2018年03月24日(土)

土佐日記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) 



著者:紀 貫之、 西山 秀人
発売日: 2007/8/1

評価〔C〕 昔の記録としては貴重ですが。
キーワード:随筆、古典、旅行記、国司、

三十日。雨風吹かず。「海賊は夜歩きせざなり」と聞きて、夜中ばかりに船を出だして、阿波の水門を渡る。(本文より抜粋)


男もすなる日記といふものを、の出だしで有名な紀貫之の作品です。日記ですが旅行記、紀行文の要素が強い文章で、現代では平安時代の船旅がどのようなものであるかを知る重要な資料となっています。

また男性が普段使う漢文ではなく、女性が使うひらがなで書くことによって、日記をいつもとは違う視点や感性で描こうと挑戦しているのが大きな特徴です。ネットで男性が女性のふりをするネカマと一緒です。もしかしたら土佐の国司という高い身分を、一時的にでも忘れてみたかったのかもしれませんね。

内容はというと、日記なのに一人で物思いにふける場面は少なく、登場人物たちが様々な場面で感情を表現するために和歌を詠んでばかりです。船が出港できなければ嘆きの歌、夜の月を見れば優雅な歌を詠みます。まるで物語つきの歌集のようでした。もっと旅行記のならではの珍しいものを見た的な記述を期待していたので、正直なところ残念でした。ただ、昔の船は速度がでないばかりか、出港することさえ思いどおりにならなかったのだなと、当時の人々の苦労は少しだけ分かりました。

和歌が好きで昔の歌集の知識があれば、かなり面白い旅行記だと思います。



スポンサーサイト
[ 2018/03/24 21:14 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2017年12月28日(木)

万葉集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) 



編集:角川書店
発売日: 2001/11/1

評価〔B-〕 結構変化に富んでいます。
キーワード:古典、詩歌、奈良時代、

川の上の つらつら椿 つらつらに 見れども飽かず 巨瀬の春野は(本文より抜粋)


日本最古の歌集、万葉集の入門書です。全二十巻、4500余首ある中から選び抜いた約140首を紹介しています。古今和歌集など他の歌集と違い、素朴で率直な力強い歌が特徴です。

自然の美しさや故郷への想いを綴ったものが多いと思っていたのですが、恋愛や夫婦愛、死者を悼むものなど変化に富んでいます。中でも恋愛はもっと時代が下ってから流行したと思っていたので、ちょっと驚きました。隣町でも移動するのには苦労したであろう時代だからこそ、人への思いがよりいっそう高まり歌にしたくなるのもかもしれません。

専門用語も出てきますが、コラムで簡単に説明がありますので心配ありません。枕詞はもちろん、相聞、挽歌、序詞などひととおり解説があります。昔、学校で習った記憶がありますが、あまり覚えていないのでこうしたコラムはありがたいです。

聞いたことのある歌や印象に残った歌を引用してみます。

田子の浦ゆ うち出でて見れば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける


憶良らは 今はまからむ 子泣くらむ それその母も 我を待つらむぞ


賢しみと 物言うよりは 酒飲みて 酔ひ泣きするし まさりたるらし


世間を 何にたとえむ 朝開き 漕ぎ去にし船の 跡なきごとし


防人に 行くは誰が背と 問う人を 見るが羨しさ 物思いもせず



「世間は~」は僧が詠んだ哲学的な歌ですが、いつの世もあまり変わらないなと本当に思います。毎度のことですが、古典を読むと人間は千年くらいでは本質的に変わらないなと思うばかりです。昔の人に親近感を覚えます。

解説は分かりやすいのですが、読んでみて詩歌を楽しむ能力が低いことを実感しました。年を取り素養を身につければ違ってくるのかもしれませんね。




[ 2017/12/28 21:28 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2016年01月27日(水)

図解 ギリシア神話 歴史がおもしろいシリーズ 



著者:松村 一男
発売日: 2011/1/10

評価〔B-〕 聞いたことのある神々が多く登場します。
キーワード:神話、ギリシア、伝承、宗教、

神々は、自らの掟と階級を持つ社会を作り上げ、最高位には偉大な12の男女の神々がいました。(第3章より抜粋)


外国の神話を聞いて連想するのは、おそらくギリシア神話をあげる人が多いのではないでしょうか。ゼウスやアテナなど名前くらいは知っていましたが、どのような逸話があるのかまでは詳しく知らなかったので、ちょっと興味を持ち読んでみました。

