2012年01月28日(土)

付喪堂骨董店〈2〉―“不思議”取り扱います 

付喪堂骨董店〈2〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)付喪堂骨董店〈2〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)
著者:御堂 彰彦
出版:メディアワークス
発行:2007/06

評価〔B−〕 アンティークに人生を左右される人々
キーワード:骨董店、オカルト、連作短編集

「それは防音だからよ。でも『明鏡』は違う。音を遮断するのよ」(本文より抜粋)


不思議な力を持つ道具・アンティークにまつわる悲劇あるいは喜劇の短編集です。一話完結で4話収録。前回に引き続き、付喪堂骨董店〜FAKE〜の面々が様々な出来事に遭遇します。

音を消し去る鏡、人間をコピーするマスクと不思議な道具が出てきますが、いずれも大きく人生を変える可能性があるものです。便利ですが危険でもあります。動機は何であれ、アンティークに深入りしすぎたあるいは虜となってしまった人々の未来は、順風満帆とは言えないでしょう。道具ではなく使用者次第。

全体的に1巻と同じような感じです。捻ってはいますが、衝撃的だったということもありませんでした。少しだけあの人の過去をにおわせた場面もありましたが、あれだけではちょっと不満です。つまらなくはないのですが。意表を突かれたのは、「化粧」で咲がドアを開けた時の刻也の発言です。言われた時の咲の顔が見てみたい。

今回出た人物では、「死目」に登場する麗華が印象深いです。なかなか強烈な個性を発揮しています。

口絵の右5人の中央の人物は誰なんでしょうか。都和子?そういや彼女は今回も影が薄かったです。メインの3人のひとりなのだから、もう少し出番があっても良いよね。咲、刻也の過去と共に次の巻以降に期待です。




[ 2012/01/28 18:02 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2012年01月25日(水)

アラクニド1 

アラクニド 1 (ガンガンコミックスJOKER)アラクニド 1 (ガンガンコミックスJOKER)
著者:村田 真哉
出版:スクウェア・エニックス
発行:2010/07/22

評価〔B+〕 いわゆる殺し屋もの。
キーワード:殺し屋、現代

殺される前に、殺すしか無い。(本文より抜粋)


裏社会を描いた作品はあまたありますが、本書はその中でも人気のありそうな殺し屋が柱となっています。ある日、突然裏の世界に関わることとなった少女・藤井有栖のお話です。

アクションシーンが多いせいかスピード感があります。戦闘になった時、アリスが恐怖を感じ、その後覚悟を決めるまでが緊迫感があって良いですね。「殺すしか無い」の時の表情が凛々しくかつ気迫に満ちていて、結構好きです。いや、すぐ「殺す」と決断しちゃうのは短絡的じゃないかなーとは思いますが。それにしてもアリスはいったい何歳なんでしょうか。中学生か高校生か書かれていません。1年生らしいので、おそらく高校生だとは思うのですが……。

最初に登場する蜘蛛をはじめ、殺し屋たちは雀蜂などの昆虫のコードネームで呼ばれています。名前や立場で呼ばないのはどこか外国的です。こういうネーミングは伊坂幸太郎の小説を連想させてくれます。グラスホッパー。

あとがきを読むとコードネームの意味が分かりますが、なぜこういうストーリーにしたのかと別の疑問も浮かびます。ま、それはそれとして、続きものにしては綺麗なくらい切りの良い場面で終了しているので、試しに読んでみるのも良いでしょう。1巻完結でも満足ですが、アリスの今後も気になるところ。





[ 2012/01/25 22:45 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2012年01月25日(水)

ビン 〜孫子異伝〜1 

ビン 〜孫子異伝〜 1 (ジャンプコミックスデラックス)ビン 〜孫子異伝〜 1 (ジャンプコミックスデラックス)
著者:星野 浩字
出版:集英社
発行:2008/07/04

評価〔B〕 もう一人の孫子の物語
キーワード:古代、中国、戦国時代

「中原を平和にするんです。」(本文より抜粋)


兵法書で知られる古代中国の戦略家で有名な孫子ですが、歴史上にもう一人孫子がいたことをご存知でしょうか。兵法書の著者・孫武の時代から少し下って周の時代の後期、春秋時代の後の戦国時代に、彼の子孫である孫ビンと呼ばれる人物です。はじめこの漫画を読んで空想だと思っていたのですが、後でネットで調べてみたら実在していて大変驚きました。その孫ビン(孫臏、2文字目は月に賓。)が主人公の物語です。

顔には罪人の入れ墨であるゲイ、両膝の骨を抜くビンの2つの刑罰を受けながらも、孫ビンは己の理想の実現に向けて邁進する姿が魅力的です。現在の中国では賄賂が横行し、法や規則を守る意識が低いように見えます。しかし、彼は古代中国において権力に媚びることなく、また策だけでなく彼自身も危険を冒して戦いに参加するところが格好良いです。

異民族の狄や奴隷の存在は当時の社会を反映していて興味深いです。紀元前から確固たる社会を確立していた古代中国は凄いですね。さすがです。馨逢(シンフエン)の境遇はかなり辛く、そういう時代だったんだなと不憫でなりません。

さて、この作品、どこまでが史実でどこまでが創作なのか分からないのが難点です。序盤の「統率を見せよ」と命じられた孫武の話は本当のようですが。大筋は史実に沿っているとは思いますが、あまり気にせずエンターテインメントとして楽しめばいいのでしょうか。漫画の歴史ものを読むのはかなり久しぶりでしたが、結構良かったです。現代やSFも面白いですが、歴史にはまた違った良さがあって面白いと思います。




