評価〔B−〕 シーザーは主役ではないと思います。キーワード:戯曲、シェイクスピア、イギリス文学、
ハムレット「お前もか、ブルータス? それなら、死ね、シーザー!」(第三幕 第一場より抜粋)
上記の引用で有名なシェイクスピアの政治劇です。僕のように粗筋をまったく知らなくても、この台詞くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。細かいですが、読む前まで「ブルータス、お前もか」だと思っていました。逆だったんですね。
ブルータスはキャシアスから権力者シーザーの暗殺をもちかけらます。迷った末に、共謀者たちと共に計画を実行するブルータスたち。権力は彼らの手にすみやかに移行するかに見えたが……という展開です。題名がシーザーだから、彼が殺害されて終わりなのかと思ったら、まだ半分くらい残っていて驚きました。読み進めると分かりますが、ブルータスが主人公と言っていい内容です。
テーマは友情と政治です。こういった権力争いは、何百年たってもあまり変わりません。時を越えて教えてくれるのが古典の良いところです。暗殺後、ブルータスとシーザーの味方であるアントニーが、大衆に向かって語りかけるのですが、ここが一つの山場となっています。どうすれば民衆の支持を得ることができるかが、両者の演説を比較することで分かってくるのではないでしょうか。また、友情については、ブルータスの心の揺れが目立っていたと思います。キャシアスとの友情観の違いも興味深いです。
長くなく、話の展開も複雑ではないので、予想していたよりすんなり読めました。できれば、シーザーの性格や強大さが分かる場面や、演説以外の政治劇をもう少し見てみたかったです。次は何を読もうかな〜。
評価〔C+〕 具体的な解決策が欲しいです。キーワード:社会問題、現代、資本主義、NGO
いま人々の暮らしの中から、にじみ出てくる共通の不安は、「不安定な労働と生活」「老後や万一に対する生活保障」「教育と子供の未来」だろう。(はじめにより抜粋)
現代の日本社会は、労働環境や社会保障制度の問題で閉塞感が漂っています。経済が優先され、個人の生活はあまり重視されない状況で、人間らしく豊かに生きるにはどうすべきか、社会や政治はどうあるべきかを改めて問う本です。生活経済学が専門で、長くNGO活動に携わってきた著者が、データと実体験を元に社会問題を掘り下げていきます。
正社員と非正規社員の格差や画一的な学校教育の問題は、どのメディアも関心を寄せていて、まったく知らない人はあまりいないと思います。初版が2003年なので、その当時はまだ注目度が低く意義のあることだったかもしれませんが、今となっては情報の目新しさはありません。このあたりは仕方ないことです。学校については、ドイツの個性を重視した教育が紹介されていて、意欲や自主性がかけているように見える日本の学校には良さそうです。
NGOの活動や生活共同組合の歴史を通して、互助の精神を奨励しています。ユーゴスラビアでの活動やユーゴの子供たちとの触れ合いは素晴らしいし立派だと感じました。でも、その互助や共同が今の資本主義社会の構造を変革できるかと言えば、相当難しいと思います。心が同じ方向を向いている私的な慈善活動と、様々な価値観を持つ巨大な社会では差があります。果たしてその抽象的とも思える意見で変わるのでしょうか。実際、本書の発行から約9年経っていますが、改善されてきたとは思えません。
分析も目指す未来像も良いのですが、解決策が……。僕は自分で理想主義だと思っていますが、ドイツの幾つかの例以外は、本書の提案は現実的ではないように感じられました。残念です。
評価〔B+〕 世界を裏側から見る経済ラノベキーワード:経済、経営、ライトノベル、社会、
「目には目を、歯には歯を。独裁者には暗殺を、仇なす敵には絶望を。」(Chapter 3より抜粋)
スタンフォード大学で社会科学の研究をしている桜井海斗は、久しぶりに会った父・啓司からペンダントをプレゼントされます。しかし、まもなく啓司は亡くなってしまいます。父の死を不審に思い調べていくうちに、海斗も大きな事件へと巻き込まれていきます。
SSガール2と銘打たれていますが、リンを始めとする前回の登場人物たちの出番はありません。まったく新しいキャラクターたちの、しかしやはり経済や社会の仕組みをテーマとしたライトノベルです。前半はややゆっくりめでサスペンス風に、後半は前回と同じように疾走感ある経済小説となっています。勢いや新鮮さで言ったら1巻のほうが上ですが、社会批判の書としては本書のほうが勝ります。あと、こちらのほうがシリアスで重めです。
