2012年05月02日(水)

ゲーデルの哲学 

ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)
著者:高橋 昌一郎
出版:講談社
発行:1999/08/20

評価〔B+〕 それでもやはり難しいです
キーワード:論理学、不完全性定理、哲学、伝記

ゲーデルは、不完全性定理によって人間理性の限界を明らかにしながら、人間理性そのものを疑うことはなく、世界は合理的に進歩すると信じていた。(はじめにより抜粋)


アリストテレス以来の最大の論理学者、もしくはそれ以上の逸材と評され、二十四歳の若さで不完全性定理を証明したクルト・ゲーデル。彼の残した証明や論理を解説すると同時に、あまり知られていない彼の人間性や哲学を明らかにします。半分は初心者向けの説明、半分はゲーデルの人生を振り返る伝記のような感じです。同著者の『理性の限界』を読んで興味を持ちました。

不完全性定理をパズルやアナロジー(比喩的表現)を使って分かりやすく説明していて、まったく馴染みのない方でも大まかなイメージはつかめるようになっていますが、やはり元の理論が難解なだけに完全に理解するのは難しいと思います。また、『理性の限界』にある記述もあるので、個人的にはそれほど新鮮味はありませんでした。

神の存在論は、相変わらず禅問答のようで分かったような分からないような気分になりました。ただ、それらの証明は唯一神を対象としているみたいで、そのあたりはキリスト教(または一神教)の影響かなーと思ったりもします。それ以外にも人間機械論やランダム性について書かれています。ランダム性はようやく少し分かった、ような気がします。

中盤の伝記では、論理を重視し内気で頑固だったゲーデルの内面を垣間見ることができます。仲の良かったアインシュタインと散歩をするのが好きだったと書かれています。二人の天才はどのような会話をしたのか興味がわきます。意外と普通の世間話だったのでしょうか。それに、アインシュタインもそうですが周囲が有名な人ばかりなのが凄いですね。現代コンピュータの基礎を作ったフォン・ノイマン、言語哲学のウィトゲンシュタイン、現代数学の父・ダフィット・ヒルベルト……。特にノイマンは、「二十世紀最高の知性」と呼ばれるたびに、それは自分ではなくゲーデルだと返答していたことから、ゲーデルがいかに桁外れの才能を持っていたかが分かります。

不完全性定理も神の存在論も難解で、特に後者のゲーデルの存在論的証明はイメージをつかむことすら困難です。初心者にも分かるようにとありますが、本当に予備知識0の人が読んでも理解できるのでしょうか……。理解は本当に大まかな部分だけにとどめ、ゲーデルの伝記を読んでいると割り切れば良い本だと思います。




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[ 2012/05/02 23:14 ] 心理・哲学 | TB(1) | CM(0)

2011年11月06日(日)

英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 

英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)
著者:斎藤 兆史
出版:中央公論新社
発行:2000/05

評価〔B-〕 方法ではなく情熱と姿勢がすごい
キーワード:英語、近代、伝記、

欧米の英語がまだ絶対的な規範として仰がれていた時代に、『ロミオをジュリエット』を演じる英国人の役者に向かって、「てめえたちの英語はなっちゃいねえ」と英語で一喝した日本人がいた。(第3章より抜粋)


日本の社会では英語は重要だと言われていて、社会人になっても習得に励んでいる方もたくさんいますが、調査によると日本人の英語力はとても低いそうです。日本人は語学に向いていないのでしょうか?しかし、昔の日本にも英語を母国語とする人と同じくらい、あるいはそれ以上に英語を知り操る人々がいました。そんな達人たちの勉強方法と一生を紹介しています。

基本的に日本にいながらにして英語力を身につけた人物が挙げられています。しかし、紹介する人数が10人と多く、どうしても簡略化された説明になりがちなので、面白みに欠けるところがあります。また、彼らの学習方法から学ぶと書かれていますが、その語学力は尋常でない努力と天与の才で得たものが多く、参考になるのかどうか疑問です。

けれど、達人たちの英語に関する逸話は興味深いです。英語でからかわれても、機転を利かせて英語でやり返してしまうのは凄いです。外交や教育など英語以外にも目的のあった彼らは、なんとしても目的を達成させる気概があったからこそ、達人になりえたのだと思います。著者の受験英語の何が悪いのかと書いているのも、こういう人達を見ていると一理あると感じます。

言語習得において、初歩の段階では英語がうまいと言われ、支障がなくなるにつれ何も言われなくなるそうです。また、日本人が英語を学習する場合、ある程度英語ができるようになると英国・米国的な思考に変化しますが、さらに習得するとまた日本人的な思考に戻るそうです。興味深いですね。

結びに著者は、英語を学ぶ際に欧米文化に従属するのではなく日本と日本語についてもしっかり学び、日本人の英語の意味を問いかけています。達人たちの真似をすることは難しいですが、外国語を学ぶときは肝に銘じておくべきだと感じました。




[ 2011/11/06 14:54 ] 言語 | TB(0) | CM(0)