[ 2012/01/25 22:42 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2012年01月20日(金)

地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人 

地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人 (小学館101新書)地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人 (小学館101新書)
著者:アルモーメン・アブドーラ
出版:小学館
発行:2010/10/01

評価〔B〕 アラブ人の生の声
キーワード:アラブ、エジプト、イスラム教

アラブにおいては、特に私の生まれ育ったエジプトでは、人々の最大の娯楽はおしゃべりである。(第二章より抜粋)


ある異国で経験なのですが、色々なイメージに合った国や民族を話し合うということがありました。暴力的な国や民族を挙げなさいと言われて戸惑ったのですが、その国の某は中東地域(イスラムかも)の人と迷いなく答えたのが、いやに印象に残っています。日本においてもアラブから連想するのは、イスラム教がらみの紛争やテロなのが少なくないと思います。でも、テレビで見る衝撃的な映像以外は、あまり触れることのない世界です。実際のところはどうなのでしょうか? 本書はエジプト出身の著者がアラブを紹介します。

序盤は軽いコラムやエッセイのようで、少々内容が軽いかなーと思っていのですが、中盤から面白くなって興味深かったです。おしゃべりが娯楽であったり、他人からの頼みごとに弱いのは意外でした。もっとなんかこう、堅いイメージがあったので。情に弱いかと思いきや、肩書社会であったり仕事が結果重視であったりと、やはり西洋とは違う世界があって興味深いです。

知りたかったイスラム教についても触れていました。宗教がアラブ人の生活や社会に根付いていて、切っても切れない密接な関係になっていることが分かります。しかし、断食などの宗教の厳しさよりも、参加する楽しさが文面から伝わってきて、日本の祭りのようでこれも意外でした。その精神である「インシャーアッラー」は、価値観として面白いです。また、P169の『物事の本質が「宗教」という名のもとに隠されていることを考えてもらいたい』は、目から鱗が落ちました。

だいぶ違うアラブと日本ですが、著者は表現の形が違っていても源は同じと述べています。違って見えても価値観は変わらないという意見は、外国(日本)に長く住んだ経験があるからこそ。頭で分かっていてもなかなか言えない一言ですね。




[ 2012/01/20 23:02 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2012年01月14日(土)

天使の囀り (角川ホラー文庫) 

天使の囀り (角川ホラー文庫)天使の囀り (角川ホラー文庫)
著者:貴志 祐介
出版:角川書店
発行:2000/12

評価〔A+〕 怖さと気持ち悪さが凄い。
キーワード:ホラー、サスペンス、現代

「『天使の囀り』が聞こえだしたのは、ここ数週間かな。羽ばたきの方は、もう少し前からだけど」(本文より抜粋)


怖くて気持ち悪い強烈なサスペンスホラーです。綺麗で神聖なイメージの題名ですが、全然違う内容です。凄まじい小説を読んでしまった、というのが読了直後の印象。

精神科医の北島早苗は、アマゾン調査隊に同行した恋人・高梨の帰国を待ちわびていました。しかし、帰国後の高梨は人が変わったように死を恐れなくなってしまいます。心配しながらも静観を続けますが、彼を含む調査隊員に次々と不可思議なことが起きます。高梨が聞こえたという天使の羽ばたきや囀り(さえずり)は何なのか? 事件の原因は一体何なのか? 早苗は謎を追ううちに驚愕の事実が明らかになります。

とにかく怖かったです。解説にも書かれていますが、はじめのうちはオカルト・超常現象なのか科学的説明のつく現象なのかまったく分からないので不安になり、同時にひきこまれます。話が進むにつれ、訳の分からない恐怖にグロテスクな面も加わるので、生理的嫌悪感から読むのを止めてしまう人がいそう。その後も、真相が分かって怖くなり終わったと思ったらまた怖くなりと、恐怖を存分に堪能できるでしょう。大浴場の光景も恐ろしいですが、羽ばたきや囀りが聞こえる人たちの幸せそうな様子のほうが正直怖いです。

途中、荻野信一が出てきてHゲーの話になった時は、なんでこの話題がと思ったものです。でも、ガイアの子供たちのサイドもきちんと繋がって安心しました。彼らがどうしてあの結末にいたったのか、もう少し知りたい気も……いや知りたいような知りたくないような。

この著者の他の作品もそうですが、その情報量・知識が凄いです。高梨のアマゾンからのメールをはじめ、様々な分野の専門知識が惜しげもなく披露され、小説に説得力と現実感を与えています。興味をそそるような書き方は巧みで、構成も緻密だと思います。それと、最後までどのように終わるのか分からない点も魅力的です。この作品はホラーなので期待よりは不安がつのるばかりですけどね。

盛り上がると結末が尻すぼみになるものもありますが、本書はその心配はないと思います。面白いですが、気持ち悪いものが苦手な方は止めておいたほうが無難です。多数の方が書評で「映像化はやめてくれ」と書かれていますが、やりたくてもできないでしょう。怖かったです。




※備忘録
同著者の既読作品
十三番目の人格 ISOLA 評価〔B+〕
クリムゾンの迷宮 評価〔S〕
青の炎 評価〔A−〕


[ 2012/01/14 22:31 ] 小説 | TB(0) | CM(0)