アポロン、ヘルメスと多少は知っている神々はもちろんですが、パンドラ、ヘラクレス、ピュグマリオン、エコーなどもギリシア神話の登場人物とは知りませんでした。トロイアの木馬まで含まれているとは驚きです。それと、ゼウスはずっと創造主だと思っていたのですが、読み始めてすぐに勘違いしていたことに気がつきました。全知全能とかどこかで聞いたことがあったので、てっきりそうだとばかり・・・・・・。世界はカオスと呼ばれる混沌から始まったとされています。有名なオリュンポス12神が出てくるのは、少し後です。

神々は色恋沙汰が多いですね。一目惚れしたり、嫉妬に狂ったりと人間味にあふれています。特にゼウスは女性が好きで、次から次へと表現して良いほど遊んでいます。もっと堅苦しい神だと思っていただけに意外でした。

全体的に大まかな流れが分かるように、説明は簡略化されています。興味を持ったら詳細は他の本で、というスタイルなのでしょう。概要をざっくりつかむには分かりやすくて良いと感じました。



[ 2016/01/27 21:15 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2015年11月03日(火)

老子・荘子 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 



著者:野村 茂夫 (著), 谷口 広樹 (イラスト)
発売日: 2004/12/25

評価〔B+〕 儒教とは違う道家思想について。
キーワード:中国、古典、思想、無為自然、徳

無為を為せば、即ち治まらざること無し。(第三章より抜粋)


道家の大家である老子と荘子の思想をまとめて老荘思想と呼ぶそうです。二人の名前はよく聞きますし、学校でも習った・・・・・・んでしたっけ? にも関わらず、内容の方はほとんど知りません。古代中国で生まれた儒教とは異なる思想・教えを分かりやすく説明した、老荘思想の入門書です。

儒教が成功・出世を目指した現実的なものならば、老子の教えは俗世間とは別の精神的な豊かさを目指したもの、だと感じました。自然体を何より好みます。赤ちゃんを道に近い徳のある者として褒めていて、徹底していると感じました。欲のない、未発達だが穏やかな世界を目指していたようです。

荘子の教えはさらに哲学的なものです。荘子の文章のほとんどが寓言で、分かりやすく書かれているはずなのに、内容が壮大過ぎて分かるような分からないような感じです。禅問答のような、宗教のような雰囲気です。荘子とは論理を重視する恵施との問答が、両者の違いを際立たせていて印象深かったです。

また、現代の日本でも耳にする言葉、「足るを知る」「大器晩成」や「朝三暮四」「胡蝶の夢」などの出典が二人の思想だと知って驚きました。前二つは老子、後の二つは荘子の文章で紹介されています。僕のように、ちょっと気になったから試しに読んでみよう、くらいの人に合っている解説書だと思います。



[ 2015/11/03 21:03 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2015年10月19日(月)

孫子・三十六計 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 



著者:湯浅 邦弘
発売日: 2008/12/25

評価〔A-〕 現代でも応用できる普遍性が凄い。
キーワード:中国、古典、戦争、孫子、

彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し。(三 謀攻篇より抜粋)


中国の古典でおそらく論語と同じくらい有名なのが、この孫子の兵法書だと思います。後の為政者・軍人たちに大きな影響を与えたと言われれる本書。武田信玄の「風林火山」が有名です。その有名な古典を読み下し文・原文・訳文の順に書き、分かりやすく解説した孫子の入門書です。また、孫子の要点をまとめ、理解しやすくした兵法書、「三十六計」も説明しています。

全編ではありませんが、代表的なところは網羅されています。勝つための戦術的なことよりも、いかにして損害を少なくするか、負けないかを力説しています。戦乱の時に書かれ、もっと勝つことに拘っているのかと思っていたので、意外で印象に残りました。また、現代では当たりまえとなっている情報の重要性を、あの大昔に説いているのが凄いですね。用間篇でも、「成功を収めるのは予知しているから。予知とは、不可思議な力ではなく知性によって得られる情報である」とあります。格好良い。

また、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」は知っていましたが、続きがあることは知りませんでした。上記の引用文がその続きです。なるほどね。覚えておきたいものです。「三十六計、逃げるに如かず」という言葉は、劣性の時に使う計謀。正しくは「走為上(そういじょう)」で、「走るを上と為す」と言うそうです。知りませんでした。

いつの時代でも応用できそうな考え方・価値観が随所に見られます。だからこそ、長い時を越えて、外国でも読まれているのでしょう。はじめにで、哲学の書と評されていた理由が分かります。しかし、完全に理解したとは言えないので、なにかの折にまた読み返してみたいと思います。





[ 2015/10/19 22:23 ] 実用 | TB(0) | CM(0)