2016年08月21日(日)

万能鑑定士Qの事件簿 X 



著者:松岡 圭祐
発売日: 2011/6/23

評価〔A-〕 ひさびさに読んだけどやっぱり面白い。
キーワード:鑑定士、知識、雑学、

「論理ってものを身につけるにはね、当たり前のことから始めるんだよ」(本文より抜粋)


数々の難事件を解決してきた凛田莉子でしたが、開業当時は失敗ばかり。見かねた瀬戸内は、彼女に騙されないための思考法を教えます。彼女の並外れた推理力の要因の一つ、ロジカルシンキングの秘密が明かされます。Qシリーズ9冊目。

知識だけでは説明のつかない莉子の洞察力がどのように養われていったのか、興味があった読者も多いはず。その期待に応えるかのように、本書では彼女の成長する姿が描かれています。鍵は二段階思考と図式化です。後者は、意外にも時々似たことを自分でも行っていました。複雑な物事を文章でまとめようとすると、なんだかダラダラと書いてしまいがちで、単語と矢印だけでまとめることがあります。あの方法は要点をつかむには有効だったようです。また、時間の制限や音読が効率を上げるとあり面白いと感じました。今度試してみようか。

事件のほうは、印鑑をめぐるお話です。日本はハンコ社会だから、実印の効力は絶大です。判子は権利委任が容易などの利点がありますが、私の知らない欠点も色々とありそうですね。実印の謎も、終盤の探索も盛り上がって良かったです。後者の伏線の張り方が巧妙でした。そこで繋がるとは。

10巻なのでさすがに本書から読む方はいないと思いますが、1、2巻を読んでいることが前提の本です。激しくネタバレをしているので、最初の2冊を未読の方はそちらからどうぞ。



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[ 2016/08/21 11:46 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2016年08月21日(日)

猫なカノジョと犬の僕 



著者:けろりん
発売日: 2016/4/25

評価〔B+〕 いやらしさだけでない味のある漫画です。
キーワード:恋愛、短編集、社会人、

昔から、なにを考えているのか、よくわからないヤツではあった。(本文より抜粋)


初々しい話から切ないものまで様々な恋愛を描いた短編集です。前後編の話あり。表紙からはそう見えませんが男女の性的描写があり、これで成人指定でないとは驚きです。苦手な方はご注意ください。

基本的に読んでいて読後感も良いです。いやらしい場面を見せるためだけの話はなく、登場人物たちの心情が分かるようにしっかり描かれていて好感が持てます。女性側が少々軽い気もしますが。(笑) 全体的に優しい温かみのある雰囲気です。女性の体の書き方は男性っぽいけれど、心理描写を見るに著者は女性なのかもしれませんね。

最初の話「そんなこといえない」で、始まっているのに減らず口を叩くのが、なぜかお気に入りです。こういうちょっとした台詞やシーンが味があって良かったです。著者の他の作品にも興味がわきました。




[ 2016/08/21 11:43 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2016年08月14日(日)

Q.E.D.証明終了 41 



著者:加藤 元浩
発売日: 2012/2/17

評価〔C〕 どちらもあまりスッキリしないなあ。
キーワード:推理、謎解き

「僕が見ている風景は、あなたと違うモノかもしれません」(カフの追憶より抜粋)


国際司法裁判所が舞台の「バルキアの特使」と、知人に頼まれ、ある受刑者に会って話を聞く「カフの追憶」の2本です。前者は、著者の他作品「C.M.B」とコラボレーションです。

前者は裁判の場面は良かったのですが、クライマックスのアクションシーンが現実離れし過ぎてちょっと・・・・・・。漫画だからいいかなとも思いますが、このQ.E.Dシリーズであのようなシーンは、やはり向いていないと思います。

後者もあの演出は理解できるのですが、どうもスッキリしません。騙されたのが分かって、感心するよりも不満が残ってしまいました。見抜けなかったほうが悪いと言われればそれまでですが、うーん。

次回はそろそろ数学が題材の推理劇が見たいです。



[ 2016/08/14 21:21 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2016年08月14日(日)

人間は脳で食べている 



著者:伏木 亨
発売日: 2005/12

評価〔B-〕 「美味しい」を分解して考察しています。
キーワード:食事、食生活、文化、脳、情報、おいしさ、

なぜ人間は情報のおいしさに頼ろうとするのか。口や舌の感覚よりも情報が気になるのはなぜか。ひとことで言うと、食の安全対策である。(本文より抜粋)


美味しいものが食べたいのは、いつの時代もどの国でも共通の欲求だと思います。中には、食事は本来必要なエネルギーを得るために取るものなのに、美味しい食べ物の虜となり、食べること自体が目的となってしまった人たち――美食家、グルメな人もいます。しかし、そもそも美味しいとは一体どういうことでしょうか。この根本的ですが複雑な疑問を、本書は分かりやすく解説しています。

栄養素はもちろん、文化・体内の生理メカニズム・情報など、内容は多岐にわたります。その中で最も現代的で重要なものは情報で、安全や権威が関与していると説いていて興味深かったです。それと、「匂いの判断は味よりもかなり正確」なのは、意外でした。確かに食べる前に分かったほうが安全ですからね。また、現代人の食生活についても触れていて、どちらかというとそちらのほうが豆知識っぽくて面白かったです。食の好き嫌いの説明は説得力がありました。

ところどころ読者を代表するかのような発言を挟み込んで、会話のようなやりとりで説明しているのが特徴です。慣れるまで違和感がありましたが、慣れてしまえばこれはこれで良いかなと思いました。個人的には、対話方式で書かれていたほうが、より分かりやすいので好みです。

