると思います。また、古代に関する裏話を書いています。歴史好きの方には大いに受けそうです。

題材事態に興味がなく退屈に感じる箇所と、おそらく読解力がなくてよく理解できていないためつまらなく感じる箇所があり、全体的な評価はあまり良くないです。章ごとの評価がまちまちで、こうした総合評価はあまり意味がないのかもしれませんね。しかし、人気があるのが分かる作家です。

数年後くらいにもう一度読んだとき、また感想が違ってきそうです。



[ 2014/01/22 20:19 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2013年12月04日(水)

「普通がいい」という病 ~「自分を取りもどす」10講 

「普通がいい」という病~「自分を取りもどす」10講 (講談社現代新書)「普通がいい」という病~「自分を取りもどす」10講 (講談社現代新書)
著者:泉谷 閑示
出版:講談社
発行:2006/10/21

評価〔A〕 自分を殺さず生きよう
キーワード:心の問題、現代、人生観、精神科医、

今、私たちが取り組まなければならないのは、人間という生き物の根本的な特性を深く理解し、その上で「自分で感じ、自分で考える」という基本に支えられた生き方を回復することです。(はじめにより抜粋)


精神科医の著者が、先天的な特性・特徴によって生きづらさを感じている人々のために、自分で考えて生きていくためのヒントを書いた本です。

心の病や問題に対し、一部の人生相談や成功者の体験談のように「現実を見ろ」「甘えるな」と叫ぶのではなく、きちんと心理学の面から解決を図ろうとするのが良いです。一時しのぎでストレスが残る手段ではなく、根本的な問題解消であり人生の成熟を目指していて好感が持てます。強硬ではなく優しく感じられる文章です。

心と体の関係、彫刻的自己形成、愛と欲望の違いなど、より楽により充実した人生になるための手がかりが示されています。社会に適応し多数派として生きる欠点なんかも書かれていて、興味深い内容が多いです。

10講ありますが、特定の病気や難題をずっと掘り下げるのではなく、どのような問題にも大なり小なり役立つように感じました。柔軟性があります。

副題の「自分を取りもどす」という言葉がぴったりの良書だと思います。社会や世間にうまく適合してないと思っている方には是非読んでもらいたいです。多数派の価値観がどこか合わない方にもおすすめです。




[ 2013/12/04 22:06 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)