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2018年07月29日(日)

満願 (新潮文庫) 



著者:米澤 穂信
発売日: 2017/7/28

評価〔A-〕 推理の感心とホラーの恐怖を。
キーワード:暗黒ミステリ、短編集、ホラー、文庫化

『全宇宙の生命を脅かすモノ―― 災いの渦』(本文より抜粋)


温泉宿、交番、遠い異国の村と、実に多種多様な舞台と職業の人たちを描いた不穏な雰囲気が漂うミステリ短編集です。このミステリーがすごい2015年1位、週刊文春ミステリ2014年1位、ミステリが読みたい2015年1位、そして第27回山本周五郎賞受賞。

スパッと明るく解決ではなく、最後に明かされる恐ろしい事実で幕を引く短編ばかりなのが特徴です。暗黒小説と言うのでしょうか、それともサスペンスホラーのほうが近いかもしれません。ただ悪意や恐怖のみではなく、推理小説作家らしくまず謎があり終盤に真実が明かされる構造となっています。どの短編もさりげなく伏線がはられていて巧みです。「万灯」はやや長く感じましたけど、見事な終わり方だと思います。

また、美しい女性とその娘たちが主役の「柘榴」は非常に印象に残る短編でした。一人称で淡々と進むので一見本書には不釣り合いに思えますが、ある人物の真意が分かると全てが違って見えてきて驚きました。実写ドラマ化が見たい気もしますが、実際の映像にすると陳腐なものになりそうなので、読み手の想像に任せるのが良さそうです。それぞれが最適な人物像を想像できるのは、小説の利点ですね。

語り手から見て、知るすべのない他の登場人物たちの心情をあれこれ推理するのが興味深い短編集でした。殺人事件を扱うよくある推理小説でもなく、日常の謎でもないものを探している人は試しに読んでみてはいかがでしょうか。ちなみに同著者の「儚い羊たちの祝宴」と同じタイプなので、「儚い羊」が気に入っている人はきっと楽しめるでしょう。




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[ 2018/07/29 23:10 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2016年09月25日(日)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫) 



著者:三津田 信三
発売日: 2009/3/13

評価〔B+〕 分厚い本です。それと、まさかの真相。
キーワード:戦後、神隠し、民俗学、ホラー、推理、

ある種の感慨を覚えながら前方を見遣った言耶の眼に、神々櫛村の入口の両脇に立つ二体のカカシ様の何とも不気味な姿が、いきなり飛び込んできた。(弐より抜粋)


戦後、怪奇小説家の刀城言耶が取材で因習が根強く残る辺境の村を訪れ、そこで起きる事件に巻き込まれていく和風ホラーミステリーです。誰かの視点で固定されず、いくつかの視点で順番に物語が綴られていきます。刀城言耶(とうじょうげんや)シリーズの1冊目で、2006年2月に刊行した本を文庫化したものです。

なんといっても長いです。600ページ以上あります。序盤が固有名詞が多く読みにくかったので、最後まで読み切れるか心配しましたが、紗霧の日記からは読みやすくなって安心しました。前半はホラー要素が濃く、後半から終盤にかけてミステリ要素が強まっていきます。分厚い本なので、読んでいる途中でまだ半分も読んでないのかと何回も確認してしまいました。もう少し短くできなかったのかな。ホラーの雰囲気を出そうとすると、仕方ないのかもしれませんが。とにかく長いという良くない印象が大きく残りました。

しかし、最終盤の謎解きでは自分の予想した犯人が当たった?と思ったら、新事実発覚で外れていたり、二転三転して翻弄されましたけど面白かったです。意外過ぎる真相でしたが、見抜けた読者はいたのでしょうか? ヒントはありましたけど、相当難しいのではないでしょうか。

最後が見事だっただけに、その長さだけが残念でした。長くても気にならない人もいますので、好みの問題だと思います。無理に1冊にせず、上下巻に分ければ印象も違っていたと思います。もしも、上下巻だったら、上は評価Bで下は評価Aにしたかもしれません。



[ 2016/09/25 21:55 ] 小説 | TB(0) | CM(0)