食事や食生活に関してぼんやり思っていたことが、やはりそうだったと再確認できました。あっと驚くようなことはありませんでしたが、複合的な感覚・現象を調べる難しさも分かりました。簡単そうにみえる題材ほど研究は難しいようです。




[ 2016/08/14 21:17 ] 実用 | TB(0) | CM(0)

2016年08月10日(水)

空ろの箱と零のマリア 7 (完) 



著者:御影 瑛路
発売日: 2015/6/10

評価〔A-〕 無事完結して嬉しいです。
キーワード:サスペンス、学園、殺人ゲーム

僕は、マリアを唯一救い出せる存在である、『騎士』なのだ。(プロローグより抜粋)


ついに最後の対決です。一輝はマリアを救うために、箱が生んだ「出来損ないの世界」と戦います。

前半は、1巻を彷彿させる、先の見えない緊張感あふれる展開でのめり込みました。どうなってしまうのか?という不安と、どのように予想を外してくれるのかという期待が混じった気持ちになり、このシリーズを読んでいるだなという実感がありました。面白いです。途中、記憶や思考が途切れる場面がありますが、いかにも現実味があって怖いですね。また、“O”の正体と起源の詳細もついに明かされますが、これは1巻を書いたときから決まっていたのでしょうか。ここまで決まっていたのなら、よくできた世界だと思います。

後半の決着が、今までのような意外性がなかったのが残念です。目的や敵味方がころころ入れ替わり、読者を翻弄するのが魅力だったので、それが最終巻でほとんど見られなかったのが惜しい。欲を言えば、もう一回くらいどんでん返しが欲しかったです。

エピローグは概ね予想通りでしたが、各登場人物のその後が丁寧に描かれていて好印象でした。まあ納得の結末です。それよりも、この物語をきちんと完結してくれたのが良かったです。途中で続刊が出なくなって未完、のようなラノベはたくさんありそうですし、結末を見届けることができて本当に良かったです。という訳で、シリーズ全体としての評価はAからA-です。本書単体としては、B+からBくらいかな。次回作も期待しています。


[ 2016/08/10 22:10 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2016年08月10日(水)

空ろの箱と零のマリア 6 



著者:御影 瑛路
発売日: 2013/1/10

評価〔B〕 もう少し緊迫感があれば。
キーワード:サスペンス、学園、殺人ゲーム

カズ。お前にゼロのマリアを取り戻させたりしない。(インターバルより抜粋)


“罪と罰と罪の影”の後半編、お互いの目的を果たそうと醍哉と一輝は争います。

相手を限定して作られた“願い潰しの銀幕”のほうが、かなり有利だと思っていたのですが、そう簡単にことは進まず勝負はもつれました。両者の状況がすぐ変化し、有利だったはずがすぐ不利になってしまうのが面白いです。こうした目まぐるしい展開は好きなので歓迎です。

勝負の決め手は意外なものでした。かなり強烈。凄いことになった。あの人物の覚悟がうかがえます。でもこれ、後味の良い終わり方ではないと思うので、人によって評価が分かれそうです。また、今回は両者ともに悪者ではないので、どこか緊張感にかける気がしました。できれば敵は、もっと悪そうなやつが良かったかな。

この結末が最終巻へどう繋がるのでしょうか。次で最終巻です。



[ 2016/08/10 22:05 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2016年08月05日(金)

言ってはいけない 残酷すぎる真実 



著者:橘 玲
発売日: 2016/4/15

評価〔A-〕 残念ながら平等ではありません。
キーワード:社会学、遺伝学、先天的、進化、

結論だけを先にいうならば、論理的推論能力の遺伝率は68%、一般知能の遺伝率は77%だ。これは、知能のちがいの7~8割は遺伝で説明できることを示している。(1章より抜粋)


あまり認めたくないような格差や真実を、進化論や遺伝学の研究結果から明らかにしていきます。様々な社会問題を挙げているのかと思ったのですが、各個人の人生に影響を与える身近な話題ばかりで、主に生得的能力・才能、容姿、教育について論じています。

生まれ持ったものの影響が想像以上に大きい、というのが大まかな主旨です。誰しも少しは考えたことがありそうな、しかし口に出すと差別だと思われそうな内容が書かれています。確かに残酷ではありますが、覚悟していたよりも意外ではありませんでした。差別だと非難されることを恐れずに真実を伝えようとする姿勢は、見習うべきものがあります。

一番意外だったのは、子育て・教育の子供の成長に対する影響力です。子育てを経験した親ならば、感覚的に知っているものなのでしょうか。遺伝、子育てに次ぐ第3の要素は新鮮でした。著者の主張に全面的に賛成というわけではありませんけど、確かに一理あると思います。

他にも、ユダヤ人の知能の秘密や、安静時心拍数と犯罪の関係、外見から攻撃性を推測する方法、容姿の美醜の金銭的価値などについて触れていて、極端な意見のようにも感じる時がありましたけど面白かったです。

根拠となる文献が明記されているのは良いのですが、書いてあるだけで文献自体に対する意見は書かれていません。内容の精査はしているのでしょうか。そうした疑問があったためか、根拠があるにも関わらず、文章に重みが感じられないときがありました。また、ほとんどが事実を断言して終わってしまうので、格差の対策案や希望の持てる提案が見られなかったのが残念です。

賛否両論になるのも分かります。読んでいて不愉快になるかもしれませんが、知っていたほうがいいのかもしれませんね。差別的にならないよう注意が必要ですが。内容を鵜呑みにせず、何か失敗した時に都合の良い言い訳に使わないようにしたいです。



[ 2016/08/05 21:58 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)