とてもスケールの大きい話ですが、経済や政治を扱っているのでこれくらいでもあまり違和感を感じません。00−02とあるように舞台は2000年〜2002年で、過去の事件や出来事をうまく利用して描いています。こういうのってどこからが真実でどこからが創作なのか分からなくなります。結構面白いです。
注意すべき点がひとつあって、本書だけでは物語は完結しません。SSガール3に続きます。知らずに買ってしまった。今のところ、1巻と似たような流れになってきているので、今度は違う結末が見てみたいです。なるべく早いうちに3巻も読むつもりです。忘れないうちにね。
評価〔B+〕 探偵殺人三昧の最終巻。キーワード:殺人ゲーム、サスペンス風
「教えてやろう……この俺様の前では、お前の言う『真実』なんて、何の役にも立たないということをな!」(本文より抜粋)
ついに最終巻となったこのシリーズ。4巻の続き、グラウンド・ゼロ主催の探偵殺人ゲームの後編です。
最終巻だけあって、主要人物が一堂に会します。メインの敵はやはりグラウンド・ゼロではなく、彼女の後継者のあの人物と、2巻から因縁のあるドッペルゲンガーこと花鶏。危機感を演出するためのルール変更がありますが、このシリーズの題名どおり探偵殺人ゲームですべての決着がつきます。理解の生かされている本当の理由も明らかにされます。決勝戦はテンポが良いのですが、様々なことを詰め込んだためか駆け足気味に感じました。しかし、予想とは違った駆け引きが面白かったです。
後継者の《災禍の中心》はいったい何なんだと思っていたら、前の巻の最後で書かれいた能力そのままだったのでちょっと驚きました。確かに凄いといえば凄いけれど、すべてを統べるって感じではないような気がします。《災禍の中心》の能力は面白いので、これ1冊しか語られないのは惜しいです。
上記の2点より、もう少しじっくり読んでみたかったですね。月見月家のゾディアックたちのなんかも番外編で見てみたい気もしますし。
優勝者の願いは実にその人物らしい願いで、この物語にあっていると思います。綺麗に終わりました。物寂しいですが、ダラダラ続くより良いかと前向きにとらえておきます。さて、著者の次の本は既に出版されていますが、こうしたゲームものではないみたいです。でも、こうしたゲーム性のある話もまた書いてくれないかなと心待ちにしています。
ちょっとネタばれ意見を続きにて↓
【ここからネタばれ】
この巻の最重要ポイント、連理の《災禍の中心》について。
あの能力って奪って壊すわけですが、どういう原理なんでしょうか。フリズスキャルヴも一応合理的説明があったのですから、これも何らかの説明があると良かったんだけどなー。特に壊すほう。どうなってんだ。催眠術、いやまさに超能力なのか?
それと、ゲームで『死亡』したら死んでしまうのか?についても、きちんと明らかにして欲しかったです。月見月関係者は容赦なく殺されてしまいそうですが、一般参加者はどうしたのでしょう。数が多いし。謎。【ネタばれここまで】
評価〔C+〕 ただの学園ラブコメではなさそうですがキーワード:SF、現代
「おかしいのはこの世界なのよ。「キミを含めて」…………ね」(本文より抜粋)
ありふれていてつまらない高校生活を送る白崎修士は、気まぐれでクラスメートで変人の上村ユウカに話しかけます。退屈な毎日が変わればと思う彼でしたが、事態は彼の予想とは違った方向へ流れていきます。裏表紙曰く、電波×SF×ラブコメストーリー。
ユウカは自己主張が強い女の子で、冷めている修士を引きつれ何かと問題を起こす……と思いきや起こさない。学園ものにはならないのです。誰かの書評に、出だしは『涼宮ハルヒの憂鬱』のようだが展開は違うとありましたがそのとおりでした。二人が置かれている状況は特殊なもので、ユウカは何か知っているようですが本書ではまだ明かされません。SFサスペンスっぽいです。
謎があって緊迫した雰囲気は良いのですが、何か足らない感じがします。日常のシーンと異常なシーンの転換やバランスがよくないのでしょうか。どちらも少し物足りません。著者とテンポが合わないのかな。読後の満足感もそれほどでもありませんでした。しかし、謎の部分には引き込まれ続きを読んでみたいと思っているので、自覚しているよりも気に入っているのかもしれません。
気になった方はガンガンオンラインでも試し読みできますので、そちらをのぞいてみてはいかがでしょうか。巻末の次回予告を見ると、どうやら本格的に動き出すのは次のようなので、今度はテンポ良く見せてほしいです。