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2012年10月30日(火)

女と男 ~最新科学が解き明かす「性」の謎~ 

女と男  ~最新科学が解き明かす「性」の謎~ (角川文庫)女と男 ~最新科学が解き明かす「性」の謎~ (角川文庫)
著者:NHKスペシャル取材班
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
発行:2011/01/25

評価〔A-〕 ひとつの話題が短く読みやすいです
キーワード:性、ほ乳類、脳医学、生物学、進化

つまり、同じ課題を解くとき、男性は空間を把握する力を使って解いているが、女性は空間を把握する力は使ってはいなかったのだ。(第1章により抜粋)


いつの時代でもどのような文明でも、人の大きな関心事は性、特に異性のことです。書店でも、男性向けに女性の気持ちを説いた本や、女性向けに男性心理を解説した本を見かけます。本書は、NHKが2009年に放送した番組を、書籍化したものです。なお、ダイヤモンド社「だから、男と女はすれ違う」を文庫化したものでもあります。

男性はこうだ女性はこうだというのではなく、どこに違いがあるのか?から始まり、恋愛の仕組み、なぜ離婚に至るのかなど、分かってはいるが科学的に調べてみるとどうなのかに重点を置き、解説しています。進化の歴史とMRIなど科学技術を駆使した調査を組み合わせ、説得力を持たせています。

前半の内容は専門的ではありますが、分かりやすく書かれていて、軽めの科学エッセイのようでした。上記引用の、同じことを考えても男女で頭の使う場所が違う、はなかなか興味深い事実です。驚きと納得が同時に沸き起こりました。また、なぜ人は未熟な状態で生まれるのかの説明も、説得力のあるものでなるほどと思いました。女性のほうが読むのが得意な地図も、関心してしまいました。

一方、終盤の人間の性の未来については、読み応えがあり面白かったです。精子の劣化はいつだか関連記事をネットで読んだ記憶がありますが、染色体の変化の話は初めて知りました。性の仕組みが未だ変化を続けていることに驚きです。

男女それぞれの研究より、男女が向き合う現場を重視しているため、予想よりも身近で軽めに感じましたが、それでも興味深く他人に話して意見を聞いてみたいことが多かったです。





[ 2012/10/30 21:26 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2012年09月30日(日)

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
著者:オリヴァー サックス、Oliver Sacks 他
出版:早川書房
発行:2009/07/05

評価〔A-〕 奇妙な症状で人生を見つめなおします
キーワード:病気、神経系、人生、哲学、エッセイ

テストは終了したと思ったのだろう、帽子をさがしはじめていた。彼は手をのばし、彼の妻の頭をつかまえ、持ちあげてかぶろうとした。妻を帽子とまちがえていたのだ!(本文より抜粋)


題名を見てまさかと思い、読んでみたら上記の引用のとおり本当に間違えていて、驚きました。本書は、神経科の医師による、非常に珍しい症状の患者たちについて、思うことを綴っています。

裏表紙には「驚きと感動の医学エッセイ」とありましたが、専門的な記述が多いです。前置きと各章の説明は、医学にある程度の知識があれば面白いのかもしれませんが、素人が読むとなると専門用語が多く分かりやすいとは言えませんし、あまり面白いとも言えない気がします。

しかし、患者の描写は面白く引き込まれます。著者もはじめにで書いているように、症状のみを記述するのではなく、患者の生き方や人生を含めて伝える叙述力を重視しているようです。このような奇妙な患者がいるで終わらず、その状況であのように生きている、そのように思っていると、患者が一人の人間として具体的に描かれているのです。記憶が保持できない男性、自分の体の感覚を自覚できない女性、チック症との独自の付き合い方を発見した男性と、健全な人でも人生を考える上で参考になる物語が語られています。また、失語症病棟のある風景「大統領の演説」は皮肉めいていて面白いですし、知的障害の若い女性「詩人レベッカ」はそういう人々に対する見方が変わる新鮮な話でした。

24篇もあるので、さすがに質にばらつきがありますが、どれかは心に響くものがあるのではないでしょうか。解説の部分が少々退屈に感じることもありましたが、著者と患者のやり取り・交流の部分は意義深いものだと思います。



[ 2012/09/30 22:01 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2012年03月15日(木)

脳はなにかと言い訳する(新潮文庫) 

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)
著者:池谷 裕二
出版:新潮社
発行:2010/05

評価〔B〕 軽く読める脳の本です
キーワード:医学、脳、神経科学、エッセイ風

ド忘れのときは、たしかに答えは出てこないけれども、その一方で正解が何かをちゃんと知っています。この矛盾構造、不思議だと思いませんか。(6章より抜粋)


テレビの教養番組ではすっかり御馴染みの脳科学ですが、最新の研究ではどのようなことを調べているのでしょうか。神経科学の研究者である著者が、脳について明らかにされたことやまだ解明されていないことについて、あれこれ考えた科学読み物です。

本書は、著者が寄稿していた連載エッセイが元となっていて、各章はそのエッセイと、エッセイの追加・補足説明で成り立っています。どの章も短く、内容も身近なものが多いので、手軽に気軽に読むことができます。長い時間が取れない人に適しているつくりです。

