2017年10月27日(金)

こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます  



著者: 林 公一
発売日: 2013/12/13

評価〔B+〕 本人や関係者の生の声があります。
キーワード:精神科、Q&A、相談、うつ病、統合失調症、

姉である私に対して、幼稚な嫌がらせをしたりしていましたが、最近はそれがエスカレートしております。(1章より抜粋)


数年ほど前に、著者のサイト「Dr林のこころと脳の相談室」から転載された文章を読み、衝撃を受けたのを覚えています。それは1章の「家の中にストーカーがいます」でした。今回改めて読んだのですが、やはり怖いです。

選集とあるように、相談サイトによせられた悩みの中から55件を選び収録しています。著者は医療相談は明るい希望だけを伝えるもので、それは事実ではないと主張しています。サイトのほうにも、質問される方へで「事実を回答することを基本方針としております。医療相談ではありません。」「精神科に関係したことなら、どんな質問もOKです。」と書かれています。

相談対象は相談者本人、家族、職場の部下など人生相談同様様々で、内容も統合失調症やうつ病はもちろん、擬態うつ病や独特な嗜好などこちらも様々です。病人の家族を持て余している人や、なかなか病気が治らず不満がある人の長い長い文章を読んでいると、自分の想像していたものよりも苛烈で驚きました。生の声の迫力や訴える力は凄いです。

先生の回答は医者としてむやみに断言せず事実を淡々と述べていて、正確に見極めようとする姿勢に好感が持てます。著者の擬態うつ病の本に興味を持ちました。

相談者によって読みづらい文章があったのが、少々きつかったです。病人本人の主観を知ることができるのは良いのですが、支離滅裂な部分や同じことを何度も繰り返すことがあり、病人の話だと分かっていても混乱します。それが長かったりすると読むのも辛いです。精神科医やカウンセラーは本当に根気を要する仕事ですね。




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[ 2017/10/27 20:14 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2016年02月10日(水)

傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 



著者:夏井睦
発売日: 2009/6/20

評価〔A〕 新しい治療法にせまります。
キーワード:消毒、湿潤療法、創傷治療、

消毒薬による傷の消毒とは、言ってみれば「傷の熱湯消毒」と変わりないのである。(本文より抜粋)


数年前、テレビ番組で傷口をサランラップでグルグルまいている様子を見ました。なんだか痛そうだなーと思ったのを覚えています。あの傷を綺麗に洗い流してグルグル巻きの治療法――湿潤療法と、傷を消毒してはいけない理由を、著者の実体験とともに紹介しています。

傷の消毒はしなくてはいけないものではなく、むしろ消毒はしてはいけないと、従来とは逆の主張をしています。その生物学的説明、実践した結果、消毒に代わる適した治療法である湿潤療法が分かりやすく書かれていて、医学的知識がない方でも大丈夫です。例えば、傷を乾燥させても治る根拠を、口の中の傷は乾かせないけれど治りますと説いていて、説得力があります。何より痛みが軽減され、早く綺麗に治るのが良いですね。また、なんでもかんでも湿潤療法で治るわけではなく、適していないので病院に行ったほうが良い事例も記述しているのが、誠実または謙虚で好感が持てました。

医学の歴史から消毒が常識となった理由、傷が化膿する仕組み、生物の進化と細菌、今までの常識が変わるパラダイムシフトと、治療そのものだけでなく関係する周辺のことも興味深いです。生まれたばかりの新生児に皮膚常在菌を与えるため、母親に抱っこさせる育児法(カンガルーケア)があることを初めて知りました。

著者が医学の問題を解決策を探る方法として、医学より高次の生物学や化学の研究書を読んでいるそうです。従来とはまったく違う価値観は、こうした姿勢や考え方から生まれるのでしょう。感服しました。

あとがきでも、医学界に喧嘩を売りまくる本と書いてありますが、出版当初は風当たりが強かったと思います。湿潤療法で検索すると、多くのサイトで取り上げられていました。本書が出版された当時よりは、普及しているようです。湿潤療法は火傷にも効果的らしいので、もし大やけどを負ったら痛くないこの方法でお願いしたいです。火傷の消毒は相当痛いらしいので。



[ 2016/02/10 21:20 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2015年03月19日(木)

死にたくないんですけど iPS細胞は死を克服できるのか 

死にたくないんですけど iPS細胞は死を克服できるのか (ソフトバンク新書)死にたくないんですけど iPS細胞は死を克服できるのか (ソフトバンク新書)
著者:八代 嘉美、海猫沢めろん 他
出版社:ソフトバンククリエイティブ
出版日:2013/09/18

評価〔B〕 iPS細胞をよりよく知るために。
キーワード:生命、iPS細胞、ES細胞、生物学、遺伝子、

昔ならともかく、今なら生物学の最先端研究技術を使うことによって、生老病死にまつわるあらゆる障害を取り除くことができるんじゃないか?(まえがきより抜粋)


