FC2ブログ







2018年07月23日(月)

ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか 



著者:川合 伸幸
発売日: 2015/11/19

評価〔A-〕 攻撃的かつ協力的
キーワード:人間、本性、心理学、比較認知科学、攻撃性、援助行動、

ヒトが攻撃的な傾向を持っているとしても、進化の過程で、自分の攻撃性を抑えるように「進化」してきた、との仮説があります。(第四章より抜粋)


人間は同種の仲間のみならず、時には自分の子どもさえも殺してしまう攻撃性を持つ反面、自分を犠牲にしてまで他者を助けることもあります。果たしてどちらがヒトの本性なのでしょうか? 本書はこの疑問に対し、心や行動を動物と比較する比較認知科学の面から考察しています。暴力・攻撃性と援助行動・協調性が本書の二つの柱です。脳内物質は専門的なので難しいですが、それぞれについて心理実験が紹介されてこちらは分かりやすく説得力があります。

目を引いたのは上にも引用した自己家畜化仮説です。人類には極端に暴力的な人もいたが、そのような社会を破壊しそうな人は排除されていき、自ら攻撃性は低くなっていったという説なのですが、これはなかなか興味深いです。人間は他の動物を品種改良してきましたけど、まさか自らも知らず知らずのうちに変えていったとすると、まるで寓話のようです。

協調性のほうでは、言葉も理解できない赤ちゃんが他人を助けるという実験結果が印象に残りました。強制でも見栄でもなく、何の予備知識もなく援助行動を起こすのは、確かにヒトが持つ本性の一面なのでしょう。ある研究では他人にお金を与えても幸福感が得られるとしていて、協調的な面を補強しています。

実験・研究は多岐に渡り、内容はやや散漫的な感じもしますが、どの章も興味深く読めました。今後も暴力や協調性のどちらか片方だけでなく、同時に研究して新たな発見があることを望んでいます。




スポンサーサイト
[ 2018/07/23 22:39 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2016年02月26日(金)

ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか (角川文庫) 



著者:NHKスペシャル取材班
発売日: 2014/3/25

評価〔S-〕 内面から人の歴史を振り返ります。
キーワード:人類、心、進化、テレビ番組、

『全宇宙の生命を脅かすモノ―― 災いの渦』(本文より抜粋)


人類の進化を生物学や遺伝子学から紹介した書籍は珍しくありません。しかし、本書では従来とは違った角度から、ヒトの内面である心を軸として人類の起源と歩みの解明に挑みます。第10回パピルス賞を受賞。

時間をかけ丹念に調べ、多くの専門家にインタビューをし、新しい説を紹介している非常に読み応えのある本となっています。人類と言えば「二足歩行・道具・言語」が特徴ですが、それ以外でヒトと猿の違いとは何なのかを探っていくのが面白いです。実験や原始的な民族の研究から、普段私たちが何げなく行っていることが、実は他の生物と決定的に違うことを教えてくれます。ヒトがどのようにして血縁関係を超えた集団を形成したのか、わりに合わない農耕生活はなぜ始まったのか、都市の出現とある発明の関係性、平等の心と欲望の心。DNAが、海馬が、なんて話が苦手な人でも興味深く読むことができます。

また、太古と現在では意味が違かったかもしれない物・概念も興味深いです。例えば、おしゃれ。考古学の見地から導かれた自己顕示欲、贅沢品以外の意味は、理にかなっていて唸ってしまいます。それと宗教も意外でした。単に神秘的なものを敬うだけでなく、他にも重要な意義があったとする説はかなり説得力があります。

人間の歴史は戦争の歴史、なんて言いますが、本書を読むと、予想していたよりもヒトは昔から協調性がある生き物だったみたいで少々驚きました。でも、だからこそ、過酷な自然を生き抜いて繁栄できたのでしょう。

話があちこちに飛んだり、本筋が分かりにくいところもありましたが、全体をとおして見ると確かに心について語っています。この環境ではこうした心境だったのだろう、あのような状況ではあのような気持ちかも、と当時の人々の内面を想像しやすいのが良いですね。心という面では、数万年前からほとんど変わっていないと思っています。

著者名から分かるように、NHKの番組を書籍化したものです。それにしても、「人間はどこから来たのか、どこへ行くのか」といい「女と男」といい、NHKの書籍は内容の濃くて興味深い本が多いと感じました。今後も質の高い面白い本を期待しています。



[ 2016/02/26 22:10 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)