15章の睡眠は情報の整理するなど既知の話もありましたが、「変化盲」や記憶の仕組みの話は興味深かったです。アルコールは体レベルではストレス解消になっていない、は結構衝撃的でした。そんなことまで分かってしまうんですね。読み進めていくうちに、脳は凄いのか凄くないのか、よく分からなくなってきます。効率が良いということなんだろうな。それと、意思を決定する前から脳は動き始めている不思議な現象は知ってはいましたが、やはり面白いです。脳の解明に伴って、意識の謎も解き明かされるといいなあ。

ライターではなく専門家なので、掘り下げた内容を予想または期待していたのですが、これはこれで良い読み物だと感じました。新書よりも軽く読みやすいと思います。著者の文章は肩肘張ることなく楽観的なためか、読後感も良いですよ。



[ 2012/03/15 22:48 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2011年03月06日(日)

脳と性と能力 

脳と性と能力 (集英社新書)脳と性と能力 (集英社新書)著者:カトリーヌ・ヴィダル、ドロテ・ブノワ=ブロウエズ 他
出版:集英社
発行:2007/06/15

評価〔B〕 男女間に先天的な差はあるのか?
キーワード:性、脳、男女、解剖学、生物学、神経学、心理学

つまり、男性と女性が違うとする<信頼に足る>テストは、口頭の流暢さと三次元の回転のみになる!それも、かろうじてといった程度だ!(第二章より抜粋)


女性は言語能力に秀でていて男性は空間能力に長けている、とよく言われますが真実なのか?そもそも生まれつき能力に差があるのだろうか?などなど、男女の特性を脳科学で検証していく新書です。著者の2人は神経生物学者と科学ジャーナリストという興味深い組み合わせ。「関係する女 所有する男」で言及されていたので読みました。

タイトルにある脳はもちろん、解剖学、遺伝子、染色体、ホルモン、心理実験と様々な面から、一般的に知られている概念を検証しています。歴史を紐解いてみると、白人は有色人種より優れている、男性は女性より優れていると偏見で結論ありきで書かれた論文が多く、信頼に足るものが実に少ないのが分かります。加えて、メディアが伝える新発見は、その後の研究により否定されているものもあり、情報を鵜呑みにしてしまう危険を再認識しました。また、男女の差は経験によって埋め合わせる程度のものでしかないとあって、少々驚くとともに安堵しました。それよりも文化や社会の影響が大きいそうです。能力の差を、性別のせいにしてはいけないと感じました。

本書の裏には、自分の利益のため脳科学を利用している者への不快感があります。社会に蔓延した誤った知識のせいで科学が悪用されないよう、こうした本を出しているのでしょう。その姿勢は頭が下がります。以前読んだ「『社会調査』のウソ」に似ています。

翻訳のせいか、専門的な内容のためか分かりませんが、少し分かりにくいのが難点です。しかし、エピローグでは挙げてきた問題と結論のまとめがあり、素人でも理解できるようになっています。助かります。男女の差に疑問を持ったら読んでみてはいかがでしょうか。




[ 2011/03/06 22:19 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2010年10月30日(土)

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)
著者:田沼 靖一
出版:幻冬舎
発行:2010/07

評価〔A-〕 細胞死研究から見えてくるもの
キーワード:細胞、生物学、アポトーシス、死生観、

「死の科学」では、これまでは生きていることを「生」の視点からしか見てこなかったところに、まったく逆の「死」から見る、という発想の転換を起こしました。(まえがきより抜粋)


アポトーシスという言葉があります。ギリシャ語で「落ちる(falling)」と「離れる(off)」という意味で、細胞の死に方の一種、遺伝子によって支配された細胞の自死を指します。つまり、細胞にはプログラムされた死が存在するのです。題名のどうしては、なぜではなくどのようにしてを指しています。理由ではなくメカニズムのことです。その死の謎を調べることで分かってきた生物学と医療品開発の最先端を紹介し、さらに死の科学を踏まえた進化・性そして新たな死生観を述べています。

死や細胞など硬く難解そうな単語が数多く登場しますが、内容は読みやすく分かりやすく、まったく生物学を知らなくても読めるのではないでしょうか。アポトーシスやテロメア等の専門用語は既に知っていて衝撃的ではありませんでしたが、理解があやふやな点が多かったので、本書で改善されたのは良かったです。また、アポトーシス研究を難病の治療法に応用する試みや、ゲノム解析を利用した医薬品開発であるゲノム創薬は、最前線の研究者でなければ書けない事項です。アポトーシスの研究はまだ日が浅いし、ゲノム解析は利用が始まったばかりなんですね。素人でも知ることができるのが嬉しいです。

しかし、本書で強く関心を惹かれたのが第6章の「死の科学」が教えてくれること、です。遺伝子に組み込まれた死の存在から生命進化と性について考察し、最後は死の意味、著者の死生観を述べています。生物学から冷静に着実に論じていくので、冷たい感じはしますがなるほどと唸ってしまいます。なぜ死ぬのかという問いに対して、生きているから死ぬと答えをよく耳にしますけれど、その説明よりは科学的な意見な気がします。利他的な遺伝子は興味深いですね。

もう少しページ数を増やして終盤を充実させて欲しかったのですが、それは贅沢なのかな。アポトーシスを知らないで読んでいたら、凄く鮮烈で電撃的な本だったでしょう。評価Sくらい。でも、それを差し引いても、知的探究心を満たしてくれる面白い本でした。





[ 2010/10/30 18:42 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)