題名を見て「まったくだ」と思ったのは久しぶりです。作家の海猫沢めろんが死を克服する方法を、友人で生物学者の八代嘉美にあれこれ尋ねてみたのをまとめた生物学の入門書です。特にiPS細胞について掘り下げています。

二人の対話形式で進みますが、一人が素人でもう一人が専門家なので、分かりやすく読みやすいです。率直に疑問や願望をぶつける海猫沢めろんが清々しいです。生物学や医療の専門家には、希望の持てることを断言してほしいという意見は同感です。

自宅でできる遺伝子検査キットから始まり、ES細胞、iPS細胞と繋がっていきます。ESとiPSの違いがよく分からなかったのですが、違いと倫理上の問題点が明確に書かれていて良かったです。また、遺伝子を組み込むのにウイルスを使ったり、外国より日本のほうが研究の規制が厳しいことなども興味深かったです。

ただ、限定された領域での話ですので、生物学全体を語るには不十分です。専門的な知識を得たい方には、不満を感じる内容でしょう。あくまで入門書です。でも、これらの内容が研究や医療の根本あるいは土台なのかもしれません。




[ 2015/03/19 21:50 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2014年02月28日(金)

空腹力 

空腹力 (PHP新書)空腹力 (PHP新書)
著者:石原 結實
出版社:PHP研究所
出版日:2007/12/14

評価〔B+〕 飽食の時代をどう生きるか。
キーワード:健康、医学、空腹、血液、東洋医学、

現代人の病気の原因の多くは、食べ過ぎによるものです。ですから、私たちが病気にならずに健康に生活を送るには、食べ過ぎを防ぐことが、もっとも簡単で効果的な方法なのです。(本文より抜粋)


腹八分目に医者いらずと言います。僕は便秘ぎみなのですが、お腹いっぱい食べた時よりも少なめに食べた時のほうが、腸の調子が良いことが多いです。満腹や空腹は健康にどう影響するのか。独自の食事療法を保養所で実践している著者が、従来とは違う健康法を伝授します。

まず、食べ過ぎ、特に動物性タンパク質の取り過ぎの弊害と、空腹状態の効果・利点を述べています。それと、体温をあげることによって免疫力がよく働くとも主張しています。西洋医学に加えて、個々の臓器でなく全体を診る東洋医学を取り入れている点が特徴的です。体温を調節するため陽性・陰性で食べ物を判断するのは面白いですね。なんか説得力があります。

断食療法の力を示すためいくつか実例を挙げています。保養所は成功を収めているようですが、絶賛の体験談ばかりですと、事実だとしてもなんだか疑ってしまいます。断食に向いていない症状もあるので注意が必要です。

具体的に何をどうすればいいのかも書かれているので、1週間ほど試してみると自分に合うかどうか分かるのではないでしょうか。毎朝ニンジン・リンゴ・ジュースを作るのは手間ですが、体を温めるために生姜紅茶を飲むのは良さそうです。




[ 2014/02/28 20:52 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2013年10月10日(木)

なぜ人は砂漠で溺死するのか? 

なぜ人は砂漠で溺死するのか? (メディアファクトリー新書)なぜ人は砂漠で溺死するのか? (メディアファクトリー新書)
著者:高木 徹也
出版:メディアファクトリー
発行:2010/08/25

評価〔A-〕 死体は嘘をつきません
キーワード:法医学、遺体、解剖、

「風呂溺」とは、「風呂場における溺死」の意味。それがなぜスラング化したかというと、わが国では、入浴中に浴槽内で溺死する人があまりにも多いからだ。(本文より抜粋)


世にも珍しい出来事の本もしくはクイズの本かと思っていたら、法医学の本でした。大学で教鞭を取り行政解剖を行い、ドラマでも監修を務めた経験のある法医学者の著者が、遺体と解剖について解説します。

5千体以上の遺体を検死しただけあって経験豊富です。実に様々な死に方が書かれていて、なんか感心してしまうと同時に、恐怖を感じました。例えば、心臓の病気だと左腕に痛みが発生する、ということは知りませんでした。医師でも勘違いしてしまう事例を覚えておくことは、損にはならないはずです。また、著者があまりの多いと言う風呂での溺死ですが、高血圧などが原因でお風呂で溺れた場合は、事故死ではなく病死になるそうです。なので、遺族から確認の電話がくるなんてのも解剖した人ならではの話だと思います。

病死だけでなく、題名のように意外な死に方ものっています。夏で凍死、家で熱中症、クラッシュ症候群などなど。人は意外に簡単に死んでしまうものなのかと考えてしまいました。それとは別に、日本では多いとされている自殺や、性に関する死亡例についても書かれています。前者の遺体の悲惨さには胸が痛みますが、それ以上に後者が印象的でした。言い方は悪いのですが、恥ずかしい状態での死の実情が分かります。人の性欲はすごく、著者が悲しい生き物と表するのも分かる気がします。

少なくない人が畳の上で平穏に死をむかえるのではないと知りました。本書で知った知識を忘れずに暮らしていこうと思います。



[ 2013/10/10 21:01 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)